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ドメイン名関連会議報告

2006年

CENTR Administrative Workshop & General Assembly 報告

2006/10/27

2006年10月9日から11日にかけて、カナダのトロントにてCENTR(Council of European National Top-Level Domain Registries)の第9回Administrative Workshopおよび第31回General Assembly(以下、GA)が開催されました。

CENTRはヨーロッパのccTLDレジストリが会員の中心ですが、その他の地域のccTLDレジストリも会員になることができます。今回、会合場所となったカナダのレジストリであるCIRA (Canadian Internet Registration Authority)も、そしてまたJPRSも会員となっています。

今号では、今回の会合での主なテーマを中心にご報告します。

会議の模様
会議の模様

Administrative Workshop


▼カナダ(.ca)

9日のAdministrative Workshopでは、最初に開催ホスト国のカナダから、レジストリの組織概要や.caの登録管理サービスについて発表がありました。

.caは最初、John Demco氏とブリティッシュコロンビア大学が管理し、学術目的を中心に利用されていましたが、1995年頃から商用目的での利用が開始されました。
その後、ドメイン名の登録数が急増したため、ドメイン名の登録管理を行う専門組織としてCIRAが設立されました。

.caは、セカンドレベルドメインの文字列を登録する汎用型と、サードレベルドメイン以降を登録する地域型に大きく分けることができます。JPドメイン名のCO.JPドメイン名やOR.JPドメイン名のような、組織の属性を示すセカンドレベルドメインを持つ属性型はありません。

登録要件としてローカルプレゼンスが必要な点はJPドメイン名と似ています。カナダ国民、カナダ永住権保有外国人、カナダ国内で登記された企業・組織等、永続的にカナダに属する個人と法人が.caを登録できます。ドメイン名の登録者は、申請の際、これらの登録資格のうち自分が該当する登録者属性を選びます。

.caは、現在約75万件の登録があります。CIRAの分析では、カナダ国内で登録されているドメイン名のうち.caの登録割合は、現在29%で、.comの56%には及びませんが、過去5年で.caの登録割合は13%増加し、.comは14%減少しています。CIRAによると「いつとは言えないけれど、.caがカナダで最もよく使われるドメイン名になるだろう」とのことでした。

▼日本(.jp)

JPRSからは、Grace Period ServiceとService Level Agreement (SLA)についての発表を行いました。

Redemption Grace Periodは、レジストラが登録者からの要望に基づき、廃止されたドメイン名を定められた期間に限り、登録状態に戻すことができるgTLDの制度です。ccTLDでは、スイスなど一部で提供されています。JPドメイン名においても、諮問委員会などでの議論を踏まえて登録者保護の観点から導入を検討しており、その経緯を発表しました。

SLAとは、事業者が利用者にサービスの品質を保証する制度です。ドメイン名の登録数、レジストラ、その再販事業者が増えるに従って、ドメイン名に関するトラブルもそれに伴って増えていきます。登録者保護の観点からも、ドメイン名事業者や登録者の間でサービスの品質の明確化に対する認識が広まっています。

JPRSは、JPドメイン名の指定事業者やその再販事業者と登録者の間で発生するトラブルの紹介とサービスの品質の明確化、SLAの導入がもたらすであろう効果について発表しました。しかし、現実には、SLAは運用することが難しく、導入しているccTLDレジストリはほとんどないことが本発表後の議論の中で明らかになりました。実際の運用が困難であることがわかります。

また、フィッシングやスパムなど、不正な目的でドメイン名が利用されることについてどのように対処していくべきか、ということがインターネット業界全体の大きな課題となっています。これに関連して、このようなドメイン名の不正使用について第三者(発見者)から連絡を受けたときに、レジストリとして現状どのような対応を行っているかということについて情報の提供を求めました。カナダ、ドイツ、スイス、オーストリア、フィンランド、ポーランド、スペインの各ccTLDから回答がありましたが、いずれもレジストリはドメイン名の運用、提供されるコンテンツに関与する立場になく、運用に関する問題として解決すべきであるとの認識がなされていることがわかりました。

