JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト
増刊号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2008-04-04━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.85 ◆ ━!JP━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━JPRS━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 国際化ドメイン名に関する最新技術動向 ~第71回IETF Meetingでの話題を中心に~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回のFROM JPRSでは国際化ドメイン名に関する最新技術動向について、2008年 3月に米国のフィラデルフィアで開催されたIETF 71 Meeting(以下、IETF71) における議論内容を中心にお伝えします。 ◇ ◇ ◇ ■IDNプロトコルの改定に関する活動状況 国際化ドメイン名(IDN)のプロトコルは2003年にRFC 3490~RFC 3492として標 準化され、インターネット上で運用されてきました。しかし、IDNを実際に運用 する中で、現在のIDNプロトコルに存在する課題が顕在化してきました。 これを受け、現在のIDNプロトコル(IDNA2003)(*1)を改定し、課題を解決す るための活動が開始されました。元IETFチェアであり、また現在電子メールア ドレスの国際化(EAI)WGの共同チェアを務めているハラルド・アルベストラン ド氏により、この議論をオープンな場で進めるための「idna-update」メーリン グリストが2006年10月に開始され、メーリングリスト上で活発な議論が進めら れています。 今回のIETF71ではWGの再設立を目的とし(*2)、アルベストランド氏がチェア を務める形でIDN BOFが開催されました。BOFでは現在議論が進められている IDNA2003 の改定提案(IDNA200x)(*3)のインターネットドラフト文書紹介と、 これまでに顕在化した課題や活動内容が報告されました。 それぞれの文書の概要については、下記「関連URI」を参照ください。 (*1)現在のIDNプロトコルであるRFC 3490~3492は2003年に発行、標準化され たため、このように呼ばれています。 (*2)以前存在していたIDN WGは2003年の標準化完了に伴い、活動を終了して います。 (*3)IDNプロトコルの改定版は、IDNA2003に対しIDNA200xと呼ばれています。 ■区切り文字の扱いに関する議論 今回のIDN BOFでは、IDNA200xにおける区切り文字の扱いについての議論も併せ て行われました。 「区切り文字」とはドメイン名におけるラベルの区切りとして使われる文字の ことで、現在のIDNA2003では半角ピリオド(.)に加え、句点記号(。)や全角 ピリオド(.)も区切り文字として定義されています。しかし、現在議論され ているIDNA200xでは今後のUnicodeの改版等への対応を容易にするため「。」や 「.」等、半角ピリオド以外の文字を区切り文字として扱う部分をプロトコル の標準仕様から分離し、アプリケーションが必要に応じてローカルに行うこと とすることが提案され、その是非が検討されています。 BOFでは、もしIDNA200xでこの変更を行った場合、ユーザに直接影響を及ぼす部 分においてIDNA2003との互換性・相互接続性が失われるため、導入すべきでは ないのではないかという指摘が複数あり、これについて一定の理解が得られま した。今後は、メーリングリストや次回以降のIETF Meetingの場において議論 が継続されていくことになります。 ■IDNABIS WG設立へ 今回のIDN BOFでは今後の活動の主な目的として、 ・Unicodeのバージョン依存性の排除 ・より理解しやすいプロトコル文書に ・Bidi(*4)への対応 ・フィッシング防止対策 が挙げられました。そのうちフィッシング防止対策については活動の対象外と されましたが、残りの項目については今回のBOFで合意がなされました。 WGのチェアには、TCP/IPの開発やISOCの創立をはじめとするインターネットへ の数多くの貢献から「インターネットの父」と称され、2007年までICANN理事会 の議長を務めたビント・サーフ氏が立候補し、「IDNABIS WG」(*5)の設立に 向けた準備が進められています。 サーフ氏は1943年生まれの64歳です。しかし、インターネットエンジニアとし ての活動は現在も非常に活発であり、idna-updateメーリングリスト上において も数多くの意見や提案を行っています。同氏が自らWGチェアに立候補し、IDNプ ロトコルの改定に着手するという事実は、現在のインターネットにおけるIDNの 重要性を示すものの一つであるといえるでしょう。 (*4)Bidi: Bidirectional text アラビア文字やヘブライ文字を表記する場合、右から左に文字を表記し ます。しかし、アラビア文字で構成された文書中にラテン文字や算用数 字が現れる場合には、その部分のみ左から右に表記します。このように 一つのテキスト中に双方向の表記が混在している文書をBidi(ビー ディー:双方向テキスト)と呼びます。 なお、IDNA2003におけるBidiの取り扱いに関する規定は個々のラベルに 対してのみであり、IDNA200xでは複数のラベルにより構成されるドメイ ン名全体におけるBidiの取り扱いに関する仕様を決定しようとしていま す。 (*5)「-bis」は2を意味する接尾語で、通信プロトコルの改定の際によく用 いられます。 ◎関連URI RFC 4690: Review and Recommendations for Internationalized Domain Names (IDNs) (国際化ドメイン名に関する評価と勧告:2006年9月にRFC化) http://www.ietf.org/rfc/rfc4690.txt Internationalizing Domain Names for Applications (IDNA): Issues, Explanation, and Rationale (IDNA2003に存在する問題点の指摘と解説) http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-klensin-idnabis-issues-07.txt Internationalizing Domain Names in Applications (IDNA): Protocol (IDNプロトコルの基本部分であるIDNA(RFC 3490)の改版(IDNA200x)) http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-klensin-idnabis-protocol-04.txt An updated IDNA criterion for right-to-left scripts (Bidiに対応するためのIDNAの改定) http://www.ietf.org/internet-drafts/raft-alvestrand-idna-bidi-04.txt The Unicode Codepoints and IDNA (IDNA200xで使用可能な文字コード一覧) http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-faltstrom-idnabis-tables-05.txt High-level Changes From IDNA2003 To IDNA200x (IDNA2003からIDNA200xへの大きな変更点のまとめ) http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-hoffman-idna200x-topics-01.txt New Attempt to Close on IDNABIS Charter (v2) (ビント・サーフ氏からidna-updateメーリングリストに投稿された WGチャーター案) http://www.alvestrand.no/pipermail/idna-update/2008-March/001641.html WG Review: Internationalized Domain Names in Applications (Revised)(idnabis) (IESGによるIDNABIS WG設立レビュー開始のアナウンス) http://www.ietf.org/mail-archive/web/ietf-announce/current/msg04708.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━ ■会議報告:http://jpinfo.jp/event/ ■バックナンバー:http://jpinfo.jp/mail/backnumber/ ■登録解除:http://jpinfo.jp/mail/kaijyo.html ■ご意見・ご要望:from@jprs.jp 当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、 ニュースグループまたは他のメディア等へ許可なく転載することを禁止します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) http://jprs.jp/ http://日本レジストリサービス.jp/ Copyright(C), 2008 Japan Registry Services Co., Ltd.