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■(緊急)BIND 9.xの脆弱性(過剰なCPU負荷の誘発)について(CVE-2023-50868)
  - バージョンアップを強く推奨 -

                                株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
                                            初版作成 2024/02/14(Wed)
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▼概要

  BIND 9.xにおける実装上の不具合により、namedに対する外部からの攻撃が
  可能となる脆弱性が、開発元のISCから発表されました。本脆弱性により
  namedにおいて過剰なCPU負荷が誘発され、結果としてサービスの停止や品質
  低下などが発生する可能性があります。

  該当するBIND 9のパッケージを利用しているユーザーは、各ディストリビュー
  ションベンダーからリリースされる情報の収集やバージョンアップなど、適
  切な対応を速やかに取ることを強く推奨します。

▼詳細

▽本脆弱性の概要

  DNSSECにおける不在証明(当該データが存在しないことの証明)には、NSEC
  とNSEC3という二つの方式があります。NSECが存在する名前を示すことでデー
  タの不在を証明するのに対し、NSEC3は名前のハッシュ値[*1]を示すように
  することで、外部からのゾーン列挙[*2]の難度を高めています。

  [*1] JPRS用語辞典|ハッシュ値(ダイジェスト値)
       <https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0230>

  [*2] 「ゾーン列挙(Zone enumeration)」とは何ですか?
       <https://jprs.jp/dnssec/faq.html#Q16>

  BIND 9.xのNSEC3の検証には脆弱性があり、NSEC3を用いて特別に作成された
  DNSSEC署名済みゾーンを名前解決させることで、DNSSEC検証を実施する
  namedのCPU負荷を過剰に高められる可能性があります。

  これを利用し、外部の攻撃者がnamedプロセスに本件を誘発するDNS問い合わ
  せを送ることでCPU負荷を増大させ、過負荷に陥らせることにより、namedを
  含むシステム全体のパフォーマンスの低下や停止が誘発される可能性があり
  ます。

▽対象となるバージョン

  本脆弱性は、BIND 9.0.0以降のすべてのバージョンのBIND 9が該当します。

  ・9.18系列:9.18.0-9.18.22
  ・それ以外の系列:9.0.0-9.16.46

  なお、ISCではBIND 9.11.37より前のバージョンにおいて、本脆弱性の評価を
  実施していません。

▽影響範囲

  ISCは、本脆弱性の深刻度(Severity)を「高(High)」と評価しています。

  なお、ISCでは権威DNSサーバーの運用者に対し、NSEC3のパラメーター設定
  と取り扱いに関するガイダンスである、RFC 9276[*3]に従うことを推奨して
  います。権威DNSサーバーがRFC 9276のガイダンスを採用しなかった場合、
  将来、リゾルバーがRFC 9276の推奨事項をより厳格に強制し始めた際に、問
  題が発生する可能性があります[*4]。

  本脆弱性については、以下の脆弱性情報[*5]も併せてご参照ください。

  [*3] RFC 9276: Guidance for NSEC3 Parameter Settings
       <https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9276.html>

  [*4] 発生しうる問題については以下の文書の「nsec3-guidanceの影響と次
       回のDNS flag dayの提案」をご参照ください。
       第114回IETF Meeting報告
       <https://jprs.jp/related-info/event/2022/0830IETF.html>

  [*5] CVE Record | CVE
       <https://www.cve.org/CVERecord?id=CVE-2023-50868>

▼一時的な回避策

  DNSSEC検証を無効にすることで、本脆弱性を回避できます。しかし、DNSSEC
  による保護も無効になるため、本回避策は推奨されません。

▼解決策

  本脆弱性を修正したパッチバージョン(BIND 9.18.24/9.16.48)への更新、
  あるいは、各ディストリビューションベンダーからリリースされる更新の適
  用を、速やかに実施してください。

▼参考リンク

  以下に、ISCから発表されている情報へのリンクを記載します。また、各ディ
  ストリビューションベンダーからの情報や前述のCVEの情報なども確認の上、
  適切な対応を取ることを強く推奨します。

  - ISC

   セキュリティアドバイザリ

    CVE-2023-50868: Preparing an NSEC3 closest encloser proof can
                    exhaust CPU resources
    <https://kb.isc.org/docs/cve-2023-50868>

   パッチバージョンの入手先

    BIND 9.18.24
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.18.24/bind-9.18.24.tar.xz>

    BIND 9.16.48
    <https://ftp.isc.org/isc/bind9/9.16.48/bind-9.16.48.tar.xz>

▼連絡先

  本文書に関するお問い合わせは <dnstech-info@jprs.co.jp> までご連絡くだ
  さい。

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▼更新履歴
  2024/02/14 11:00 初版作成

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