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委員会資料

第9回JPドメイン名諮問委員会議事録

  株式会社日本レジストリサービス  第9回JPドメイン名諮問委員会議事録


1. 日    時: 2004年5月25日(火) 16:30 ~ 18:30


2. 場    所: ホテルグランドパレス 4階『桐の間』
              〒102-0072  東京都千代田区飯田橋1-1-1
              Tel 03-3264-1111 Fax 03-3230-4985


3. 出 席 者: 後藤滋樹委員長
              松本恒雄副委員長
              飯塚久夫委員
              加藤真代委員
              加藤雄一委員
              島田精一委員


4. 陪 席 者:  佐野晋(JPRS 代表取締役副社長)
              渡邊哲男(JPRS 取締役)
              堀田博文(JPRS 取締役)
              宇井隆晴(JPドメイン名諮問委員会事務局)


5. 次  第:

   1. 開会
   2. 議題
       (1) JPドメイン名の登録に関わる基本的な手続への柔軟性の導入について
       (2) JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性について
       (3) 2004年度JPドメイン名諮問委員会の活動について
       (4) その他
   3. 閉会


6. 資  料

   資料1 JPドメイン名諮問委員一覧
   資料2 諮問書「JPドメイン名の登録に関わる基本的な手続への柔軟性の導入について」

   参考資料 「JPドメイン名の登録に関わる基本的な手続への柔軟性の導入」
             に関する論点について


7. 議  事(◎は委員長、○は委員、●は JPRS 取締役および事務局の発言)

《開催の挨拶》

●今回より、前回の諮問委員会でご推薦をいただき、今年度より委員に就任さ
れた、島田精一委員にご出席をいただいている。本日6名全員の委員にご出席
をいただき、諮問委員会規則での議決定足数を満たしている。また、本日は、
JPRSの役員として、副社長の佐野、役員の堀田、渡邊、および事務局より宇井
が陪席させていただくことをご了承お願い申し上げたい。

 《JPドメイン名の登録に関わる基本的な手続きへの柔軟性の導入について》

◎一つ目の議題は「ドメイン名の登録に関わる基本的な手続に関わる基本的な
手続への柔軟性の導入」である。

この委員会は、一昨年、昨年と、JPドメイン名の様々な規則や手続に関する方
針について議論をしてきており、特に緊急度の高いものから取り上げてきたと
いう経緯がある。本年度については、引き続きJPドメイン名の公益性の維持、
あるいは利便性の向上といった観点から議論を行っていきたい。

島田委員にも加わっていただき、今日は今期のフルメンバーになっている。今
年度の一つ目のテーマとしては、JPRSから「JPドメイン名の登録に関する基本
的な手続きへの柔軟性の導入について」という内容の諮問書をいただいている。
ただ、「柔軟性」というのは抽象的な言葉であり、意味が幅広いので、諮問事
項の具体的な内容をまずご説明いただき、それから、委員のみなさまのご意見
をいただきたい。

まず、事務局から資料2「諮問書」の内容についてご説明をいただきたい。

   資料2「諮問書」と、論点について説明した参考資料につき、事務局より説
   明が行われた。

●論点は以下の通り。

  論点1
  - 登録撤回、登録回復の手続を規定し、その仕様を公開するか否か。

      + 手続の公平な提供を行うためには、明確な規定とその公開が必要。
	しかし、無制限な提供は手続の悪用を招く。

	- 登録撤回は、意図的に登録と撤回を繰り返すことで、ドメイン名の
  	  不当占拠を可能とする。

	- 登録回復は、元の登録者が回復を望んでいない場合で、第三者が登
	  録を希望している場合、登録回復後に移転を行うことで、先願主義
	  に反した不公平な登録を可能とする。

  論点2
  - 登録撤回、登録回復の手続にあたって、その理由の提出を求めるか否か。

      + 個々の案件について理由の提出を求め、それを判断することで悪用の
        防止効果を高めることはできるが、手続が提供する側・行う側ともに
        高コストになる。

      + 手続の用途を規定として限定し、規則・契約によって遵守を求めるこ
        とで、手続のコストは低くなるが、信頼モデルとなるため、問題の発
        生に対しては事後対応となる。

  論点3
  - 登録撤回手続を設けるにあたって、撤回後、すぐに再登録を可能とするか否か。

      + 一旦登録されたJPドメイン名は、Whoisにおいて、登録状態にあるこ
        とと、登録有効期限が公開される。同じJPドメイン名の登録を希望す
        る第三者は、Whoisでその内容を知り、自分が登録できるかどうかを
        確認する。

