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ドメイン名関連会議報告

2007年

登録者保護のためのレジストラ管理強化の議論

~ RegisterFly事件を受けて:ICANNサンフアン会合 ~

2007/07/23

ここ数ヶ月の間さまざまなメディアで取り上げられた、RegisterFly社のgTLD レジストラ契約終了に関する混乱は記憶に新しいところです。

ドメイン名の登録管理の基本は、それぞれのドメイン名の登録者が誰であるかを管理することです。この「ドメイン名の登録者が誰であるか」という情報の管理は、JPドメイン名ではレジストリであるJPRSが担当するのに対し、.comや.net等ではレジストラが担当する業務となっています。したがって、レジストラがその機能を十分に果たせなくなったり、レジストラとしての地位を失うことになった場合には、登録者情報の管理に大きな影響を及ぼすことになります。

実際、今回の事件を通して様々な問題・課題が明らかになり、前回のICANNリスボン会合でこの問題に対する課題の抽出と対応策の検討が始まりました。今回、6月25日から29日にかけて開催されたICANNサンフアン会合は、この話題について議論する2回目の会合となりました。

レジストラが正しく機能しないことで、登録者が自分の登録したドメイン名を失ったり、使えなくなったりすることがあってはなりません。このような場合に登録者の保護をどのように達成するのか、RegisterFly社の事件のようなことが再び発生しないように、また万一発生してしまった場合、迅速かつ適切な対処を可能にするためにどのような準備をしておく必要があるのか。ICANNサンフアン会合からこれらのテーマに関する議論の内容をご紹介します。

なお、RegisterFly社の事件の内容と前回ICANNリスボン会合での検討の内容については4月6日発行のFROM JPRS増刊号「ICANNリスボン会合報告(第1回)」をご覧ください。

レジストラ管理の強化

gTLDのレジストラを行う企業はその業務を開始するにあたりICANNとの間で「レジストラ認定契約」を締結します。

ICANNは契約にあたり、その企業がレジストラとして安定したサービスを提供できるかどうかを確認し、レジストラとして守らなければならない条件を盛り込んだ契約を締結します。つまりICANNは、この契約締結のプロセスと契約の内容において、レジストラを管理することになります。

つまり、レジストラがその役割を十分に果たし、万一の場合にも対応できる準備を行っておくことについてICANNの立場でできることは、この「レジストラ認定契約」により、レジストラの管理を強化することになります。

今回の会合では、ICANNのスタッフからレジストラ管理の強化に関する論点や影響度が説明されました。主なものを簡単に紹介します。

  • リセラが介在する場合のレジストラの責任
    レジストラと登録者の間に、リセラと呼ばれる事業者が介在する場合があります。この時、リセラがドメイン名の登録管理に関するレジストラと登録者の関係を十分に認識していなかったり、登録者への説明がなされなかったりすると、登録者がレジストラの存在を知らなかったり、登録者の情報がレジストラへ十分に伝わらなかったりします。そのため、レジストラのリセラに対する責任を拡大すべきではないか、という議論がなされています。

  • データエスクローの有効性の確保
    レジストラは、ドメイン名の登録情報のデータエスクロー(第三者組織に登録情報をコピーして保存すること)を行う義務があります。これにより、レジストラがその役割を果たすことができなくなった時、次のレジストラに情報を引き継ぐことができるようになっています。しかし、実際にはデータエスクローに関する規定がきちんと守られていない事例が見受けられ、これをいかに機能させるかということが課題となっています。

    また、Whoisに登録者の個人情報を公開しないことを目的に、サービス事業者が利用者の代わりに登録者となるようなサービスを提供していることがあります。このような場合、利用者の情報はエスクローされないことになってしまいます。

  • レジストラ認定契約の内容を遵守させるための措置
    ICANNがレジストラ認定契約の内容を遵守させるために行使できる手段は、現在は契約終了という最終手段しかなく、この手段を用いることは登録者に大きな影響を与えるため、行使しづらいものでした。このため、レジストラに契約内容を遵守させるための有効な手段として、ICANNが段階的な制裁手段を持つべきではないか、という議論がなされています。

  • レジストラから他のレジストラへの登録者の強制移行
    登録者の保護を担保するための、機能不全に陥ったレジストラから新し いレジストラへの強制的な移行は、誰が、いつ、どのように行うべきな のかという議論がなされています。

今回の会合では、これらの論点説明に対して議論が行われましたが、いずれの課題もまだ議論の初期段階にあります。最終的にはレジストラ認定契約の改訂という形でポリシーが実装されることになりますが、今後もICANNの場で検討が継続されていくことになっています。


 ICANNサンフアン会合の会場
ICANNサンフアン会合の会場

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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