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増刊号

vol.54

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2006-04-12━
                     ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.54 ◆
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                       第65回 IETF Meeting 報告
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第65回IETF(The Internet Engineering Task Force) Meetingが2006年3月19
日から3月24日にかけて、アメリカのダラスで開催されました。

PlenaryではIETF Chairから毎回参加人数が報告されますが、それによると今
回のIETF Meetingの参加人数は36カ国から1,324人とのことでした。ここ数年
の参加者数は、1,400±300人程度で推移しているようです。

多くのテーマが議論されるIETFの中から、ENUM(Telephone Number Mapping)、
DNSおよびレジストリ関連技術に関する話題と、IETFに併設して開催された
IEPG(Internet Engineering Planning Group)の様子についてお届けします。

          ◇                     ◇                     ◇

▼ ENUM(Telephone Number Mapping) WG

ENUM WGは、ENUM技術の標準の決定、運用のための技術資料の作成、および
ENUM運用に関する情報交換を行うためのWGです。

ENUMプロトコルそのものの標準化作業はRFC 3761としていったん完了しました。
しかし、WGでの議論の結果、RFC 3761には運用上いくつかの改良点が必要であ
ることが判明し、それを解決するためにRFC 3761の更新版であるRFC 3761bis
を作成することが、WGの目標の一つとしてチャーターに明文化されました。WG
では2006年8月までにRFC 3761bisを策定し、Draft Standardとして標準化する
ことを目標としています。

今回の会議では、ここ数回にわたりWGでの議論対象となってきたENUM実装者向
けのドキュメントである「ENUM Implementation Issues and Experiences
(L. Conroy氏とJPRS藤原和典の共著)」についての報告と議論が行われまし
た。その結果を受け、IETF終了後の2006年3月29日にWG Last Callがかけられ
ました。今後特に問題が指摘されなければ、IESG(The Internet Engineering
Steering Group)における最終的なレビューを経た後、RFCとして発行される
予定です。

また、ユーザENUMとキャリアENUMをe164.arpaツリー上に並存させるための手
法として、以下の3つの選択肢が提案されました。

(1) 国別コードの上位レベルにキャリアENUM用のドメイン名ツリー(例えば
    i.e164.arpaやe164i.arpa)を構築する
(2) 従来の国別コードの下にサブドメインを作り、キャリアENUMであることを
    示す「BLR(Branch Location Record)」という新しい概念を導入する
(3) 上記(1)と(2)を併用する

しかし、今回の会議では合意に至らず、WG chairが別途召集したメンバーによ
り議論が行われた結果、(1)についてはe164i.arpaというドメイン名を一時的
に採用し、現在と同一の国別コードを利用する形ですすめ、長期的な問題解決
を目指したインターネットドラフトとして別途提案する。(2)(3)については短
期的な問題解決を目指したインターネットドラフトと、BLRリソースレコード
に関連するインターネットドラフトを2本に分割した形で提案する旨がWGに提
示されました(*1)。現在、これに従った形で、それぞれの作業が進行していま
す。

◎関連URI
   - ENUM Implementation Experiences
     http://www.ietf.org/proceedings/06mar/slides/enum-8.ppt

   - ENUM Implementation Issues and Experiences
     http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-ietf-enum-experiences-04.txt

(*1) [Enum] Final Rev: Attempt at Consensus on Carrier ENUM Questions
     http://www1.ietf.org/mail-archive/web/enum/current/msg04848.html


▼SPEERMINT(Session PEERing for Multimedia INTerconnect) WG

SPEERMINT WGは、遅延の影響を受けやすいリアルタイム通信の呼制御、経路制
御のアーキテクチャを取り扱うWGで、複数のISPの相互接続に関する問題の解
決を目的としています。

2005年に2度、voipeer BoFという形でVoIP網間の相互接続にかかわる問題点に
ついて議論が行われました。SPEERMINT WGはその議論をもとに、音声通信だけ
ではなくリアルタイム性が要求されるマルチメディア通信の相互接続の問題を
解決するためのWGとして、2006年2月に設立されました。

今回の会議では、WGのチャーター、マイルストーンの確認が行われ、いくつか
のインターネットドラフトの発表と議論が行われました。そのうち、
SPEERMINT WGが対象とする領域と、用語の定義についてのインターネットドラ
フトについてはほぼ合意されました。SPEERMINT WGの対象領域としては、ENUM
によって得られるURIデータを、それ以外の方法で得られるURIと同様にリアル
タイムセッションの呼制御と経路制御に使用することの検討が含まれています。

また、DNSに着呼できる条件を書き、それをもとにSIP接続先を選択するという
提案が行われましたが、合意となりませんでした。その他、SIPベースの相互
接続についての要求仕様案についての発表があり、継続して議論していくこと
になっています。


▼DNSEXT(DNS Extensions) WG

DNSEXT WGは、DNSの各機能の拡張に関する議論を行うためのWGです。本WGでは、
DNSのセキュリティ拡張を行うDNSSECの標準化作業を重点的に行っていますが、
現在は、実運用に必要となる機能拡張についての話題が中心となっています。

いくつかのインターネットドラフトの進捗状況が報告されましたが、その中で、
以前DNSOP(Domain Name System Operations) WGで議論されたserveridが本
WGで提案され、NSID(DNS Name ServerIdentifier Option)という形で合意さ
れており、現在IETF Last Call待ちであることが報告されました。NSIDは「ど
のDNSサーバが実際に問い合わせに応答したか」を外部から判定するための手
段として提案されているもので、DNS問い合わせ時にNSIDオプションを与える
と、DNSサーバが応答パケットの中に情報を埋め込むという形のプロトコル拡
張となっています。

