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増刊号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2006-04-07━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.53 ◆ ━!JP━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━JPRS━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ IDNに関する最近の話題(後編) ~2006年3月のIETF、ICANN会合報告~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前編に続きまして、今回、後編として、TLDへのIDN導入とオルタネート・ルー トに関して報告します。 ◇ ◇ ◇ (3) TLDへのIDN導入 これまで、IDNというと、TLDレジストリが登録管理する対象であるドメイン名 について中心的に議論されてきました。たとえば、○○.jpや○○.comのよう な形式のものです(便宜上IDN SLD(IDN Second Level Domain)と呼ぶことに します)。しかし、国や地域によっては、そのTLDラベルも含めてドメイン名 の一部にでもASCII文字を使うということ自体に無理があると言われています。 つまり、「日常生活で接する新聞や雑誌、看板等で使われる文字に全くASCII 文字が含まれない」といった国や地域では、TLDラベルもその国や地域の文字 でないと、一般の人はドメイン名を認識できないということです。 ASCII文字を利用する地域以外でのインターネット利用が急激に進んでいるこ とと、Webブラウザ等のIDN利用環境が普及してきていることを背景に、TLDへ のIDN導入(便宜上IDN TLDと呼ぶことにします)要求が急激に高まってきまし た。特に、文章を右から左に書くアラブ語圏、外国語も漢字表記に書き換える 中国語圏からの要求が現時点では高いようです。 極端に言えば、IDN SLDは、各TLDレジストリに委任されたドメイン名空間への IDN登録であるため、TLDレジストリ毎にその導入是非を判断することができま す。導入するときには、IDNガイドラインの適用方法を含め、その国や地域に 閉じて自分が管理するTLDの利用者にとって適切と思う登録管理ルールを決め ればよいということになります。しかし、IDN TLDは、ルートへのIDN登録であ り、それだけで影響がグローバルになるため、技術的にもサービスポリシー的 にもグローバルな調整が必要となります。 ICANNでは、IDN TLD等に関する検討を加速するため、昨年12月にIDNに関する 事務総長諮問委員会(IDN-PAC:President's Advisory Committee for IDNs (*10))が設けられました。現在、検討項目の洗い出し中で、3月のICANN会合 にて、その中間状況が種々のコミュニティと共有されたという状況です。以下、 これまでに言われている主な検討項目を紹介します。 (a) 技術検討項目 (a1) 次の2方式について、その実現可能性を純技術的に実験すべき ・DNSにNSレコードを追加する 全く新しいTLDとして、IDNラベルをルートDNSに登録する(例:「.日 本」と「.jp」は別空間とする) ・DNSにDNAMEを設定する ルートDNSにDNAMEというレコードを登録することにより、IDNラベル を既存のTLDラベルの別名とする(例:「.日本」を導入し、それが参 照されるときは「.jp」に読み替える) (a2) 実験により検証すべき技術試験項目として他に何があるか (b) ポリシー検討項目 (b1) IDN TLDを既存のASCII TLDと同一空間とみなすか、みなさないか (b2) (b1)で同一空間とみなす場合、ASCII TLDに対応するIDN TLDを幾つ作 るか、誰がその文字列を決めるか、複数のASCII TLDが同一IDN TLDに 対応するという主張があったときどう解決するか (b3) (b1)で同一空間とみなさない場合、IDN TLDレジストリをどうやって決 めるか、ASCIIと同じ通常の新gTLD導入プロセスに従うか (b4) ccTLDを先に導入するか、gTLDを先に導入するか、両者同時か (b5) SLD以降は、TLDと同一の言語/スクリプトでなければならないとするか (a)については、3月下旬に、ICANNのRSSAC (Root Server System Advisory Committee:ルートサーバシステム諮問委員会)やSSAC(Security and Stability Advisory Committee:セキュリティと安定性に関する諮問委員会) にも問い合せがなされ、それらの委員会でも検討が開始されました。RSSACか らは、すべてのルートサーバがDNAMEを処理できるDNSソフトウェアを使ってい るわけではないことが報告されました。SSACからは、ICANN会合中にまとめた 検討資料が公開され、その中で、技術試験の重要さが述べられ、ccTLDレジス トリの試験への積極参加が要請されています(*11)。 IDN-PACでは、技術実験が先か、ポリシー検討が先かという議論もなされてい ますが、大勢は、両者を並行して行うべきという意見に傾いています。また、 IDN-PACの検討結果として、IDN TLDに関する技術実験のスケジュール案が出さ れ、それがICANNからアナウンスされました(*12)。