         登録撤回後、通常のドメイン名廃止と同様に一時凍結期間を設ける
         ことで、そのドメイン名の登録を希望する第三者は、一時凍結期間
         後に登録することができる、ということを知ることができる。しか
         し、誤って登録されたドメイン名の登録撤回後、不必要に第三者か
         らの登録を拒む期間ともなる。

         逆に、登録撤回後にすぐに再登録を可能とすると、事前にいつから
         登録が可能であるかを知ることができない。しかし、登録できる時
         期は早まることになる。


○まず論点1について。基本的には手続の規定を公開すべきだと思う。資料の
一番最後に.com/.netについてこういう手続が存在するといった記述があるが、
妥当な取り決めだと思う。この手続によって、具体的になにか問題が出ている
といった話はあるのか。

●gTLDにおいては、トラブルを救済するような手続が、順次拡張される方向で
増えてきている。廃止後の登録回復(Redemption Grace Period)というような
手続は、ここ数年の議論の中で、このような手続が必要であるということで導
入されている。gTLD、特に.com、.net等の手続については、非常に長い時間を
かけたICANNの議論の末に出てきているものであり、導入による効果の方がそ
れによって発生するトラブルをおおいに上回るという判断の下で導入されてい
る。

実際にこの手続が、トラブルを新たに生んでいるかどうか、客観的に第三者の
目で見た評価というものは把握していない。しかし実際にそのサービスを利用
している事業者からは、これがあることによって、登録者に提供するサービス
に関して、自由度高く、問題を防ぐためのいろいろな措置が取れるようになる
ため、非常に役立っていると聞いている。

○登録撤回手続を導入した場合、登録とキャンセルを繰り返すことで悪用の危
険があると思うが、登録を撤回する場合、そのときに撤回手数料をとるなどと
いうことを少し考えてもいいのではないか。撤回を何度もくりかえすというこ
とで悪用の危険があるということであれば、その点につき、議論すればよい。

○撤回手続に関して、最初にトラブルになりやすいポイントとして説明された
のは「登録した綴りの誤り」ということ。この場合は、綴りの誤りを訂正すれ
ばいい。単純な撤回ではなくて、ひとつは撤回するけれども、別の正しい綴り
を登録するということである。この場合、手数料はそのまま横滑りをするとい
うことになると思うので、単純に撤回を繰り返して、無料で占有するというこ
とにはならないのではないか。綴りの誤りを毎回繰り返すということはありえ
ない。撤回ではなく補正・訂正ということになると思うが、いかがか。

●属性型JPドメイン名には、登録したドメイン名の綴りを変えるという手続が
ある。ただ、この手続が想定しているのは、今使っているドメイン名が、社名
の変更等で、違うドメイン名になる場合。特にCO.JPなどは、一つの会社で一
つのドメインしか登録できず、新しい名前で新たに登録することが併行してで
きないため、ドメイン名を変えるという手続が存在している。ただ、一定期間
の併用運用を必要とし、また、新たな登録によっていろいろな手数料も発生す
るので、現在の属性型JPドメイン名のドメイン名変更という手続においては、
変更の手数料をいただいている。そのため、ドメイン名の変更手続との整合性
をいかにとるかということに関し、もう少し検討しなければいけないところは
ある。

汎用JPドメイン名の方は、そういう手続が今ないので、新たに設けるというこ
とができる。汎用JPドメイン名は、登録者がリアルタイムにドメイン名を登録
できるような手続を提供している指定事業者が非常に多い。そういう場合、登
録者はクレジットカードを使い、指定事業者のWebからすぐにドメイン名を登
録できる。(スペルの誤りだけではなく)ドメイン名が登録された後に、実は
登録者からお金がもらえなかった、もしくは、クレジットカードの与信が通ら
なかった、といった事例がいくつか発生しているようだ。そういったところで、
この「登録の撤回」という手続が活用できるのであれば、必要性について考え
ていいのではないかと思う。

○この問題ケースは、そもそも論の議論が必要と思う。JPRSとしては登録者で
あろうが、事業者であろうが、親切にした方がよい、という前提に立てば、
登録の撤回ではなく、補正という手続にして料金をスライドさせればよいとい
う意見はわかる。ただ実際問題として、事業者側の立場から言うと、間違いが
あったときの修正の方が新規登録よりもかえってコストがかかる。そのコスト
に基づいて事業者としては料金を決めているわけだから、何もお金をもらわな
いというのはなかなか辛いのが実態。間違いは間違いであり、それが誰の間違
いかということをはっきりさせることが必要。また、そもそもJPRSがどこまで
面倒を見るかという話になる。

