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増刊号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2006-11-24━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.61 ◆ ━!JP━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━JPRS━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 第67回 IETF Meeting 報告(前編) ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第67回IETF(The Internet Engineering Task Force)Meetingが2006年11月5 日から11月10日にかけて、アメリカのサンディエゴで開催されました。 PlenaryではIETF Chairから毎回参加人数が報告されますが、それによると今 回のIETF Meetingの参加人数は40カ国から1,200人とのことでした。国別では、 開催地アメリカからの参加者が半数以上を占め、次いで日本からの参加者が多 いという、これまでと同様の傾向でした。 多くのテーマが議論されるIETFの中から、DNSに関する話題について報告しま す。 ◇ ◇ ◇ ■DNSEXT(DNS Extensions)WG DNSEXT WGは、DNSの各機能の拡張に関する議論を行うためのWGです。今回のWG では、前回からのDNAMEの改善や継続して進められているDNSSECの標準化、新 しい提案についての議論が行われました。 ▼DNSSEC(DNSのセキュリティ拡張) DNSSECについては、従来から報告を行っているNSEC3拡張と、標準化が完了し たDNSSECbis標準(RFC 4033,4034,4035)の微修正(DNSSECbis update)につ いて議論されました。NSEC3 については、9月に実施されたワークショップの 結果を反映し、ほとんどの問題が解決されたことが報告されましたが、DNAME とNSEC3の関連についての考察が必要であることが指摘され、MLで議論するこ ととなりました。DNSSECbis updateは、DNSSECbis策定後に判明した技術的な 不明点・細かな誤りをまとめ、明確化するものです。このドキュメントには、 まだ書ききれていない部分があるため、その部分の追加を待ち、標準化するこ ととなりました。 ◎関連URI NSEC3 http://www3.ietf.org/proceedings/06nov/slides/dnsext-2.pdf http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-ietf-dnsext-nsec3-08.txt DNSSECbis update http://www3.ietf.org/proceedings/06nov/slides/dnsext-1.pdf http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-ietf-dnsext-dnssec-bis-updates-04.txt ▼DNS cookies DNS cookies提案は、すべてのDNSパケットに送出側・応答側のcookieを追加し、 DNS応答の正当性を簡易に検証するという提案で、フルリゾルバへのIPアドレ ス偽装攻撃の影響や、キャッシュポイズニングの可能性を減らすことを目的と しています。今回は、NATの裏に複数のリゾルバがある場合の問題について指 摘されました。しかしながらこの案を運用可能なプロトコルとしてまとめるこ とは有意義であるというコンセンサスが得られ、MLで議論を継続することとな りました。 ◎関連URI http://www3.ietf.org/proceedings/06nov/slides/dnsext-0.ppt http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-eastlake-dnsext-cookies-01.txt ▼DNSSEC Signature Only DNSSECでは、存在する名前についての検証だけではなく、名前が存在しないこ とも検証する機能を提供しています。存在する名前の連鎖を用いて不存在を証 明する方式が標準化済みであり、存在する名前のハッシュの連鎖を用いる方式 が前述のNSEC3方式です。不存在証明を実装するコストは大きいため、その不 存在証明をやめ、存在する名前の署名検証のみを実施するという提案が 「DNSSEC Signature Only」です。この方式では、存在しない名前を検索した 場合に署名を返せないため、存在しない名前に虚偽の応答を返された場合には、 署名がない応答との区別がつかないという問題があります。この提案について、 激しい議論が行われましたが結論がでず、次回のミーティングまでにMLで議論 を行い、結論を出すこととなりました。 ◎関連URI http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-stjohns-dnssec-sigonly-00.txt http://www3.ietf.org/proceedings/06nov/slides/dnsext-3.pdf ■DNSOP(Domain Name System Operations) WG DNSOP WGは、DNSを運用するにあたっての問題点や手法を議論し、DNS運用に関 する標準的手法を確立するためのWGです。今回は、継続中のドキュメントにつ いてのステータス・議論と、数件の新規案件について議論されました。そのう ちいくつかの話題について報告します。 ▼SPF DoS Exploitation(SPFがDoSを引き起こす危険性) メールの送信者認証技術であるSPFは、メール送信元ドメイン名のメールサー バのIPアドレスをSPF情報として送信元ドメイン名のDNSサーバに登録しておき、 受信側では送信元ドメイン名のDNS検索を行ってIPアドレスがSPF情報に一致す るか確認することで送信者を認証する方式です。SPF情報の登録方法は非常に 拡張性が高く、転送、参照、マクロ展開などの機能があり、また多くのIPアド レスやホスト名を登録することができます。結果として、一つのアドレスの確 認のために10回以上のSPF情報や、ホスト名の検索が必要なことも起こり得ま す。そのため、一通のメールのチェックだけで多数のDNS検索が起きる可能性 があります。つまり、送信元を詐称した多量のスパムメールを送信することで、 受信側でのSPFチェックを誘発し、詐称した送信元のドメイン名に対し多量の DNS検索を起こす可能性があります。チェックを行うことにより、迷惑メール 自体は迷惑メールと判定されますが、その過程で受取り先のメールサーバや DNSサーバ、詐称されたドメイン名のDNSサーバへ重い負荷がかかります。その ため、SPFチェックの実装には十分な注意が必要であると指摘されました。 DKIMにも同様の懸念があります。議論の結果、DNSを利用するアプリケーショ ンのガイドラインが必要であるということが合意されました。 ◎関連URI http://www3.ietf.org/proceedings/06nov/slides/dnsop-2.ppt http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-otis-spf-dos-exploit-01.txt ▼DNS Scoped Data Through Attribute Leaves("_"で始まるラベル) アンダースコア(_)で始まるラベル(以下、この文書では属性ラベルとしま す)には、その親ドメイン名へ付随する情報を保持する特別な役割があり、主 にSRVやTXT、SPFなどのリソースレコードを記述するために使われます。とこ ろが、その属性ラベルを一括管理するレジストリは存在しておらず、プロトコ ルごとに定義しているのが現状です。たとえば、SPFであれば"_spf"という属 性ラベルを用いることや、SIPでは"_sip._udp"などの属性ラベルを用いること がそれぞれのRFCで記述されています。現在は、RFC標準化の過程のなかで、同 じ属性ラベルが別の意味に使われることを防いでいます。この現状に対し、属 性ラベルを管理するレジストリの設立が提案されました。どのようにその機能 を実現するかについてはこれから議論が必要ですが、WGで議論していくことに なりました。 ◎関連URI http://www3.ietf.org/proceedings/06nov/slides/dnsop-3.ppt http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-crocker-dns-attrleaf-02.txt ━!JP━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━JPRS━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) http://jprs.jp/ http://日本レジストリサービス.jp/ 会議報告: http://jpinfo.jp/event/ メールニュース配信解除: http://jpinfo.jp/mail/ ご意見・ご要望: from@jprs.jp 当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、 ニュースグループまたは他のメディア等へ許可なく転載することを禁止します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C), 2006 Japan Registry Services Co., Ltd. 2006年11月24日