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メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.107

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2011-02-04━
          ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.107 ◆
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     雪の金沢で交わされた、ネットワークに対する熱い思い
         ~JANOG27 Meetingにおける話題から~
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JANOG(JApan Network Operators' Group)は、ネットワーク運用者間の議論・
情報交換を通じたネットワークの円滑な運用を目指し、インターネット利用者・
技術者に貢献することを目的として設立された団体(コミュニティ)です。

JANOGにおける議論はメーリングリスト上で進められています。加えて、参加
者が一堂に会するJANOG Meetingが年に2回開催されており、事前に募集及び選
考された注目すべきテーマについて、集中的な議論が行われています。

今回のFROM JPRSでは、2011年1月20日、21日の両日にわたり金沢で開催された
JANOG27 Meeting(以下、JANOG27)で報告・議論された話題についてお伝えし
ます。

     ◇           ◇           ◇

■雪の金沢で交わされた熱い議論

今年の冬は例年にない厳寒が続き、記録的な豪雪となった地域も数多くあった
ようです。そのような中、雪の金沢で開催されたJANOG27には439名という、東
京以外の開催ではこれまでで最大規模となる参加者が集まり、ネットワークの
運用技術と関連するさまざまな話題について、熱い議論が交わされました。

今回のFROM JPRSではJANOG27で取り上げられた話題の中から、パネルディス
カッションの形で進められた「高校の情報の授業を知っていますか?」と、
現在進行中のさまざまな事柄について限られた時間で状況報告を連続的に行う
「ライトニングトーク」について報告します。

■高校の情報の授業を知っていますか?

今回のJANOG27では「高校の情報の授業を知っていますか?」と題したパネル
ディスカッションが開催されました。このセッションでは高校の必修授業科目
である「情報」をテーマに、学校における情報教育のあり方、JANOGに集う現
場のエンジニアが学校教育に対してコミットすべきことなどについて、各パネ
リストからの報告と会場の参加者を交えた議論が進められました。

今回パネリストを務めたライブドアの伊勢幸一氏による「若者のインフラ離れ」
という発言に象徴されるように、最近のネットワーク運用の現場からは「若手
エンジニアの不足」「現場エンジニアの高齢化」といった問題を、しばしば耳
にします。

今回のセッションではこのような背景から、会場の参加者も交えた活発な質疑
応答と議論が行われ、この問題への関心の高さと、ネットワーク運用の今後に
対する強い危機感がうかがえました。

▼高校における情報教育の現状

パネルでは、石川県立金沢二水高等学校で実際に情報の授業を担当している鹿
野利春教諭から、高校の現場における情報教育の現状の紹介がありました。

鹿野教諭からは、情報の授業は2003年度から開始され、選択必履修科目(*1)
として生徒全員の履修が義務付けられていること、高校では2013年度(一部内
容については2012年度から先行実施)から実施される新学習指導要領で、「社
会と情報」「情報の科学」の2科目に選択肢が変更され、いずれも従来のもの
に比べ、情報モラルの教育がより重視される予定であることなどが紹介されま
した。

(*1)複数の科目からいずれか1科目以上を選択し、履修しなければならない
   科目。情報では「情報A」「情報B」「情報C」からの選択必履修となり
   ます。

また、教育現場の現状として、情報の授業を現在担当しているのは数学、理科、
家庭、商業、工業の免許を持つ教員のうち、2000年から2002年にかけて開催さ
れた15日間の養成講習を受けた約9,000人の教員が主体であり、情報の専門教
育を受けているわけではないこと、それ以降のフォローアップや新規の養成は
現時点までされていないこと、東京都を除くほとんどの道府県では情報の担当
教員は元教科との兼任であり、専任の教員ではないことなどが紹介されました。

▼業界を目指す生徒を作るには?

そして、鹿野教諭からの提言として、ネットワーク関連の職業を目指す生徒を
養成するためには、ネットワークに関する情報や状況を教育現場にもっと伝え
る必要があること、ネットワークについての面白い実習を学校教育の現場に導
入する必要があること、具体的な方法として、情報教育研究会(*2)や教科書
会社のセミナーなどにおける中高生向けワークショップの実施などにより、
ネットワークの面白さをより具体的に伝える努力が必要であることが示されま
した。

(*2)高等学校における情報教育を研究・推進する目的で各都道府県ごとに設
   置された組織。全国の高等学校情報教育研究会が集まる上位組織として、
   全国高等学校情報教育研究会が2008年に組織されています。

   全国高等学校情報教育研究会
   http://www.zenkojoken.jp/

更に、今後に向けて、教育現場と産業界が互いの状況を理解し合うことが大切
であり、高校・大学・産業界が連携する形でのアプローチが必要であること、
教科としての情報がネットワークの「面白さ」を伝える出発点になることを期
待したい、ということが鹿野教諭から提言されました。

この他、今回のパネルディスカッションでは大学の教員、高校で情報の授業を
体験して現在は企業で働く若手エンジニア、情報工学を専攻している現役の大
学院生などの立場から、それぞれの視点による興味深い報告がありました。詳
細については、参考URIにあるJANOGのWebページをご参照ください。

▼実際に高校の情報の試験を体験できる「高校情報.jp」

今回のパネルディスカッションに合わせて情報の授業の試験を実際に体験でき
るWebサイト「高校情報.jp」が開設されており、以下のURIでアクセスできま
す。皆さまも一度体験されてみてはいかがでしょうか。

  http://高校情報.jp/

■ライトニングトークにおける話題から

JANOG Meetingでは毎回「ライトニングトーク」と題したセッションが設定さ
れ、現在進行中の話題に関するさまざまな報告や提案などを通じた情報共有が
図られています。ライトニングトークではその名の通り、稲光のように短い時
間(JANOG Meetingでは1人5分、時間延長なし)で、連続的に発表を行います。