◎ドメイン名をAからBにするときに、Aを取り消してBを新たにするということ
でなくても、AはBの間違いであったという手続きをすればよいというご意見が
あったがどうか。

○ドメイン名の間違いであれば、登録したり消したりという状態はありえない。
単純な撤回ではなくて間違えたものを正しく登録し直すのだからお金は返さな
いという話でいいのではないか。変更したということにするのか、一度消して
もう一度登録したということにするのか、というのは技術的な評価をどうする
かだが、コスト的には同じコスト、無料にはしないということにすればいいの
ではないか。

◎たぶん事務局の説明では、撤回を独立した手続きとして設けてしまうと、出
して引っ込める、出して引っ込めるということが原理的には可能になるという
こと。基本的な考え方と、実際にどうルールとして、また、その運用も含め、
想定するかということに少し工夫がいるのかもしれない。

○前提として公開するかしないかであるか、公開するとなると、インターネッ
トの世界を性善説で見るか性悪説で見るかという話になる。このような手続を
大量に連続して行うことで、大きな混乱を招く危険性もある。「登録の撤回」
という部分は性悪説を前提に考える必要はあると思っている。そういう意味で
はきちんと厳格にやって、何らかの手数料を取るなり、返金しないなり、そう
いうような形がよいのではないか。

◎手続の反応時間が早く、かつコストがあまりかからなければ、人間ではなく、
たとえば計算機が自動的にドメイン名登録をしたり撤回したり、ということを
考える人がいるかもしれない。

○最近特にそういう危険を感じる。

◎JPRSとして、登録者のご要望に応えたくても、色々なことを考える人がいて
仕方がないようなところもある。

○特に汎用ドメインは、自由度が高いと思う。

◎JPドメイン名に関しては、あまり無秩序なことがないという期待はあるだろ
う。汎用の方は、特にメカニカルなことを考える人がいても防ぎようがない。
その辺は、そもそもどう考えるかということが重要。基本的には工夫をした上
で、あまり杓子定規にならないようにやりましょうという趣旨だと思うので、
そういった方向はだいたいよいのではないか。ただいろいろご懸念のこともあ
り、その辺は現在JPRSで経験したことも教えていただいて、工夫をしてという
ことだろうか。

○資料の中の「トラブルになりやすいポイント」の頭のところに、お客さん自
身が間違えるケースと指定業者が間違ったスペルで登録するケースがあるとい
うことだが、登録するときの態度があまりにも安易過ぎるのではないか。ドメ
イン名を登録するということは、相当の真剣さでやってもらわないといけない。
登録者自身が間違うケースというのはあるかもしれないが、指定事業者が違う
形で登録するというのは大きな問題と思う。そういう意味では、ペナルティと
いうことも考えざるを得ない。ランニングコストが増えれば、きちんとやって
いるユーザにも負担が増える。登録の仕方がかなりラフになっているのではな
いかという私の想像に対してはどうか。

●よく聞く誤りのパターンとしては、まず、登録者が間違えるケースがある。
Webの画面から申し込む形になっていてドメイン名をキーボードから入力する
のだが、往々にして確認画面をあまり見ないで、すぐに完了ボタンをクリック
してしまうユーザが多いということを、指定事業者の方からもよく聞く。もち
ろんこれはユーザの責任に帰するところがあると思うが、よく発生していると
いうのが現状。

次に、指定事業者の側がミスをしてしまうというケースもある。機械的に受け
付けている場合は指定事業者のミスが入る余地はあまりないが、ドメイン名登
録を書面で受け付けている事業者の場合、ユーザが紙にアルファベットを手書
きしたものを提出されると、そのスペルを読み間違えてしまうことがある。た
とえば、数字の「1」とアルファベットの「l」など。これは指定事業者のミス
というよりは読み間違いなので、どちらが悪いとは言いにくい。

