DNS関連技術情報のトップへ戻る

---------------------------------------------------------------------
■(緊急)BIND 9.xの脆弱性(TSIG認証の迂回によるゾーンデータの操作)に
  ついて(CVE-2017-3143) - バージョンアップを強く推奨 -

                                株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
                                            初版作成 2017/06/30(Fri)
                                            最終更新 2017/07/13(Thu)
                         (ISCのセキュリティアドバイザリの更新を反映)
---------------------------------------------------------------------

▼概要

  BIND 9.xにおける実装上の不具合により、namedに対する外部からの攻撃が
  可能となる脆弱性が、開発元のISCから発表されました。本脆弱性により、
  権威DNSサーバーへのDynamic Update経由で、悪意を持つ第三者にゾーンデー
  タを操作される可能性があります。

  本脆弱性は、namedにおいてTSIGによるアクセス制限を有効にしている場合
  にのみ対象となります(デフォルトでは無効)。該当するBIND 9.xを利用し
  ているユーザーは関連情報の収集やバージョンアップなど、適切な対応を取
  ることを推奨します。

▼詳細

▽本脆弱性の概要

  TSIGはRFC 2845で定義される、DNSの通信(トランザクション)に共有鍵を
  用いた署名を付加し、通信の安全性を高めるための仕組みです。TSIGを利用
  することで、ゾーン転送、DNS NOTIFY、Dynamic Updateなどにおいて通信相
  手を認証し、通信路におけるデータの改ざんを検知できます。

  Dynamic UpdateはRFC 2136で定義される、クライアントからの依頼により権
  威DNSサーバが管理するゾーン情報を動的に更新するための機能です。

  BIND 9.xにはTSIGの取り扱いに不具合があり、あるゾーンの特定のサービス
  に対しTSIGによるアクセス制限が設定されており、かつ、有効なTSIG鍵の名
  前が既知であった場合、そのサービスのTSIG認証を迂回できます。そのため、
  それらのアクセスコントロールリスト(ACL)にTSIGによるアクセス制限が
  設定されており、かつ、TSIG以外の制限が設定されていなかった場合、悪意
  を持つ第三者がリモートからのDynamic Update経由で、ゾーンの内容を操作
  することが可能になります。

  ゾーンの内容が操作された場合、偽サイトへのアクセスの誘導、電子メー
  ルの盗難など、さまざまな行為に悪用される可能性があります。

  (2017年7月13日追加)なお、namedの設定ファイル(named.conf)において
  "update-policy local;"オプションを使用している場合、既知の名前
  (local-ddns)とデフォルトのアルゴリズムを用いたTSIG鍵が暗黙の設定と
  して定義され、かつ、IPアドレスベースのアクセス制限が設定されていない
  状態となります。そのため、潜在的に非常に危険な設定となることに注意が
  必要です。

▽対象となるバージョン

  本脆弱性は、以下のバージョンのBIND 9が該当します。

  ・9.11系列:9.11.0~9.11.1-P1
  ・9.10系列:9.10.0~9.10.5-P1
  ・9.9系列:9.9.0~9.9.10-P1
  ・上記以外の系列:9.4.0~9.8.8

  なお、ISCでは9.8以前の系列のBIND 9のサポートを終了しており、これらの
  バージョンに対するセキュリティパッチはリリースしないと発表しています。

▽影響範囲

  ISCは、本脆弱性の深刻度(Severity)を「高(High)」と評価しています。

  本脆弱性については、以下の脆弱性情報(*1)も併せてご参照ください。

  (*1)CVE - CVE-2017-3143
        <https://cve.mitre.org/cgi-bin/cvename.cgi?name=CVE-2017-3143>

▼一時的な回避策

  IPアドレスレンジの検証とTSIG認証の双方を要求するアクセスコントロール
  リスト(ACL)を設定することで、本脆弱性の影響を軽減できます。ISCでは、
  この方式による設定方法を以下の文書(*2)で公開しています。

  (*2)Using Access Control Lists (ACLs) with both addresses and keys
        <https://kb.isc.org/article/AA-00723>

  (2017年7月13日更新)なお、設定ファイル(named.conf)において
  "update-policy local;"オプションを使用している場合、できるだけ速やか
  にバージョンアップを行う必要があります。それが不可能な場合以下の例の
  ように、設定ファイルのupdate-policyステートメントをTSIG鍵を要求する
  allow-updateステートメントに切り替えた上で、IPアドレスベースのACLを
  追加する必要があります。

    allow-update { !{ !localhost; }; key local-ddns; };

▼解決策

  本脆弱性を修正したパッチバージョン(BIND 9.11.1-P2/9.10.5-P2/
  9.9.10-P2)への更新、あるいは各ディストリビューションベンダーからリリー
  スされる更新の適用を、速やかに実施してください。

▼参考リンク

  以下に、ISCから発表されている情報へのリンクを記載します。また、各ディ
  ストリビューションベンダーからの情報や前述のCVEの情報なども確認の上、
  適切な対応を取ることを強く推奨します。

  - ISC

   セキュリティアドバイザリ

    CVE-2017-3143: An error in TSIG authentication can permit
                   unauthorized dynamic updates
    <https://kb.isc.org/article/AA-01503>

   パッチバージョンの入手先

    BIND 9.11.1-P2
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.11.1-P2/bind-9.11.1-P2.tar.gz>
    BIND 9.10.5-P2
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.10.5-P2/bind-9.10.5-P2.tar.gz>
    BIND 9.9.10-P2
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.9.10-P2/bind-9.9.10-P2.tar.gz>

▼連絡先

  本文書に関するお問い合わせは <dnstech-info@jprs.co.jp> までご連絡くだ
  さい。

---------------------------------------------------------------------
▼更新履歴
  2017/06/30 11:00 初版作成
  2017/07/13 11:00 ISCのセキュリティアドバイザリの更新を反映


株式会社日本レジストリサービス Copyright©2001-2024 Japan Registry Services Co., Ltd.