それによると、多方面から コメントを求めつつ、2006年7月に、技術実験の提案を募集するという計画に なっています。 (4) IDN TLDのためのオルタネート・ルート 2006年2月末に、中国の信息産業部からTLDとして中国語表記の「中国」、「公 司」、「網路」を導入するというニュースが流れました(*13)(*14)。これに対 し、「インターネットの分断である」とか、「ICANN/IANA管理からの逸脱であ る」とか、一時世界中が騒然となりました。しかし、この騒ぎに応えて後日 CNNIC(ChinaNetwork Information Center)が説明したところによると、これ は、数年前よりCNNICおよび他の若干の組織で実施しているIDN試験サービスで あり、 ・プラグインをユーザーに配布し、 ・そのユーザーがプラグインをインストールすると、 ・Webブラウザに「○○.公司」と入力したとき、プラグインが後ろに 「.cn」を付加し、「○○.公司.cn」としてインターネット上で扱う というものであるということでした。CNNICから今回のICANN会合に参加してい た人たちは、会場内においても、公開の場、非公開の場で何度もオルタネート・ ルートではないかという質問を受け、回答におおわらわという状況でした。 なお、この方式は、IDN TLDの処理方式として、一番最初に提案されたZLD (Zero Level Domain)方式と同様のものです。確かに、技術的なドメイン名 木構造だけを見れば、すべてICANN/IANAが管理しているルート配下に登録され ていますので、ICANN/IANA管理からからは逸脱していないと言えます。しかし、 個々の利用者から見ると、たとえば、中国国内でインターネットを使っていた とき存在していたドメイン名が、国外で他人のパソコンを使ってみたら存在し なくなっていた、ということが生じるわけで、これが望ましい状況かどうかは、 意見が分かれるところです。 いずれにせよ、今回はICANN/IANAが管理しているルートからの逸脱ではなかっ たものの、幾つかの地域でのIDN TLDの要求の強さを見ると、ICANNが慎重かつ 大胆にIDN TLDの導入に取り組まないと、今後オルタネート・ルートが出現す る可能性がゼロとは言えません。SSACがICANN会期中に出した報告書(*11)は、 オルタネート・ルートの技術と課題についてよくまとめられており、その中で は、ICANNに対し、技術実験も行いつつ十分な技術分析を早急に行うべきとい う提言をしています。 ◇ ◇ ◇ <まとめ> 2回にわたり、IDNに関する最近の話題を整理してきました。IETF、ICANNを併 せると、2006年3月ほどIDNが話題になった月はこれまでなかったと言えるかも しれません。従来、ICANNでは、gNSOの検討が中心で、ccNSOが協力して取り組 まねばならないポリシーはあまりありませんでした。しかし、IDN、特にIDN TLDに関しては、gNSOの検討に委ねておくだけでは解決しない、もしくはccTLD の将来にとって足かせになりかねない問題が表面化してきました。この状況の 下、今回のICANN会合で、gNSOとccNSOの間で、合同作業部会の設立が合意され、 そこで検討を進めていくこととなりました。 ◇ ◇ ◇ (*10) ICANN President's Advisory Committee for Internationalised Domain Names http://www.icann.org/committees/idnpac/ (*11) Report on Alternative TLD Name Systems and Root Name Services http://www.icann.org/committees/security/alt-tlds-roots-report-31mar06.pdf (*12) Timeline for Development of a Project for the Technical Test of Internationalized Top Level Labels http://www.icann.org/announcements/announcement-14mar06.htm (*13) 中国信息産業部からの新ドメイン名空間導入アナウンス http://www.mii.gov.cn/art/2006/02/24/art_722_6994.html (*14) (*13)を受けてと思われるChinaTechNews.comのニュース http://www.chinatechnews.com/index.php?action=show&type=news&id=3613 ━!JP━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━JPRS━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) http://jprs.jp/ http://日本レジストリサービス.jp/ 会議報告: http://jpinfo.jp/event/ メールニュース配信解除: http://jpinfo.jp/mail/ ご意見・ご要望: from@jprs.jp 当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、 ニュースグループまたは他のメディア等へ許可なく転載することを禁止します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C), 2006 Japan Registry Services Co., Ltd. 2006年04月07日