◎確かにドメイン名の登録は慎重にすべきだが、ドメイン名が重複を許してい
ないという事情がある。素直にローマ字読みでつけた文字列が登録できない場
合には、ユーザの側でいろいろ工夫をされるのだが、そうすると、間違いやす
くなる。われわれも人から聞いたメールアドレスや、Webのアドレスなどを、
思い込みで間違うこともある。そういう場合、なかなか誰の責任かはっきりし
ない。ただ同情すべき余地はある。あと、人任せにした場合にどこまで誰が責
任を持つか、という問題があって、ご自分でちゃんとやるというのが原則であ
るものの、かなり人にお任せになる方もいるだろう。

○救済されるべきケースがかなりあるのだろうということがわかった。

◎あまり過度に面倒を見るということになると、ご指摘のようにその分のコス
トを、注意を払って慎重にやっている登録者がある意味で負担するということ
になるので、ある程度のところまで、ということになるのではないか。

○意図的にタダ取りしようとするものは排除されなければいけない。その辺は
JPRSで見極めはつくのか。

●同一人物が登録と撤回を繰り返すというようなものについては把握できる。
登録解除にしても登録撤回にしても手続きとしては把握できるので、何かしら
問題があれば、事後になるかもしれないが、指定事業者の行為であれば指定事
業者契約に基づいて何らかの措置をとることになるだろうし、登録者の行為で
あればその行為を何らかの形で制限するという措置も考えなければいけない。

◎いろいろ心配して手だてをとるとまたコストがかかってしまい、かといって、
あまり簡単にやると、いろいろなことをやる方がいるということもある。かな
り先まで予期してルールを決めても、ルールを公開すれば世の中のやり方が変
わってしまうかもしれないので、そこまで含めて完全に予測をするというのは
少し難しいかもしれない。ここでの委員の方々とJPRSのご経験によってある程
度の案がまとまればそれで実施してみて、経験を教えてもらうということでど
うか。

○論点の1については、撤回して別のドメイン名を登録するのは構わないが、
料金は返さないとすれば、いくつか問題点は防げるのではないか。

論点の2つ目は、 理由を厳しく問わない限り、やむをえないことだから許すと
いうことにするしかないのではないか。有料で他の人に移転するということが
許されているのであれば、 1ヶ月以内にもう一度回復して移転したとしてもい
いのではないか。ややアンフェアかもしれないが、それを防ぐためのコストに
比べるとやむをえないということで、信頼モデルでやっていく方がいいのでは
ないか。

3つ目は、gTLDにおいては直後から再登録が可能としているが、あえて直後か
らにしなくてはならないかというとそうではない。通常の登録抹消と同じよう
に1ヶ月間は凍結してみんなが公平な状況で登録できる状態にする方が、適切
ではないか。あえて直後から再登録を可能にして、たまたまそれを知った人が
使える状態にするほどの緊急なニーズはないのではないか。

○登録を廃止して、その月の最後までを1ヶ月と考えるのか?

○現状は「もうドメイン名を使いません」という申し出をすると、その月の月
末でドメイン名は登録が廃止される。それから1ヶ月間は誰も登録申請できな
い状態にした上で、1ヵ月後にヨーイドンという形で公平に受け付けている。1ヶ
月間、「このドメイン名については誰も登録申請できない状況になっている」
ということが誰にでも分かる状況にしており、非常にフェアなやり方である。
一旦登録したドメインを、他に使いたいという人がいた場合、その登録を抹消
した直後にすぐ登録できるということにすると、それが登録間違いであって抹
消されるということをたまたま知った人が得をすることになるかもしれない。
通常の場合と同じように、1ヶ月間凍結してオープンにする方がいいのではな
いか。他にも使いたい人がいるのに、たまたまその情報を知らないことがあり
得る、ということがフェアではない気がする。

○登録の廃止の場合と、間違いで消すのは明らかに違うので、そこは少し議論
をした方がよい。同一で考えるよりはきちんと分けて考えた方がいいと思う。
具体的には期限についてだが、登録の間違いの場合は、たとえば5日間なら5日
間と決めて、登録の撤回をしたら次からはすぐに使わせるべきだと思う。メー
ルアドレスなどもいいのはどんどん登録されてしまうので、間違いなら撤回し
てすぐに使わせるのが逆にオープンだろうと思う。

○本来の抹消の場合の、1ヶ月間おくという趣旨が、従来使っていた人との混
同を避けるということであれば賛成。そうではなくて、当該ドメインを他にも
使いたい人、より多くの人に競争で取得させるチャンスを与えようという趣旨
であれば、誤りの場合でも凍結期間を同じにおくのがよいのではないか。第三
者から見れば、情報が誤りで登録されたものなのか、それとも任意に登録を解
除されたものなのかはわからない。したがって、毎日のようにWhoisをたたい
てデータを見ている人が得をするということになるのではないか。

○廃止後に、ドメイン名が凍結期間にあることは誰が知り得るのか?

