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ドメイン名関連会議報告

2025年

[第82回ICANN会合報告] ccTLD関連の話題

本記事では、第82回ICANN会合(ICANN82)におけるccTLD関連の話題についてご紹介します。

ICANN会合の今後のあり方に関する議論

ICANN82では "How we meet"と称し、今後のICANN会合のあり方について、コミュニティ全体で意見交換をするPlenaryセッションが実施されました。この議論が行われた主な背景は以下の通りです。

  • ICANNの財政状況の変化
    ICANNの主な収入源はgTLDの登録・更新料であり、gTLDの登録数が世界的に伸び悩んでいる現在の状況が続く場合、収益の大幅な増加は見込めない。また、物価上昇の影響により、削減努力を積極的に行わない場合、費用が増加することになる。
  • ICANN会合を取り巻く状況の変化
    現在のICANN会合の開催戦略[*1]は2015年に採択され、2016年から適用されたものである。しかし、その後のCOVID-19の世界的な流行を経て、遠隔会議ツールを用いたオンライン会議の一般化や実施作法の習熟、世界的なインフレによる渡航費及び滞在費の高騰など、ICANN会合を取り巻く世の中の状況が変化している。

こうした状況の変化を反映する形で、ccNSOとしての意見形成に向けた検討が進められており、ICANN82では、意見形成に向けた照会が行われました。

セッションでは主に、会期の短縮と、年3回の会合のうち1回をオンラインのみとする可能性に焦点を当てた意見交換が、活発に行われました。特に、開催形態をオンラインのみとすることについては強い反対意見があり、現地開催の意義について振り返る必要性が、参加者の間で認識されました。

本件は、次回のICANN会合でも引き続き議論される予定です。

ccTLDからICANNへの財政的貢献(Financial Contribution)に関する議論

ccTLDからICANNへの財政的貢献については、2013年にICANNが制定したガイドライン「Guidelines for ccTLD Financial Contribution to ICANN[*2]」で定められています。金額はccTLD及びccNSOがICANNから直接・間接に受けているサポートを踏まえた形で定められ、各ccTLDに対し、ガイドラインに沿った金額の拠出が推奨されています。

しかし、実際にはガイドラインに沿った金額を拠出するccTLDがある一方、作為、あるいは不作為に拠出をしないccTLDや、金額がガイドラインを満たしていないccTLDもあり、ガイドラインが想定する状況が満たされていないことが常態化しています。

ICANNの財政状況が厳しくなる中、ccTLDからの財政的貢献をより安定に得たいというICANN事務局の意向に加え、現行のガイドラインの導入から10年以上が経過し、その有効性の点検を求める意見も出されています。こうした状況を受け、ccNSOは2024年12月に本件について検討するSecond Finance WorkingGroup (FIN2 WG)[*3]を設置しました。JPRSからは遠藤淳が、このWGに参加しています。

WGではICANNの担当職員の協力を得ながら、ICANNの費用のうち、ccTLD固有、及びccNSOに関わる費用と、IANAサービスなどの利用に関わる費用を案分した額の合計が算出され、ccTLDが貢献すべき総額の見直し案が作成されました。

ICANN82では、ガイドラインの内容及びガイドラインが制定された背景について、WGから参加者に説明がありました。更に、ccTLDとしてICANNの活動への財政的供出を行う理由付けや、現行モデルの有効性などに関する意見聴取が行われました。

WGでは、得られたインプットをもとに、ICANN83におけるさらなる議論に向けての検討が継続される見込みです。