DNSSECに関しては、前回の会議(第64回IETF Meeting)以降、zone 
enumeration問題(第63回IETF Meeting報告参照)を解決する方法として主に
議論されてきたハッシュ技術を使用したNSEC3(*2)について時間が割かれまし
た。NSEC3に残されたいくつかの検討課題の解決がなされたことが報告され、
ミーティング後に最終版のインターネットドラフトを提出されることになって
います。また、実用化に向け、NSEC3対応の実装について報告され、それらを
用いたワークショップ(*3)を実施することが報告されました。

◎関連URI
   - 第62回 IETF Meeting報告
     http://jpinfo.jp/event/2005/0404IETF.html

   - 第63回 IETF Meeting報告(前編) ~DNS関連テーマ報告~
     http://jpinfo.jp/event/2005/0825IETF.html

   - 第64回 IETF Meeting報告
     http://jpinfo.jp/event/2005/1201IETF.html

(*2) nsec3
     http://www.nsec3.org/

(*3) nsec3 Workshop
     http://www.nsec3.org/cgi-bin/trac.cgi/wiki/Workshops


▼ DNSOP(Domain Name System Operations) WG

DNSOP WGは、DNSを運用するにあたっての問題点や手法を議論し、DNS運用に関
する標準的手法を確立するためのWGです。

今回の会議では、DNSOP WGで議論されているインターネットドラフトの進捗状
況の確認、WGのリチャータの議論、DNSSEC検証時のリゾルバの性能についての
報告、DNSの再帰的な問合せを使ったDDoS攻撃についての議論が行われました。

DNSSEC検証時のリゾルバの性能については、対応している二つのDNSリゾルバ
実装であるBIND 9とCNSに対し、ISPでの実際のDNS問い合わせを再現すること
で負荷の変化を調べたところ、DNSSEC検証の負荷は問題にならないほど小さか
ったということが報告されました。

DNSの再帰的な問合せを使ったDDoS攻撃についての議論では、BCP 38 (RFC 
2827) で定義されるIngress Filteringだけでは足りないため、DNSについて記
述したBCPドキュメントが必要であることが合意されました。また、その場で
執筆者が募集され決定しました。

今後のWGの方向性として、リチャータ提案が行われました。WG co-chairsから
の提案では、対象はDNSのパラメータ、DNSSECの運用パラメータ、IPv4/v6共存
環境やIPv6への移行手順のガイドラインだけでしたが、会議中に別のプロトコ
ルでのDNS使用法を評価することも対象とすべきという提案がありました。ま
た会議後に、パフォーマンス評価やリゾルバの挙動について、およびDNSトラ
ンスポートの問題についても議論の対象とするよう提案が追加され、現在議論
中となっています。


▼ CRISP(Cross Registry Information Service Protocol) WG

CRISP WGは、現在のWhoisを機能的に置き換え、ドメイン名情報等のインター
ネット資源情報を検索するための新しいプロトコルを検討するWGです。なお、
CRISPは要求仕様の名称であり、CRISPを実現するために決められたものが
IRIS (The Internet Registry Information Service) プロトコルです。

今回の会議では、RFC 3982として発行されているドメインレジストリ向けIRIS
に対して、その後の要望を反映する提案であるDREG2の進捗状況報告が行われ、
DNSSECのDSの追加と、Lame delegationチェックの結果を追加したことが紹介
されました。DREG2については合意され、WG Last Callをかけることとなりま
した。

また、次回の会議開催については、DREG2やDCHKなどの現在作業中のインター
ネットドラフトの標準化進捗状況で決めることとなりました。


▼ IEPG(Internet Engineering Planning Group) Meeting

IEPGは、インターネット運用についての情報交換を行うグループで、IETF会議
に併せて開催されています。

今回も、各RIR(Regional Internet Registry)におけるIPアドレス、AS番号の
割り振り状況についての統計報告が行われました。

この中で、ここ6年間(1999年~2005年)におけるIPv4アドレス、IPv6アドレス、
AS番号の各RIRへの割り振り状況が示されました。それによるとIPv4アドレス
の割り振りはAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)、ARIN
(American Registry for Internet Numbers)、RIPE NCC(Resource IP 
Europeens Network Coordination Centre)の3つがほぼ1/3ずつを占める拮抗
した状態であるのに対し、IPv6アドレスはRIPE NCCがその半分以上を占めてお
り、かなりの地域差がみられます。この理由として、以前(第60回IETF 
Meeting参照)に報告したように、特にヨーロッパ地域におけるIPv6の普及が
めざましいことをあげることができます。関連して、今回の会議でもスペイン
におけるIPv6の普及のための活動報告が行われています。

また、JPRSの森下泰宏が、JPRSの調査研究で行っている海外のDNSサーバ用
Anycast拠点の展開において、サイトの構築にあたり具体的に検討した項目と、
実際の構築・運用を通じて得られた知見について解説しました。

◎関連URI
   - IEPG Meeeting - March 2006
     http://www.iepg.org/march2006/

   - 第60回IETF Meeting報告
     http://jpinfo.jp/event/2004/0823ietf.html

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