●通常にドメイン名が廃止されたものの一時凍結期間は、現在Whoisで表示を
している。

◎それは間違っていても、とにかく一旦登録されたものだから、という考え方
になるのか?

●一旦登録されたときに、その登録状態を目にした人がいたとすると、「この
ドメイン名は誰かに取られてしまったのだな」という認識を持つと思う。そし
て、その翌日に登録撤回がされるということは、多分思わない。したがって、
1ヶ月くらい様子を見て「あのドメイン名はどうなったかな」と見たときにも
う他の人に登録されてしまっていると、そこに情報の差と機会の差が生まれて
しまうのかなという懸念からこの論点をあげた。

◎いろいろな考え方がある。間違いは間違いなので、一旦登録とは言ってもす
ぐに登録可能状態にしてもいい、という考え方もある。そこは今心配している
ように、どういう風に情報を知ることができるかというメカニズムとも関係が
あるだろう。これは今日この場で全部決めず、そういう考え方があるという整
理ができればよい。引き続いていろいろ委員の方々にはご意見を伺う機会があ
るかと思うし、また事務局の方からも関連の話題の事例などご紹介をいただけ
ればと思う。

○本来の登録抹消の場合について、1ヶ月間の凍結期間の趣旨が登録者が急に
変わると一般のアクセスユーザの混乱を招くのを防止するということのみで、
使わないドメインはなるべく有効に使った方がいいのだということであれば、
たとえば、抹消と同時にドメイン名の取得は可能にするが、それを使えるのは
1ヵ月後にするというポリシーもありうると思う。今の状況だと1ヶ月間は誰も
権利を取得できないし使うこともできないという形。もし誰も権利を取得でき
ない期間をわざわざ1ヶ月間おくという趣旨が、なるべくオープンになったド
メインを多くの人に知らせて、登録したい人を探す範囲を広げようということ
にあれば、誤った登録の抹消の場合もよく似たポリシーを適用してもいいので
はないか。

●そもそも廃止後の一時凍結期間の目的は大きく2つ。運用の継続性による混
乱の防止と、初期登録の機会の均等性である。新規登録の撤回の後に設けるこ
とを考えると、運用の継続による混乱というのはほぼありえないだろう。たと
えばgTLDのように、この場合の凍結期間を5日間としたときに、その5日間の間
にドメイン名の使われ方が一般に浸透するということは非常に考えにくい。
登録が誤りなら、そもそも使われていないという可能性の方が非常に高い。も
し期間をおくのであればそれは新たな登録者に対する機会の均等性ということ
を目的にし、置くべきか否か議論するべきと思う。

○事業者としては、仕事の流れのパターンが複雑になるというのは、高いコス
トがかかるため非常に嫌。エンドユーザとの間には何らかの契約が成り立って
いるので、「登録はしたが、実際に使い出していいのは1ヵ月後」というよう
なことはできない。その辺の手続きは、実際には本人確認等、郵便でのやり取
りも絡んでおり、オンラインで機械的にやり取りすればいいというわけにいか
ない。郵便物の発送を1日止めておくだけでも大変。実務上の配慮をお願いし
たい。

◎すでにご指摘の通り、いくつかの観点があるので、どういう考え方でどうす
るのがいいか、どういう問題点があるかという形で再整理をしてほしい。

○5日という数字が出てくるのは月曜から金曜までという意味か。一般のクー
リングオフ制度を思い浮かべるのだが。

●5日というのは.comにおける事例だが、5日がウィークデイの5日であるかと
いうところまでは公開されているドキュメントからは読み取れなかった。あま
り長い期間ではないが、実質的にエンドユーザが気付く期間、事業者が気付く
期間ということで設けられた数字かと思う。

◎話は細かくなるが、一度決めてしまうとなかなか後からは細かいことこそ変
えにくい。この話題は、現在緊急に何か問題がおきているというよりは、方向
として要望や具体的な実例があるから議論しようということなので、また引き
続きご意見を伺ったりする機会があるだろう。事務局においても、事例やご経
験も差し支えない範囲で教えていただき、考えていきたい。いくつかの関連の
軸というもの、比較の観点みたいなものが出てきたと思うので、もう少し整理
をしたうえでご意見を伺いたい。

