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ドメイン名関連会議報告

2014年

ICANNシンガポール会合報告

~ccTLDレジストリ関連の話題と新gTLDプログラムを中心に~

2014年3月23日から27日にかけて、第49回ICANN Meetingがシンガポールで開催されました。参加登録者数はアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた前回会合の約1,800人とほぼ同規模で、アジア・東南アジアを中心としたアジア地域からの参加者が多く、4月23、24日に開催される予定の「インターネットガバナンスに関するブラジル会合(NETmundial)(*1)」の関係者も多く見られました。

(*1)
全コミュニティがグローバルなマルチステークホルダーによる協力体制の発展に向けた検討を行う会議で、インターネットガバナンス原則とインターネットガバナンス体系の更なる発展に向けたロードマップを主要テーマとしています。

本会合のオープニングセレモニーでは、ICANNのアジア地区におけるVice PresidentであるYu-Chuang Kuek氏が「Info Society Innovation Fund(ISIF)」を始めとする発展途上国へのサポート活動の紹介を行いました。また、ICANN CEOのFadi Chehade氏がAPRALO(アジア太平洋地域のAt-Large Organization)のセレモニーでスピーチを行うなど、市民社会の声に積極的に耳を傾けていこうとするICANNの姿勢をアピールしていました。

オープニングセレモニーの様子

オープニングセレモニーの様子


今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

  • ccNSOに関する話題から
    - インターネットガバナンスに関する議論
    - セキュリティに関する取り組み
    - ICANN会合の開催形態変更に関する検討
  • 新gTLDプログラムに関する話題から
    - ブランドTLDを規定する「Specification 13」の採択
    - TLD運用関連セッションの開催
    - EBEROの追加募集

ccNSOに関する話題から

インターネットガバナンスに関する議論

インターネットガバナンスに関連したセッションは、会合全体を通じて数多く設けられました。ccNSOでも中核のテーマとなりましたが、ICANN全体とは議論の対象が以下のように異なっているのが特徴的でした。

ICANN全体では、

  • 現在米国商務省電気通信情報局(NTIA)が契約主体となっているIANA(*2)やルートゾーン管理に関する契約の移行
  • IANAのオペレーションに関してNTIAが果たしている役割(IANAの機能遂行状況の監督、TLDの委任(delegation)可否判断など)の移行
といった「IANA transition」が主な話題の一つでした。また、
  • ポリシー検討に際し、より広いマルチステークホルダーからの意見の収集
  • ICANNの活動をマルチステークホルダーに対してより責任を持つ形にする体制の検討
といった「ICANN globalization」についても主要な話題となりました。その中で、日々の運用とポリシーの策定が一つの組織に存在する現在のIANAからポリシー策定機能を別の組織に分離して担わせるという提案が活発な議論を呼んでいました。
(*2)
Internet Assigned Numbers Authorityの略称。現在はドメイン名、IPアドレス、プロトコル番号などのインターネット資源を管理するICANNの一機能として運用されています。

一方でccNSOでは、TLDの委任(delegation)、再委任(re-delegation)、委任終了(retirement)時にNTIAが担っている役割の移行が主な議論の対象となりました。

ccNSOではgTLDと異なり、Framework of Interpretation(FoI)Working Group(WG)によりTLDの委任、再委任、委任終了に関する独自のフレームワークを検討しています。これはIANA機能に関するICANNと米国政府間の契約において、ccTLDとIANAが非常に軽い関わりであることを背景としたものです。しかし、今回の移行に関するICANN全体の議論の中で、ccTLDレジストリにも影響を及ぼすポリシーが策定されることが懸念されています。ccNSOでは、コミュニティ全体での議論に参加しつつ、ccTLD特有の観点も取り入れてIANA transitionに関する案を作成し、ccNSOメンバー内でレビューを行うことが合意されました。

