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増刊号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003-11-27━
◆ FROM JPRS 増刊号 vol.9 ◆
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第58回IETF Meeting報告(前編)
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2003年11月9日から14日にかけて、第58回IETF Meetingが、米国のミネアポリ
スで開催されました。多くのテーマが議論されるIETFの中から、DNSやドメイ
ン名に関連する話題を、前編・後編の2回に分けてお届けします。
前編では、インターネット全体の状況が報告されたIEPG Meeting、ドメイン名
の国際化に続いてメールアドレスの国際化を議論しているIEA BoF、そして
Whoisに代わる次世代の技術を検討しているCRISP WGの3つについてお伝えしま
す。
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▼IEPG(Internet Engineering and Planning Group) Meeting
IEPGは、インターネットサービスオペレータで構成される、インターネットの
技術や方針を議論するグループです。IETF Meetingが始まる日曜日に会議を開
催し、主に地域インターネットレジストリ(RIR)オペレータやccTLDオペレー
タ等が報告・議論を行いました。
●用語:RIR → http://jpinfo.jp/glossary/index.php?ID=0053
1. 地域インターネットレジストリからの報告
まず最初に、AfriNIC、APNIC、ARIN、LACNIC、RIPE NCCの最新動向と、IPアド
レスやAS番号の割り当て状況が報告されました。
この中で、APNICはISCと協調してFルートサーバのアジア展開を行っており、
現在は香港・ソウル・北京で運用していること、Iルートサーバの管理組織と
も協定を結び、6ヶ月でFとIあわせて5サイトの展開を計画していることが報告
されました。
RIPE NCCからは、ヨーロッパでKルートサーバの展開を行なっており、アムス
テルダムとロンドンで運用していることが報告されました。
●用語:ルートサーバ → http://jpinfo.jp/glossary/index.php?ID=0100
2. LACNICでの不適切なDNS設定対策
LACNICから、DNS設定状況の調査と、改善への対策について報告がありました。
LACNICでは、正しく設定されているDNSサーバだけをレジストリに登録できる
ようにしています。その結果、2002年12月に45%だった不適切なDNS設定が、
2003年6月には34.9%に、2003年11月には26.7%に減りました。また、毎週すべ
てのDNS設定をチェックし、Whoisで表示し、登録者に連絡していることが報告
されました。
これに関連して会場から、対策方法を検討するためにも、不適切なDNS設定の
分類に関する標準を定義しようという提案がありました。
3. APNICでのDNSクエリ測定結果
APNICから、オーストラリア、香港、日本にあるAPNICのDNSサーバへのクエリ
を解析した結果が報告されました。IPv4での検索数はほぼ一定になってきてい
ますが、IPv6での問い合わせは少ないながらも順調に増えているそうです。ま
た、昨年の8月や今年の1月のワーム(コンピュータ・ウイルスの一種)により、
DNSへの問い合わせが激増したことが示されました。また、IPv6での問い合わ
せは少ないため、研究者がIPv6利用度などを調べるためにDNSへの問い合わせ
を行なうとそれがピークとして表れることも示されました。
4. IPv4アドレスの寿命についての考察
現在使われていないIPv4アドレスを使い切るまでの時間の予測に関するGeoff
Huston氏の考察が報告されました。2020年にIANAの保有IPアドレスがなくなり、
2025年に地域レジストリの持つIPアドレスが枯渇するという推測結果でした。
●用語:IANA → http://jpinfo.jp/glossary/index.php?ID=0027
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▼IEA(Internationalizing Email Addresses) BoF
IEA BoFは、電子メールアドレスを国際化するためにIETFでは何を、どのよう
なアプローチで進めていけばよいか、そしてそれを進めていく意思を持った人
がいるか、ということを確認するための場として開催されました。
国際化ドメイン名の標準化過程を経て、IETFでは識別子の国際化(プロトコル
の拡張)に対する需要が認識され、関心が高まっています。一方で、これまで
のインターネットは英数字を識別子の基本として発展してきており、プロトコ
ルの拡張には、既存システムとの下位互換性と相互運用性の維持が求められて
います。
電子メールアドレスは、インターネットで最も利用されている識別子であり、
アットマーク「@」をはさんで、ユーザ部(アットマークの左側)とドメイン
部(アットマークの右側)から構成されています。ドメイン部は既に国際化さ
れており、ユーザ部の国際化も自然な要求ですが、この部分は他のさまざまな
プロトコルでも識別子として使用されており、メール配送システムだけで議論
を行うことはできません。
現在、IETFでは電子メールアドレスの国際化方式として、以下の2つが提案さ
れています。
(1) 国際化されたメールアドレスを、既存のシステムと互換性のあるASCII
文字列(ACE: ASCII Compatible Encoding)に変換して扱う方式
(2) 国際化されたメールアドレスを国際化拡張として定義し、通信相手が国
際化拡張を扱えるかどうかを最初に確認する方式
IEA BoFでは上記2つの提案に加え、電子メールアドレスを含むインターネット
上のリソース識別子(URI)を国際化する提案(IRI: Internationalized URI)
の標準化作業の中で電子メールアドレスの国際化を進めていこうという提案も
議論されました。
BoFという性格上、どの方式を選ぶといった結論には至っていませんが、議論
の中では以下のような意見が寄せられました。
- (1)の方式は短期的解決である
- できることから始めるべきである
- 既存のプロトコルを変更しようとしているのか、新しいプロトコルを作ろ
うとしているのか、その決定がまず重要である
最終的に、(1)、(2)のそれぞれの方式について推進していく意思のある人が挙
手によって確認され、メーリングリストで議論を継続していくことになりまし
た。
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▼CRISP(Cross Registry Information Service Protocol) WG
CRISP WGは、これまでのWhoisを機能的に置き換え、ドメイン名情報などのイ
ンターネット資源情報を検索するための新しいプロトコルを検討するWGです。
前回のIETFからの大きな進捗としては、これまでIRISとFIRSという2つの実装
案が比較検討されてきた結果として、IRISをWGの実装案として正式に採択した
ことがあげられます。
また、ドキュメント全体の構造が整理され、特にIPアドレスに関する要求仕様
の部分がより明確に分離されました。この動きに関連して、これまでドメイン
名関連ドキュメントを中心に、早期のRFC化を目指していた目標を部分的に見
直し、2004年の前半を目処にIESGへのドキュメント提出を計ることになりまし
た。
今後のCRISP WGでは、再設定されたマイルストーンに基づき、来年2月のソウ
ルでのIETF、更には6月のIETFに向けてドキュメンテーション作業やメーリン
グリストにおける議論を続けていくことになっています。
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◎関連URI
- 58th IETF - Minneapolis, MN, USA
http://www.ietf.org/PASTMEETINGS/IETF-58b.html
- IEPG
http://www.isc.org/iepg/
- CRISP WG
http://www.ietf.org/html.charters/crisp-charter.html
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