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■(緊急)BIND 9.xの脆弱性(DNSサービスの停止)について(CVE-2016-1285)
  - フルリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)/権威DNSサーバーの双方が対象、
    バージョンアップを強く推奨 -

                                株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
                                            初版作成 2016/03/10(Thu)
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▼概要

  BIND 9.xにおける実装上の不具合により、namedに対する外部からのサービ
  ス不能(DoS)攻撃が可能となる脆弱性が、開発元のISCから発表されました。
  本脆弱性により、提供者が意図しないサービスの停止が発生する可能性があ
  ります。

  本脆弱性はBIND 9.2.0以降のすべてのバージョンのBIND 9が影響を受けるこ
  とから、対象が広範囲にわたっています。該当するBIND 9.xを利用している
  ユーザーは関連情報の収集やバージョンアップなど、適切な対応を速やかに
  取ることを強く推奨します。

▼詳細

▽本脆弱性の概要

  BIND 9.xのnamedには遠隔制御のための制御チャンネル(control channel)
  が存在し、制御チャンネル経由で設定ファイルやゾーンファイルの再読み込
  み、統計情報の出力などを実行する、rndcユーティリティが標準提供されて
  います。

  BIND 9.xには制御チャンネルの入力処理に不具合があり、不正なパケットが
  namedの制御チャンネルに送られた場合、namedが異常終了を起こす障害が発
  生します(*1)。

  (*1)本脆弱性によりnamedが異常終了した場合、sexpr.cまたはalist.cに
        おいてassertion failureを引き起こした旨のメッセージがログに出
        力されます。

  本脆弱性により、DNSサービスの停止が発生する可能性があります。また、
  本脆弱性を利用した攻撃はリモートから可能です。

▽対象となるバージョン

  本脆弱性は、BIND 9.2.0以降のすべてのバージョンのBIND 9が該当します。

  ・9.10系列:9.10.0~9.10.3-P3
  ・9.9系列:9.9.0~9.9.8-P3
  ・上記以外の系列:9.2.0~9.8.8

  なお、ISCでは9.8以前の系列のBIND 9のサポートを終了しており、これらの
  バージョンに対するセキュリティパッチはリリースしないと発表しています。

▽影響範囲

  ISCは、本脆弱性の深刻度(Severity)を「高(High)」と評価しています。

  不正アクセスを防止するため、namedの制御チャンネルへのアクセスの際に
  は通常、共有鍵(rndc-key)による認証が実施されます。しかし、本脆弱性
  は共有鍵による認証の前段階で発生するため、当該認証は本脆弱性の対策と
  はなりません。

  ただし、BIND 9に標準のrndc-confgenコマンドは制御チャンネルのデフォル
  トのIPアドレスとして127.0.0.1を設定します(*2)。この場合、本脆弱性
  によるリモートからの攻撃は成立しません。

  (*2)namedの設定ファイル(named.conf)においてcontrolsステートメン
        トが設定されていない場合も同様であり、制御チャンネルのIPアド
        レスとして127.0.0.1及び::1が設定されます。

  本脆弱性については、以下の脆弱性情報(*3)も併せてご参照ください。

  (*3)CVE - CVE-2016-1285
        <https://cve.mitre.org/cgi-bin/cvename.cgi?name=CVE-2016-1285>

▼一時的な回避策

  named.confの"controls"ステートメントにおいて制御チャンネルへのアクセ
  スへの許可を信頼されるシステムのみに制限することで、本脆弱性の影響を
  回避できます(*4)。

  (*4)前述の通り、BIND 9標準のrndc-confgenコマンドは制御チャンネルの
        デフォルトのIPアドレスとして127.0.0.1を設定します。この場合、
        リモートからの攻撃は成立しません。

▼解決策

  本脆弱性を修正したパッチバージョン(BIND 9.10.3-P4/9.9.8-P4)への更
  新、あるいは各ディストリビューションベンダーからリリースされる更新の
  適用を、速やかに実施してください。

▼参考リンク

  以下に、ISCから発表されている情報へのリンクを記載します。また、各ディ
  ストリビューションベンダーからの情報や前述のCVEの情報なども確認の上、
  適切な対応を取ることを強く推奨します。

  - ISC

   セキュリティアドバイザリ

    CVE-2016-1285: An error parsing input received by the rndc
                   control channel can cause an assertion failure in
                   sexpr.c or alist.c
    <https://kb.isc.org/article/AA-01352>

   パッチバージョンの入手先

    BIND 9.10.3-P4
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.10.3-P4/bind-9.10.3-P4.tar.gz>
    BIND 9.9.8-P4
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.9.8-P4/bind-9.9.8-P4.tar.gz>

▼連絡先

  本文書に関するお問い合わせは <dnstech-info@jprs.jp> までご連絡ください。

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▼更新履歴
  2016/03/10 11:00 初版作成


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