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■(緊急)BIND 9.xの脆弱性(DNSサービスの停止)について(CVE-2022-3924)
  - バージョンアップを強く推奨 -

                                株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
                                            初版作成 2023/01/26(Thu)
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▼概要

  BIND 9.xにおける実装上の不具合により、namedに対する外部からのサービ
  ス不能(DoS)攻撃が可能となる脆弱性が、開発元のISCから発表されました。
  本脆弱性により、提供者が意図しないDNSサービスの停止が発生する可能性
  があります。

  該当するBIND 9のパッケージを利用しているユーザーは、各ディストリビュー
  ションベンダーからリリースされる情報の収集やバージョンアップなど、適
  切な対応を速やかに取ることを強く推奨します。

  本脆弱性はserve-stale(後述)が有効になっているnamedにおいて(デフォ
  ルトでは無効)、設定ファイル(通常はnamed.conf)の
  stale-answer-client-timeoutオプションに、0より大きい値を指定している
  場合のみ対象となります。

▼詳細

▽本脆弱性の概要

  serve-staleはRFC 8767で定義される、DDoS攻撃や事故などで権威DNSサーバー
  から応答が得られなかった場合に期限切れのキャッシュデータを活用して、
  名前解決を継続するための機能です。namedのserve-staleはデフォルトで無
  効になっており、設定ファイルのほか、rndcコマンドで有効に変更できます。

  BIND 9.xにはserve-staleの実装に不具合があり、以下の条件をすべて満た
  した場合、namedが異常終了する可能性があります。

    1)serve-staleが有効になっている

    2)設定ファイルにおいて、stale-answer-client-timeoutオプションに
       0より大きい値を設定している(デフォルトではoff)

    3)クライアントから数多くの再帰問い合わせを受け取った結果、処理中
       の再帰問い合わせの数が設定ファイルのrecursive-clientsオプション
       の設定値[*1]に達し、応答待ちのクライアントにSERVFAIL[*2]を返す
       必要が生じる

  [*1] デフォルトでは1000に設定されています。なお、recursive-clientsに
       よる制限は、設定値の90%(デフォルトでは900)に達した時点で発動
       します。動作の詳細については、BIND 9に付属のマニュアルをご参照
       ください。

  [*2] 問い合わせを処理できなかった旨の応答。

▽対象となるバージョン

  本脆弱性は、以下のバージョンのBIND 9が該当します。

  ・9.18系列:9.18.0-9.18.10
  ・9.16系列:9.16.12-9.16.36

  なお、ISCではサポートを終了した系列のセキュリティパッチはリリースし
  ないと発表しています。

▽影響範囲

  ISCは、本脆弱性の深刻度(Severity)を「高(High)」と評価しています。

  本脆弱性はnamedの設定ファイルにおいて、stale-answer-client-timeoutオ
  プションに0より大きい値を設定している場合のみ対象となります。

  本脆弱性については、以下の脆弱性情報[*3]も併せてご参照ください。

  [*3] CVE Record | CVE
       <https://www.cve.org/CVERecord?id=CVE-2022-3924>

▼一時的な回避策

  namedの設定ファイル(通常はnamed.conf)において、
  stale-answer-client-timeoutオプションに0またはoff/disabled(デフォル
  ト)を設定することで、本脆弱性を回避できます。

  なお、制限が発動しないようにrecursive-clientsの値を増やすことでも本
  脆弱性を回避できますが、サーバー資源が限界を超える可能性が高まるため、
  推奨されません。

▼解決策

  本脆弱性を修正したパッチバージョン(BIND 9.18.11/9.16.37)への更新、
  あるいは、各ディストリビューションベンダーからリリースされる更新の適
  用を、速やかに実施してください。

▼参考リンク

  以下に、ISCから発表されている情報へのリンクを記載します。また、各ディ
  ストリビューションベンダーからの情報や前述のCVEの情報なども確認の上、
  適切な対応を取ることを強く推奨します。

  - ISC

   セキュリティアドバイザリ

    CVE-2022-3924: named configured to answer from stale cache may
                   terminate unexpectedly at recursive-clients soft
                   quota
       <https://kb.isc.org/docs/cve-2022-3924>

   パッチバージョンの入手先

    BIND 9.18.11
       <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.18.11/bind-9.18.11.tar.xz>

    BIND 9.16.37
       <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.16.37/bind-9.16.37.tar.xz>

▼連絡先

  本文書に関するお問い合わせは <dnstech-info@jprs.co.jp> までご連絡くだ
  さい。

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▼更新履歴
  2023/01/26 10:00 初版作成

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