        諮問事項につき、委員会にて継続して答申案の検討を行うことが合意
        された。


《JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性について》

◎本事項については、昨年度から引き続き議論している。諮問事項ではないが、
本委員会の設けられた背景がJPドメイン名登録管理業務の公平性・中立性に非
常に大きく関係があることから、本委員会においても継続的に意見交換する必
要があると認識し、議題としている。

前回、事務局より、現状の枠組みの整理を進めているとご報告いただいた。今
回は、その経過について再度ご報告いただき、委員の皆様のご意見を頂戴した
い。

●JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性については、昨年9月と
11月に本委員会でご議論いただき、今回が3回目となる。本日は、これまでの検
討の経緯と現在の検討状況を簡単にご報告したい。

検討の経緯を説明する。まず、JPRSという株式会社を設立し、JPドメイン名登
録管理業務をそれまでの社団法人JPNICからJPRSに移管するにあたり、新会社
が登録管理業務を適切に行うことを広く約束した経緯がある。適切に行うとは、
公平性、中立性を確保しながら業務を行うということである。

RFC1591、ICP-1とは、ドメインネームシステムの構造と権限の委任に関する文
書である。これらの中にも、ドメイン名登録管理はコミュニティに奉仕する形
で行われるべきということ、登録管理者はインターネットコミュニティを代表
し、パブリックなサービスとして登録管理業務を提供すべきということが明確
に書かれている。JPRSも、この方針に則って業務を行っている。

移管に先立ち、JPRSとICANNは、ccTLDスポンサシップ契約を締結し、JPドメイ
ン名登録管理業務における責任関係を明確に規定した。このスポンサ契約書の
中でも、JPドメイン名の登録管理が日本国とそのインターネットコミュニティ
の利益に資するものであることと規定されている。

さらに、JPRSとJPNICが締結したJPドメイン名登録管理業務移管契約にも、日
本のインターネットコミュニティの健全な発展に寄与すべく業務を行っていく
ことが明記されている。

これらの各文書の中で述べられている公益性、公平性、中立性といった言葉に
対応するような業務を行うことが、JPRSには期待されている。

このようなコミュニティに対する約束を継続的に守るためには、何らかのシス
テムが必要だと考える。本委員会もこのシステムの一つとさせていただいてい
る。また、JPRSが持つ社会的な責任について、関係者の間でさらに合意してお
くべきである。

そこで、登録管理業務の範囲とその方向性の明確化、仕組みの整備が必要と考
えている。これまで、考え方を整理して本委員会でご議論いただいたり、コミュ
ニティ、関係者の方々と相談してきた。

考え方の整理として、これまで策定されたドキュメント等に書かれている4つ
のキーワードを再確認する作業を行い、昨年の本委員会でもご紹介した。ここ
であらためて説明する。

「公益性」インターネットコミュニティ全体の利益
          →中立性、公平性の実現を目指すことを通じて向上

「公共性」特定の集団に限られることなくインターネットコミュニティ全体に
          利害・影響をもつ性質
          →JP DNSやレジストリデータベースの安定的運用

「中立性」登録者や指定事業者(会員)に対して中立な立場。方針策定の
          neutrality
          →登録者や指定事業者に対し中立な立場での方針策定、諮問委員会
            への諮問・答申への対応

「公平性」登録者や指定事業者を、同等に扱うこと。日々の業務のfairness、
          equitability
          →登録規則に基づく業務遂行。諮問委員会への諮問・答申への対応

前回までの議論ではこのように提示させていただいた。今後の議論の中でもう
少し検討していく必要があるのではないかと思っている。

公共性の考え方については、前回、委員の方から「もう少し慎重に扱った方が
良い」というコメントを頂いた。「公共事業」という言葉があるように、一般
的に公共性とは、法律的事由に基づいて、保護と規制の中で考えられるサービ
スである。具体的には、警察、国防、一般道路などについて用いられており、
誤解を招くこともあると。一方、JPドメイン名登録管理業務においては、JPド
メイン名登録管理業務移管契約書中に、

  第13条(JPRSの責任)

  乙は、本件業務が公共性を持つことを認識し、日本のインターネットコミュ
  ニティの健全な発展に寄与することを目的とし、かつ、全世界のインターネッ
  トコミュニティの発展にも資するように本件業務を運営する。

