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■(緊急)BIND 9.xの脆弱性(DNSサービスの停止)について(2015年7月31日更新)
  - フルリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)/権威DNSサーバーの双方が対象、
    バージョンアップを強く推奨 -

                                株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
                                            初版作成 2015/07/29(Wed)
                                            最終更新 2015/07/31(Fri)
       (PoCが公開され、日本国内において被害事例が報告された旨を追加)
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▼概要

  BIND 9.xにおける実装上の不具合により、namedに対する外部からのサービ
  ス不能(DoS)攻撃が可能となる脆弱性が、開発元のISCから発表されました。
  本脆弱性により、提供者が意図しないサービスの停止が発生する可能性があ
  ります。

  本脆弱性は、BIND 9.1.0以降のすべてのバージョンのBIND 9が対象となり、
  かつフルリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)及び権威DNSサーバーの双方
  が対象となることから、対象が広範囲にわたっています。該当するBIND 9.x
  を利用しているユーザーは関連情報の収集やパッチの適用など、適切な対応
  を速やかに取ることを強く推奨します。

  (2015年7月29日追加)ISCの公式ブログに、本脆弱性に関する追加情報が掲
  載されました。こちらには、

  ・設定や利用条件に限定されず、ほぼすべてのBINDが対象となること
  ・ファイアーウォールで問題のパケットをスクリーニングすることは困難、
    または不可能である可能性が高いこと
  ・本脆弱性のリバースエンジニアリングが難しくないこと
  ・既に、リバースエンジニアリングに成功したセキュリティ専門家から、
    攻撃キットの作成成功を伝えられていること

  が記述されており、速やかなパッチの適用、または修正済バージョンの入手・
  更新を呼び掛けています。

  (2015年7月31日追加)本脆弱性のPoC(Proof of Concept:実証コード)が
  既にネット上で公開されており、日本国内のサービスプロバイダーからの被
  害事例も報告されています。改めて即時の対応を強く推奨します。

▼詳細

▽本脆弱性の概要

  TKEYは、DNSのトランザクションをやりとりする2台のホスト間で用いる秘密
  鍵(共有鍵)を自動生成するための機能で、RFC 2930で定義されています。

  BIND 9.xにはTKEYリソースレコード(RR)の取り扱いに不具合があり、
  TKEY RRに対する特別に作成された問い合わせにより、namedが異常終了を起
  こす障害が発生します(*1)(*2)。

  (*1)本脆弱性によりnamedが異常終了した場合、"REQUIRE" assertion
        failureを引き起こした旨のメッセージがログに出力されます。

  (*2)TKEYの機能を使用していない場合も、本脆弱性の対象となります。

  本脆弱性により、DNSサービスの停止が発生する可能性があります。また、
  本脆弱性を利用した攻撃はリモートから可能です。

▽対象となるバージョン

  本脆弱性は、BIND 9.1.0以降のすべてのバージョンのBIND 9が該当します。

  ・9.10系列:9.10.0~9.10.2-P2
  ・9.9系列:9.9.0~9.9.7-P1
  ・9.1~9.8系列:9.1.0~9.8.x

  なお、ISCでは9.8以前の系列のBIND 9のサポートを終了しており、これらの
  バージョンに対するセキュリティパッチはリリースしないと発表しています。

▽影響範囲

  ISCは、本脆弱性の深刻度(Severity)を「重大(Critical)」と評価して
  います。本脆弱性は、

  ・フルリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)及び権威DNSサーバーの双方が
    対象となること

  ・多くのバージョンのBIND 9が対象となること

  ・namedの設定ファイル(named.conf)によるアクセスコントロール(ACL)
    や設定オプションの変更では、影響を回避・軽減できないこと

  などから、広い範囲での適切な緊急対策が必要となります。

  本脆弱性については、以下の脆弱性情報(*3)も併せてご参照ください。

  (*3)CVE - CVE-2015-5477
        <https://cve.mitre.org/cgi-bin/cvename.cgi?name=CVE-2015-5477>

▼一時的な回避策

  本脆弱性の一時的な回避策は存在しません。

▼解決策

  本脆弱性を修正したパッチバージョン(BIND 9.10.2-P3/9.9.7-P2)への更
  新、あるいは各ディストリビューションベンダーからリリースされる更新の
  適用を、速やかに実施してください。

▼参考リンク

  以下に、ISCから発表されている情報へのリンクを記載します。また、各ディ
  ストリビューションベンダーからの情報や前述のCVEの情報なども確認の上、
  適切な対応を取ることを強く推奨します。

  - ISC

   セキュリティアドバイザリ

    CVE-2015-5477: An error in handling TKEY queries can cause named to
                   exit with a REQUIRE assertion failure
    <https://kb.isc.org/article/AA-01272>

   公式ブログ(セキュリティアドバイザリに関する追加情報)

    About CVE-2015-5477
    <https://www.isc.org/blogs/about-cve-2015-5477-an-error-in-handling-tkey-queries-can-cause-named-to-exit-with-a-require-assertion-failure/>

   パッチバージョンの入手先

    BIND 9.10.2-P3
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.10.2-P3/bind-9.10.2-P3.tar.gz>
    BIND 9.9.7-P2
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.9.7-P2/bind-9.9.7-P2.tar.gz>

▼連絡先

  本文書に関するお問い合わせは <dnstech-info@jprs.jp> までご連絡ください。

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▼更新履歴
  2015/07/29 11:00 初版作成
  2015/07/29 16:00 公式ブログで公開された追加情報を「概要」に反映
                   公式ブログのリンクを「参考リンク」に追加
  2015/07/31 16:00 PoCが公開され、日本国内において被害事例が報告された
                   旨を追加

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