[第83回ICANN会合報告] ccTLD関連の話題

本記事では、第83回ICANN会合（ICANN83）におけるccTLD関連の話題についてご紹介します。

ccTLDからICANNへの財政的貢献のあり方について、2013年に制定された「ccNSO Financial contribution Guideline^[*1]」の見直しを含めて検討するSecond Finance Working Group（FIN2WG）^[*2]が2024年末に設置されました。JPRSから遠藤淳がこのWGに参加しています。

ICANN83では、前回のICANN82と、その後実施されたサーベイで聴取した意見を踏まえ、財政的貢献に関する基本的な考え方や小規模なccTLDレジストリの貢献を得やすくするための金額区分の細分化などがWGから提案され、それらに対する意見聴取が行われました。

その結果、ICANN82時点と比べ「分からない」という回答が減り、「支持する」が増えており、WGからの提案内容に対するコミュニティからの支持が拡大している状況がうかがえました。WGは、2025年8月のccNSO評議委員会における最終報告書の採択に向け、検討作業を継続しています。

ccNSOでは、DNS Abuseに対するロードマップ作成を担うccNSO DNS Abuse Standing Committee（DASC）^[*3]が2022年に設置され、ccTLD運用者が直面するドメイン名の不正利用への対策に関し、参加者の知見やベストプラクティスに関する共有、意見交換を通じた、対応力の強化に力を入れています。

ICANN83では、特に金融関係の詐欺や犯罪とドメイン名の悪用との関係に注目をした知見共有の場が設けられました。FBIや、.sg（シンガポール）、.au（オーストラリア）が、独自の取り組みや分析の発表を行う中、Verisignが「Internet Infrastructure Forum（IIF）^[*4]」の紹介を行いました。

IIFは、ドイツを拠点とするインターネット業界団体であるecoが主導する、オンラインのAbuse対応における連携の強化を目的とした新たなイニシアチブです。コンテンツ関連のAbuse対応を求める声の高まりを踏まえ、ICANNでのDNS Abuse議論と並行する形で知見の共有や議論を行うべく、2025年2月に創設されました。

2024年11月に開催された準備ワークショップにはCloudflare、GoDaddy、Google、PIR、Spamhaus、Vodaphone、ドイツ政府など、技術コミュニティを中心としたさまざまな約20の組織が参加しており、活動拡大に向け、ccTLDの参加も呼び掛けられました。

ICANNでは、財政状況やICANN会合を取り巻く状況の変化を受け^[*5]、今後のICANN会合のあり方について、コミュニティ全体で意見交換が進められています。

ICANN83では、2025年4月から6月初旬にかけて実施された、今後のICANN会合のあり方に関するパブリックコメントの結果に関し、支持組織（Supporting Organization：SO）や諮問委員会（Advisory Committee：AC）の代表で構成された小グループで内容を確認するセッションが開催されました。そこではフロアにもマイクが解放され、コミュニティメンバーとの意見交換も実施されました。

セッションにおいて、将来的に3月のCommunity Forumを1日短縮することが概ね合意された一方、ICANNが定める5地域の巡回は維持しつつ、地域ごとに会合の開催地を固定しコスト削減を図る案に対しては、AP地域にこれを適用する場合、地理的な広大さから開催地の偏りを懸念する声が挙がりました。

本件については、引き続き小グループにて検討を進めた後に、結論が出される見込みです。