と規定している。これは、DNS、ccTLDの登録管理業務といったパブリックサー
ビスを民間主導で継続的に提供していくことを指している。そこで、これを行
うためのシステムをどのように展開していくかを明確にすることが重要である。

現在は、公益性を確保するための具体的な施策、各位との関係についてさらに
整理しようとしている。今後は、さきほど紹介した概念、言葉について、さら
に検討をすすめていかなければならない。加えて、関係組織と調整しつつ、よ
り具体的な施策の検討を進めていきたい。さらに、公益性をより確保できる形
での、JPRSの情報発信のありかたを提案していきたい。

○JPRSが、民間企業でありながら公益性、公共性、公平性、中立性等の理念を
掲げていくことは大変すばらしいことで、このような姿勢は是非失わずにいた
だきたい。とはいえ、現在のインターネットでは、草創期と違い、良心的でな
い人々が多く参加しているのが現実である。

「公益性確保のための施策」は、具体論である。この方向で進めてもらえば公
益性確保のための必要なアクションが明確になり、よろしいと思う。しかし、
言葉や概念の整理となると「インターネットコミュニティ」という言葉が何度
となく出てくる。「インターネットコミュニティ」という言葉の定義は不明で
ある。過去のインターネットと現在のインターネットでその捉え方は同じであ
ろうか。一般のユーザーがこのように広がってしまうと、インターネットコミュ
ニティというのは、最初から甘い考え方でインターネットをやってきたという
象徴の言葉のようにも聞こえる。それも誤解ではあるが、いずれにせよ、今と
なっては様々な誤解を受けやすいので、この言葉は使わないほうが良いと思う。
とはいえ、今のところこれに置き換えられるような対案はないが。

○全く同感である。以前なら、インターネットコミュニティはいわば限られた
エリートの世界だったかもしれないが、今やインターネットは万人に利用され
ている。インターネットの世界と現実社会の違いはもはやほとんどなく、むし
ろ、インターネットの匿名性を利用して、現実社会においてよりもさらに悪意
を醸成しやすい状況となっている。従って、インターネットコミュニティとは、
すでに特別なものではなく、世の中一般と同じと考えるべきである。オンライ
ンで繋がっており、匿名性を持つという点からくる特殊性は考慮にいれなけれ
ばならないが。

最近、企業の社会的責任(CSR)という概念が拡大し、その責任に企業が対応
すべきと一般に言われている。その観点から考えると、インターネットでいう
コミュニティとの対話とは、CSRでいう、企業を取り巻く利害関係者、ステー
クホルダーの要望を聞き取りつつ、その企業としての在り方を考えていくこと
とほぼ同じことである。従って、インターネット、JPドメイン名登録管理業務
であるから特別なコミュニティが存在するということではなく、通常の企業と
同様の利害関係者とのコミュニケーションを検討していくと考えれば良いので
はないか。ただし、インターネットに特有の課題はあるので、それについては
JPRSとして可能な策を検討していくということで良いと思う。

○一般的に、日本の企業が本来持つべき良心がかなり失われている状況が見ら
れる。その中で、公益性、公平性、中立性などの理念を明確に打ち出していけ
る企業はすばらしいと思うし、その姿勢を捨てる必要は全くない。ただ、イン
ターネットの世界はもはや善意の世界ではないという警戒心を持って、良心的
な関係者、特に登録者の保護を行うといった、社会的責任を今後も引き続き自
覚した方針づくりに取り組んでいただきたい。

●私はJPドメイン名登録等に関する規則の最初のバージョンを作ったメンバー
の一人であるが、当時も比較的性悪説に立って規則を作っていた。特に、先願
の原則に基づくドメイン名登録によって、厳しい競争状況が発生することが考
えられるため、注意深く進めてきた。インターネットを取り巻く状況は変化し
てきたが、インターネットが必ずしも性善説に立って利用されているものでは
ない、という考え方は、昔から変わっていない。

さきほど説明した考え方の整理は、原則的な立場の再確認であった。これをも
し変える場合は、どのような方針に基づいて変えるのかをある程度提示しなが
ら、社会的な合意を取って進めていく必要がある。

○説明資料ではJPRSがコミュニケーションをとるコミュニティの中に株主が含
まれている。なぜ株主がインターネットコミュニティなのかがわからない。イ
ンターネットに全く無縁の株主もいるのではないか。むしろステークホルダー
ズという方が分かりやすいのではないか。インターネットユーザーズという意
味でインターネットコミュニティといっているとすれば、株主全てがインター
ネットコミュニティに含まれるとは言えないと思う。

