---------------------------------------------------------------------
■(緊急)BIND 9.xの脆弱性(DNSサービスの停止・リモートコード実行)
について(CVE-2021-25216)
- GSS-TSIGが有効に設定されている場合のみ対象、バージョンアップを強く推奨 -
株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
初版作成 2021/04/30(Fri)
---------------------------------------------------------------------
▼概要
BIND 9.xにおける実装上の不具合により、namedに対する外部からの攻撃が
可能となる脆弱性が、開発元のISCから発表されました。本脆弱性により、
提供者が意図しないサービスの停止や、リモートコード実行が可能になる可
能性があります[*1]。
[*1] ISCでは、本脆弱性の影響はCPUアーキテクチャーに依存しており、リ
モートコード実行は32ビットプラットフォームで可能になり得る旨を
発表しています。
該当するBIND 9のパッケージを利用しているユーザーは、各ディストリビュー
ションベンダーからリリースされる情報の収集やバージョンアップなど、適
切な対応を速やかに取ることを強く推奨します。
本脆弱性はGSS-TSIG(後述)の実装上の不具合に由来するものであり、当該
機能を使うオプションが設定されている場合のみ対象となります。デフォル
トの設定では、対象となりません。
▼詳細
▽本脆弱性の概要
GSS-TSIGはRFC 3645で定義される、GSS-API[*2]に基づいた認証の枠組みを
TSIG[*3]に追加するための仕組みです。
[*2] RFC 2743で定義される、セキュリティサービスを提供する際のアプリ
ケーションプログラムインターフェース(API)の仕様。
[*3] RFC 8945で定義される、DNSの通信(トランザクション)に電子署名を
付加し、通信の安全性を高めるための仕組み。
BIND 9.xにはGSS-APIで使われるSPNEGO[*4]の実装にバッファオーバーフロー
を引き起こす不具合があり、GSS-TSIGが有効に設定されている場合、外部か
らの攻撃が可能になります。
[*4] RFC 4178で定義される、GSS-APIにおけるネゴシエーションの仕組み。
▽対象となるバージョン
本脆弱性は、BIND 9.5.0以降のすべてのバージョンのBIND 9が該当します。
なお、ISCではサポートを終了した系列のセキュリティパッチはリリースし
ないと発表しています。
▽影響範囲
ISCは、本脆弱性の深刻度(Severity)を「高(High)」と評価しています。
本脆弱性は、namedの設定ファイル(通常はnamed.conf)でGSS-APIに関する
「tkey-gssapi-keytab」または「tkey-gssapi-credential」オプションを指
定している場合に対象となります。当該機能は、BIND 9.xをActive
Directoryのドメインコントローラーと組み合わせた混合サーバー環境に加
え、BIND 9.xがSambaと統合されているネットワークでも使われています。
ISCでは、本脆弱性の影響はCPUアーキテクチャーに依存しており、64ビット
アーキテクチャではサーバーのクラッシュ、32ビットアーキテクチャではサー
バーのクラッシュとリモートコード実行が可能になり得るとしています。
なお、ISCでは本脆弱性への対応として、2021年4月にリリースするBIND
9.11系列と9.16系列から、ISCによるSPNEGOの実装を削除する旨を発表して
います。
本脆弱性については、以下の脆弱性情報[*5]も併せてご参照ください。
[*5] CVE - CVE-2021-25216
<https://cve.mitre.org/cgi-bin/cvename.cgi?name=CVE-2021-25216>
▼一時的な回避策
他の認証方法に切り替え可能である場合、GSS-TSIGを使わないように設定を
変更することで、本脆弱性を回避できます。
また、一部のプラットフォームでは、BINDをビルドする際のconfigureスク
リプトのコマンドラインで「--disable-isc-spnego」を指定することで、本
脆弱性を含まないnamedを作成できます。この場合、namedにSPNEGOが組み込
まれず、結果としてGSS-APIが使えなくなる可能性があります。
GSS-API全体を使わない場合、同じくコマンドラインで「--without-gssapi」
を指定することで、GSS-APIの機能を含まず、結果として本脆弱性を含まな
いnamedを生成できます。
▼解決策
本脆弱性を修正したパッチバージョン(BIND 9.16.15/9.11.31)への更新、
あるいは、各ディストリビューションベンダーからリリースされる更新の適
用を、速やかに実施してください。
▼参考リンク
以下に、ISCから発表されている情報へのリンクを記載します。また、各ディ
ストリビューションベンダーからの情報や前述のCVEの情報なども確認の上、
適切な対応を取ることを強く推奨します。
- ISC
セキュリティアドバイザリ
CVE-2021-25216: A second vulnerability in BIND's GSSAPI security
policy negotiation can be targeted by a buffer
overflow attack
<https://kb.isc.org/docs/cve-2021-25216>
パッチバージョンの入手先
BIND 9.16.15
<https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.16.15/bind-9.16.15.tar.xz>
BIND 9.11.31
<https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.11.31/bind-9.11.31.tar.gz>
▼連絡先
本文書に関するお問い合わせは <dnstech-info@jprs.co.jp> までご連絡くだ
さい。
---------------------------------------------------------------------
▼更新履歴
2021/04/30 10:00 初版作成
株式会社日本レジストリサービス Copyright©2001-2024 Japan Registry Services Co., Ltd.