---------------------------------------------------------------------
■(緊急)BIND 9.xの脆弱性(DNSサービスの停止)について(2014年1月14日公開)
- NSEC3運用中の権威DNSサーバーが対象、バージョンアップを強く推奨 -
株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
初版作成 2014/01/14(Tue)
---------------------------------------------------------------------
▼概要
BIND 9.xにおける実装上の不具合により、namedに対する外部からのサービ
ス不能(DoS)攻撃が可能となる脆弱性が、開発元のISCから発表されました。
本脆弱性により、提供者が意図しないサービスの停止が発生する可能性があ
ります。
本脆弱性は、権威DNSサーバーとしてNSEC3を用いてDNSSEC署名されたゾーン
を保持している場合が対象となります。該当するシステムでBIND 9.xを利用
しているユーザーは、関連情報の収集やバージョンアップなど、適切な対応
を速やかに取ることを強く推奨します。
▼詳細
DNSSECではデータの不在(該当のデータが存在しないこと)を証明する際、
NSECまたはNSEC3レコードを使用します。
不在証明にNSEC3を用いることで、ゾーンの列挙(Zone enumeration)(*1)
を困難にすることができます。また、NSEC3は安全でない委任(*2)に対す
るオプトアウト(Opt-Out)機能を備えており、そうした委任が多いゾーン
におけるDNSSEC署名のコストを低減できます。これら二つの特徴から、.jp
や.comなどTLDゾーンにおけるDNSSEC対応では、NSEC3を用いることが一般的
です。
今回の脆弱性は、BIND 9.xにおけるDNS問い合わせ受信時の処理の不具合に
より、NSEC3を用いてDNSSEC署名されたゾーンを保持している権威DNSサーバー
において特定のDNS問い合わせを処理中に、namedが"INSIST"メッセージを出
力して異常終了するものです。
本脆弱性により、DNSサービスの停止が発生する可能性があります。また、
本脆弱性を利用した攻撃はリモートから可能です。
(*1)NSECを用いてDNSSEC署名されたゾーンでは、DNS問い合わせによって
NSECの連鎖を外部からたどることにより、そのゾーンのすべての内容
を入手することが可能になります。
(*2)委任先のゾーンがDNSSEC未対応である場合の委任。
▽対象となるバージョン
本脆弱性は、BIND 9.6.0以降のすべてのバージョンのBIND 9が対象となり
ます。そのため、以下のすべてのバージョンが対象に含まれます。
・9.6系列:9.6-ESV~9.6-ESV-R10-P1
・9.8系列:9.8.0~9.8.6-P1
・9.9系列:9.9.0~9.9.4-P1
BIND 10は、本脆弱性の対象となりません。なお、ISCでは9.6-ESVを除く
9.7以前の系列のBIND 9のサポートを終了しており、これらのバージョンに
対するセキュリティパッチはリリースしないと発表しています。
▽影響範囲
ISCは、本脆弱性の深刻度(Severity)を「高(High)」と評価しています。
ただし、本脆弱性は、
・権威DNSサーバーとして、NSEC3を用いてDNSSEC署名されたゾーンを保持し
ているnamed
のみが該当します。キャッシュDNSサーバー機能のみのnamed(*3)、及び権
威DNSサーバーであっても当該のゾーンを保持していないnamedは、本脆弱性
の対象となりません。
(*3)キャッシュDNSサーバーを権威DNSサーバーと兼用しており、かつ権威
DNSサーバーとして当該のゾーンを保持しているnamedは、本脆弱性の
対象となります。
本脆弱性については、以下の脆弱性情報(*4)も併せてご参照ください。
(*4)CVE - CVE-2014-0591
<https://cve.mitre.org/cgi-bin/cvename.cgi?name=CVE-2014-0591>
なお、現時点において本脆弱性に関する攻撃手法は知られていませんが、本
件による障害発生時のトレース情報が公開のメーリングリスト上に流されて
おり、注意が必要です。
▼一時的な回避策
本脆弱性の一時的な回避策は存在しません。
▼解決策
本脆弱性を修正したパッチバージョン(BIND 9.6-ESV-R10-P2/9.8.6-P2/
9.9.4-P2)への更新、あるいは各ディストリビューションベンダーからリリー
スされる更新の適用を、速やかに実施してください。
▼JP DNSサーバーにおける対応状況
JP DNSサーバーでは本脆弱性への対応を完了しています。
▼参考リンク
以下に、ISCから発表されている情報へのリンクを記載します。また、各ディ
ストリビューションベンダーからの情報や前述のCVEの情報などもご確認の
上、適切な対応をとることを強く推奨します。
- ISC
セキュリティアドバイザリ
CVE-2014-0591: A Crafted Query Against an NSEC3-signed Zone Can Crash BIND
<https://kb.isc.org/article/AA-01078>
本脆弱性に関するFAQ及び追加情報
CVE-2014-0591: FAQ and Supplemental Information
<https://kb.isc.org/article/AA-01085>
パッチバージョンの入手先
BIND 9.6-ESV-R10-P2
<http://ftp.isc.org/isc/bind9/9.6-ESV-R10-P2/bind-9.6-ESV-R10-P2.tar.gz>
BIND 9.8.6-P2
<http://ftp.isc.org/isc/bind9/9.8.6-P2/bind-9.8.6-P2.tar.gz>
BIND 9.9.4-P2
<http://ftp.isc.org/isc/bind9/9.9.4-P2/bind-9.9.4-P2.tar.gz>
▼連絡先
本文書に関するお問い合わせは <dnstech-info@jprs.jp> までご連絡ください。
---------------------------------------------------------------------
▼更新履歴
2014/01/14 11:00 初版作成
株式会社日本レジストリサービス Copyright©2001-2024 Japan Registry Services Co., Ltd.