●JPRSは株式会社という形態をとっている。現在は、ここでいうような、イン
ターネットの基盤を支えるという趣旨をご理解いただける方に株主となってい
ただくようお願いしている。このため、資料では株主を含めている。

◎設立の経緯等を踏まえつつ、世の中で一般的に企業について用いられる枠組
みや仕組みは活用するとしても、それが普遍的になることはない。時宜にかな
って問題を整理していくことが必要である。

近代社会においては、皆が他人に依存して暮している。これを利用して悪事を
働く場合には、これは非常に都合が良い。さらに、インターネットにおいて悪
事を行えば、その被害は大きなものとなる。このため、さまざまな問題解決が
要請され議論されている。全てを解決できないとしても、整理を試みたり、何
らかの工夫を提示したりすることが一般的に求められている。その意味では、
今回のJPRSの取り組みは問題解決の取り組みの中でも実験的、先進的である。
風当たりが強いであろうから、本委員会としてはこれを応援し、励ましていき
たいと考えている。

RFCやJon Postel時代、JPRSの設立の経緯と今日では、時間的に少しずつずれ
ている。委員のおっしゃるように、インターネットに対する世の中の受け止め
方、期待や参加者の層も変わってきている。さらに、ICANNに対しても、各国、
国際組織によって受け止め方が異なるといった状況も見られる。JPRSは、これ
ら全てを解決するというわけにはいかないが、このような変化を本質的に受け
止めなければいけない立場に立たされた組織の一つと言えるかもしれない。

○公益性、公平性などの理念は大切にしたいが、これらは基本的には法律でよ
く使われている言葉である。従って、この概念を整理するときに、法律では一
般的にどのような使い方をされているかという視点でもう一度確認してほしい。

○公益性と公共性という言葉が区別しにくい。英語に置き換えれば、public 
utilityであり、社会のインフラを指すのではないかと思う。公益性と公共性は
厳密に分けることができないのではないか。インターネットコミュニティに
サービスしているのではなく、一般社会にサービスし、全ての人に恩恵を与え
るものだからこそ、publicなのである。インターネットコミュニティにサービ
スをするとして、かつ、そのインターネットコミュニティが特定の集団であり、
世界全体とは異なるものだという意識を持っていると、public でないという
批判を受けるかもしれない。

○全く同じ認識である。

◎JPRSが設立されてからそれほど長い時間がたったわけではないが、社会はか
なりに変化してきている。JPRSは、こうした枠組みで動かそうとしている世界
でも最初のグループなので、やり方も含めて他の国が大いに参考にしていると
ころである。JPRSは、その意味で二重にも三重にも大変な役割を果たしている。
それだけにいろいろな問題が出てきたときに真っ先に受け止めなければならな
い役割でご苦労だが、委員の方には引き続き応援団としてのご意見をお願いし
たい。

またおりに触れて委員のご意見をうかがったり、JPRSの現状を報告いただいて
話題として取り上げていきたいと思う。

        JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性につき、委員会
        にて継続して検討を行う旨が合意された。


 《2004年度JPドメイン名諮問委員会の活動について》

◎それでは、本日の最後の議題になるが、2004年の今後の本委員会の活動予定
についてご確認をさせていただきたい。今年度の委員会の動きとしては、次回
2004年8月の定例委員会で本日の諮問事項を審議し、そこで議論がまとまれば、
その後、答申書としてまとめたものをご確認いただき、答申を行いたいと考え
ている。また、2005年2月の定例については、2005年度に向けたテーマの設定等
を行い、新たに議論すべき内容があれば随時検討していきたいと考えている。

        2004年8月の定例委員会での審議に基づき答申を行う方向で検討を
        進めることが合意された。

 《その他》

◎前回第8回JPドメイン名諮問委員会で加藤雄一委員より、委員会規則の付則の
削除など見直しの必要性についてご指摘をいただいた。これについてはJPRSで
検討していただき、現状では、付則の削除以外にはとりいそぎ改訂の必要や不
整合のある項目はない、とのご報告をいただいた。

そこで付則の削除については今回は見送り、規則の内容に関わる大幅な見直し
を行う際に合わせて実施することとしたい。なお、規則自体に関し委員からの
ご意見があれば、随時検討していきたい。

◎これにて本日の議案を全て終了し、第9回JPドメイン名諮問委員会を閉会する。

《閉会》

                                                                        以上

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