セキュリティに関する取り組み

セキュリティ関連では、インシデント発生時の対応やドメイン名の悪用への対応についての取り組みが紹介されました。

ドメイン名やDNSなどに関するインシデント発生時にccTLD間で情報を共有できるようにするための最初の取り組みとして、2014年5月頃までに連絡用のメーリングリストを作成することが検討されています。メーリングリストの作成・運用が行われた後、適宜活動の拡大についての検討を進めていく予定であり、JPRSからも斉藤仁がContact Repository Implementation WGにメンバーとして参加しています。

ドメイン名の悪用防止の施策として、SGNIC(.sg)からは、政府が個人に対して発行するID(Singapore Personal Access)を活用した本人確認の実施が紹介されました。また、ロシアでは国内のISP及び関連企業と連携して悪用されているドメイン名を収集・廃止した結果、その数が3万件に上ったことが紹介されました。

ICANN会合の開催形態変更に関する検討

ICANN会合の参加者は2006年には約800人の規模でしたが、最近では約1,800人規模にまで増加しており、開催地の用意やローカルホストの負担の増加が問題となってきています。この状況を踏まえて、Meeting Strategy WGから現在年3回開催されている会合について、以下の通り開催内容に変化を付けることが提案されました。

  • 1回目:現状と同規模
  • 2回目:Supporting Organization、Advisory Committeeの活動中心
  • 3回目:現状と同規模、年次総会
今後、この提案は意見募集を経て更に検討がなされ、2016年開催分より適用される見込みとなっています。

ccNSO Members Meetingの様子

ccNSO Members Meetingの様子

新gTLDプログラムに関する話題から

ブランドTLDを規定する「Specification 13」の採択

前回のブエノスアイレス会合におけるBrand Registry Group(BRG)とICANNの折衝を受け、2013年12月6日に「ブランドTLD」を規定する「Specification 13(案)」が公開され、2014年1月31日までパブリックコメントの募集が行われました。

Specification 13は、レジストリオペレーター自身またはそのグループ会社などのみに登録者及び利用者が限定される「ブランドTLD」の場合には、従来の不特定多数のドメイン名登録者の存在を前提に登録者を保護するために設けている各種規定の遵守義務を軽減することで、「ブランドTLD」を円滑に運用できるようにするものです。

「ブランドTLD」として契約することで、「レジストリ行動規範」の適用が除外されたり、「ブランドTLD」である限りサンライズ登録期間が免除されるといったメリットがあります。

パブリックコメントを受けての最終案は3月14日に公開され、3月26日のICANN理事会(New gTLD Program Committee)で採択されました。なお、本会合後の4月14日に「ブランドTLD」の手続き方法が案内され、同時に受け付けも開始されました。

Specification 13の制定を主導したBrand Registry Group(BRG)のICANNコミュニティ内での認知度が高まってきており、新gTLDの半分以上を占めることが見込まれている「ブランドTLD」の意見を代表するグループとして、BRGがgTLDのポリシー策定にどのように関与していくのかに注目が集まりつつあります。

gTLD運用関連セッションの開催

新gTLDレジストリ契約(Registry Agreement:RA)の締結及び委任プロセス中の申請者や、それらを完了し登録サービスを開始したgTLDが増えてきたこともあり、今回の会合ではこれまで主流であった申請者向けの情報提供よりも、登録サービスの開始に向けたICANNとの間の手続きの詳細説明、また、レジストリオペレーターに対してICANNが求める各種遵守事項への対応方法や監査への対応方法など、より実務的なセッションが多く開催されました。

一方で、RAの遵守を要求されながらも、その方法や報告様式については未制定の事項も多く残っており、セッション中に多くの質問や問題提起が行われ、ICANNスタッフ側から「順次対応する」という言葉を引き出す場面も多く見られました。

EBEROの追加募集

ICANNは、Emergency Back-End Registry Operator(EBERO)の地理的及び法域の多様性を担保することを理由として、本会合中のセッションにて追加募集を行う旨を明らかにしました。ICANNでは今後、2014年4月に提案を募集し、6月には選定を行いたいとしています。

次回のICANN会合

次回の第50回ICANN会合は、2014年6月22日から26日にかけて英国のロンドンで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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