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ドメイン名関連会議報告

2003年

ヨーロッパ地域におけるVoIP/ENUM・DNSに関する最新動向

~RIPE 46 Meeting報告~
2003/09/12
2003年9月1~5日の日程で、第46回RIPE(Reseaux IP Europeens) Meetingがオランダ・アムステルダムで開催されました。

ヨーロッパ地域のインターネットにおけるドメイン名やIPアドレス・AS番号等の各種資源管理や、各国・各地域間をまたがる広域ネットワークに関する各種の調整は、RIPEの下に組織されたRIPE NCC(Network Coordination Centre)が行っています。RIPE NCCは、ヨーロッパ地域におけるRIR(Regional Internet Registry)の業務のみにとどまらず、インターネット全体に関連する技術研究やポリシーの調整活動についても、広くカバーしており、そのことが特徴となっています。

RIPE Meetingは大きく分けて、ヨーロッパのネットワークオペレータの技術情報の交換・議論の場であるEOF(European Operators Forum)、技術トピックスごとにそれぞれ設けられている各WG(Working Group)、全体会議であるPlenaryの3つにより構成されています。今回はその中から、EOFで行われたVoIP/ENUM Tutorial、およびDNS WGとDNR Forumが統括された形で再構成されたDN* WGでの話題について報告いたします。

Plenaryの様子
Plenaryの様子(NH Grand Hotel Krasnapolsky, Amsterdam)

VoIP/ENUM Tutorial

今回のEOFでは、VoIP/ENUMがメインテーマとされ、関連するチュートリアルが終日に渡って開催されました。これらのチュートリアルは、現在、インターネット上のテレフォニー(電話通信) サービスがどのように実現されているかについて、特にインターネット系の技術者の理解を促進することを目的に、ENUMについて先進的な試みを積極的に行っているオーストリアの技術者が中心となって開催されました。

午前中は入門および技術解説を中心に、以下の話題が取り上げられました。

  • ENUMおよびVoIPの入門解説
  • 従来の電話網(PSTN)に関する歴史についての解説
  • SIPおよびH.323の解説
  • ENUMの解説

午後はより専門的、かつ現在の技術課題となっている各トピックスの解説が行われました。
  • VoIPにおけるセキュリティ、プライバシー、課金に関する考察
  • VoIPにおけるCLI(Calling Line Identification)の信頼性に関する考察と提案
  • PBX機能をサポートするオープンソースプログラムのENUM対応に関する試み
  • ENUM登録システムとDNSに関する現状と考察

全体として、ヨーロッパ各国のエンジニアが集まる場であるRIPE Meetingの場を利用し、VoIPおよびENUMに関する総合的な理解度を向上させようという狙いが感じられました。

DN* WG

従来のRIPE Meetingでは、ドメイン名の登録に関する周辺技術やポリシー全般を取り扱う場であるDNR(Domain Name Registration) Forum、およびDNSに関する最新技術・運用技術やポリシー全般を取り扱う場であるDNS WGの2つのWGが別々に運営されていました。しかし前回のRIPE Meetingで、両WGで取り上げる内容は非常に関連性が高く、またほぼ同じメンバーが同じような話題を両方のWGで取り上げることが多いことから、2つのワーキンググループを統合・強化し、新たにDN* WGを試験的に発足させることが提案・了承されました。

今回のDN* WGで取り上げられた話題のうち、ここでは国際化ドメイン名(IDN)の話題と、最近急速に展開が図られているルートサーバのAnycast化に関する状況について報告いたします。。

普及段階に入ったIDN
IDNについては、.pl(ポーランド)のレジストリから、他のヨーロッパ地域のccTLDにさきがけて2003年9月11日からIDNの正式運用を開始する旨の報告が行われました。.plにおけるIDNの登録ポリシーは、Internet Draftとして公開されています。

また、.se(スウェーデン)からは10月21日からのIDNの正式運用の開始、.de(ドイツ)からもレジストラに対する登録テストベッドを開始するとの報告が行われました。これらの報告から、ヨーロッパ地域においてもIDNが急速に普及しようとしていることがうかがえます

さらに今回JPRSが、日本語JPドメイン名およびJP DNSに関する現在の状況についての発表を行いました。特に日本語JPドメイン名の現状やこれまでの取り組みについては、会場からも多くの質問が寄せられ、IDNがヨーロッパ地域においても、大きな関心事となっていることが改めて確認されました

Anycast化が進むルートサーバ
ルートサーバについてはF、I、Kそれぞれのルートサーバの技術担当者から、Anycastに関する今後の展開の予定についての発表が行われました。

ルートサーバのミラーリングを現在最も積極的に行っているF(ISCが管理)からは、現時点で既に世界各国で12箇所のノードを稼動させており、近日中にさらに5箇所のノードが稼動予定との発表が行われました。

ヨーロッパ地域にはIとKの2つのルートサーバがあり、ともにAnycast化の推進に取り組んでいます。これら2つのルートサーバのうちI(Autonomicaが管理)は、非常に積極的にAnycast化を進めようとしており、1年以内に大手IXやISPを中心に20~25のノードを稼動させたいとの発表がありました。

またK(RIPE NCCが管理)も以前からAnycast化を進めており、現在既にAnycastによる稼働がアムステルダムとロンドンの2箇所で行われていること、今後、RIPE NCCが管轄するヨーロッパ地域を中心にノードを増やしていきたい、などの報告が行われました。

まとめ

RIPE MeetingはIETF等の他の会議と比較して、より運用技術に関連した話題が取り上げられることが多くなっています。特にドメイン名やDNSの管理運用に関係する最新動向が他のミーティングに先がけて発表されることが多く、今後も非常に注目されるミーティングです。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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