▼世界の統計

全世界のドメイン名の登録数が1億を超え、それに関する統計分析についてベリサイン社から発表がありました。ベリサイン社の分析によると、2005年半ばから2006年半ばにかけての1年間の世界におけるドメイン名登録数は27%の増加を示しました。ccTLDでは、特に登録を完全に自由化したスペイン(.es)、個人による登録を受付始めたフランス(.fr)、EU内の個人・企業向けに新たに創設された.euが大きく登録数を伸ばしました。

General Assembly(GA)


▼Zooknic

Zooknicは、ドメイン名の登録に関する統計分析の資料で最もよく引用されるデータ提供元のひとつですが、今回、代表者のMatthew Zook氏から、「The State of the Domain」という発表が行われました。

Matthew Zook氏の本職は、ケンタッキー大学の地理学部門で教鞭を取る助教授で、ドメイン名の登録に関する統計分析は、研究活動の一環として1998年から行っています。学術調査のような繊細な分析が特徴です。データのソースは、gTLDの場合はWhoisデータ、ccTLDの場合は各レジストリが発表する統計情報です。今回は、TLD別や国別のドメイン名の登録数の分析と地域ごとの登録数の分布について発表が行われました。

具体例として、.comのカリフォリニア州の通り別の登録分布、.caの州別の登録分布、.deの州別の人口当たりの登録分布等、多数の表やグラフが紹介されました。

▼Microsoft社

Microsoft社の次期ブラウザ、Internet Explorer 7(以下、IE7)等のソフトウェア開発を指揮するMichel Suignard氏は電話システムを使っての参加でしたが、 IE7とOutlook 2007の国際化ドメイン名への対応について発表を行いました。

発表の内容については、異なる言語の文字が混在することによる危険性への対処等、すでにJPRSのWebでご紹介(*1)しているものが中心でしたので詳細は省略いたしますが、国際化ドメイン名の事例として、「味の素.jp」と「読売新聞.jp」が紹介されていたのが印象的でした。

▼その他

DDoS攻撃にDNSが利用されることに対して対策をとることについての呼びかけが行われました。インターネットの重要なインフラであるDNSの管理と運用を任されているレジストリにとって最重要課題であるという理由で、次回以降のGAや、技術者が集まるTechnical Workshopで継続して検討を進めていくことが、議長から提案され、会場からも賛同を得ました。

欧州委員会は、Whoisにおける情報公開に対する方針については、CENTRがまとめた「WHOIS and Data Privacy」に書かれている、個人情報の保護を重視する方針に基本的に賛成の立場にあることが紹介されました。

さらに、ヨーロッパのccTLDに関する最新情報の報告も行われました。フランスでは、18歳以上の個人に.frが開放され、登録数の大幅な伸びがあり、フランス国内でドメイン名への注目が高まっているとのことでした。また、オーストリアでは、国際化ドメイン名の1年間無料登録キャンペーンで、受付開始1時間で5万件以上の登録があったそうです。

他にも、DNSSEC、ICANN/IANA最新動向、インターネットガバナンス、TLDのIDN化の最新動向などの情報交換も行われました。

まとめ


今回のAdministrative Workshopには、18のレジストリ、CENTR事務局、SEDO社、APTLDなどのゲストを合わせると約40名の参加がありました。GAは、24のレジストリとCENTR事務局に加えて、ICANN/IANAなどの国際組織、欧州委員会などの政府組織が参加し、70名以上の会合となりました。

今回、50番目のCENTRのメンバーとしてEURid(.euのレジストリ)の加入が承認され、CENTRの活動と影響力は益々拡大しています。ccTLDの世界で大きな影響力を持つヨーロッパのレジストリが多数所属するCENTRは、今後とも求心力を高めていくと予想されます。


(*1)
IDNに関する最近の話題(前編)
http://jpinfo.jp/mail/backnumber/event/0052.html

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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