今回はライトニングトークで話された話題の中から、JPRSの民田雅人が報告し
た「JP DNSが返すもの - DNSSEC対応によるDNSトラフィックの変化 -」での発
表内容について報告します。

▼DNSSEC対応によるDNSトラフィックの変化

2011年1月16日にJPドメイン名サービスにDNSSECが正式導入され、DNSSECの本
格運用が開始されました。それに先立つ2010年10月17日に.jpゾーンがDNSSEC
署名され、同年10月29日にゾーン署名鍵(ZSK)を更新するための事前公開が
開始されています。

今回の発表では、それぞれの設定変更の前後においてJP DNSが返す応答サイズ
の分布の変化とそこから読み取れる状況、JP DNSに到達するDNSパケットのDO
ビット(*3)の有無から推測した対応実装の割合、TCP接続数の変化の推移、
DNSKEYレコードの応答サイズに関する考察などが発表されています。

(*3)DOビットは「DNSSEC OK」を意味しており、DNS問い合わせ側がDNSSECに
   対応していることをDNS応答側に示すために使われます。

発表内容について補足した事後資料が公開されておりますので、参考URIにあ
るJANOGのWebページも、併せてご参照ください。

なお、本件については、JANOG27終了後のJANOGメーリングリスト上で、発表内
容に対する質問と発表者からのフォローアップが行われています。このように
JANOGでは、会場やメーリングリストでの発表者との直接のやりとりにより、
現場の生の情報を共有、議論できることが、その強みの一つです。

■激動期を迎える中、臨時ミーティング「JANOG27.5」を開催へ

米国東部時間2011年2月3日(日本時間では2011年2月3日深夜から2月4日にかけ
て)、ICANN、NRO(*4)、IAB(*5)、ISOC(*6)の代表が共同で式典と記者
会見を開催し、IANAが割り振り用に保持していた最後の二つの/8 IPv4アドレ
スブロックがAPNICに割り振られ、残りが5ブロックとなったこと、それを受け、
以前からの合意に従い各地域を管轄する五つのRIR(*7)に残りのアドレスブ
ロックが一つずつ自動的に割り振られたことにより、IANAが管理する割り振り
用IPv4アドレスの在庫が完全になくなったことを発表しました。この模様は
インターネットでライブ中継(*8)されましたので、ご覧になられた方も多
かったのではないかと思います。

今回の記者会見に冠された「Significant Announcement(重大発表)」という
文言の通り、今回の出来事はこれまで長年にわたって続けられてきたIPv4アド
レスの管理運用が大きな節目を迎えたことを意味しています。

(*4)「Number Resource Organization」。NROはRIR全体として外部組織との
   調整が必要な場合に、RIRを代表する組織として機能します。

(*5)「Internet Architecture Board」。IETF及びIESGによる標準化プロセ
   スを監督し、RFCの発行及びIANAの資源割り当てについて責任を負いま
   す。また、IETF Chair及びIESG Area Directorsの最終的な承認、ISOC
   への技術的アドバイスなど、インターネット全体にかかわる重要な役割
   を担っています。

(*6)「Internet Society」。1992年に設立された非営利の国際組織で、イン
   ターネット技術及びシステムに関する標準化、教育、ポリシーに関する
   課題や問題を解決あるいは議論することを目的としています。具体的に
   は、イベント「INET」の開催や、IABやIETFの上位団体として、これら
   の団体の活動に対する支援を行っています。

(*7)「Regional Internet Registry」。地域インターネットレジストリ。
   ICANNは世界を五つの地域に分け、それぞれの地域でIPアドレスの割り
   当て管理を行うレジストリ組織としてRIRを定めています。RIRは、アジ
   ア太平洋地域のAPNIC、欧州・アフリカ地域のRIPE NCC、北米地域の
   ARIN、南米カリブ海地域のLACNIC及びアフリカ地域のAfriNICとなって
   います。

(*8)IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースによる日本語同時通訳も提供され
   ました。なお、JPRSでは今回の発表がインターネット資源管理について
   の重要な内容であることから、この中継への協力を行いました。

また、IPアドレスと並んでインターネットの基盤を支えているドメイン名/
DNSにおいても、2011年1月16日にDNSSECの正式運用を開始した「.jp」に続き、
世界最大のドメイン名である「.com」においても2011年3月31日からDNSSECの
正式運用が開始され、新たな局面を迎えることになります。

このようにインターネット基盤技術の管理運用が激動の時代を迎えつつある中、
次回のJANOG28は2011年7月14日、15日の両日にわたり東京で開催されます。ま
た今回、「JANOG27.5」と題した臨時のミーティングをJANOG27とJANOG28の間
に当たる2011年4月14日に計画していることが、JANOG運営委員から発表されま
した。JANOG27.5の詳細については今後、JANOGメーリングリスト上でアナウン
スする予定とのことです。

激動の時代を迎え、これまで以上に「濃く、熱い」議論が展開されていくであ
ろう、JANOGの活動に要注目です。

     ◇           ◇           ◇

◎関連URI

 - JANOG | JApan Network Operators' Group
  http://www.janog.gr.jp/
  (JANOG公式サイト)

 - JANOG | JANOG27 Meeting
  http://www.janog.gr.jp/meeting/janog27/
  (JANOG27公式サイト)

 - JANOG27 Meeting Program
  http://www.janog.gr.jp/meeting/janog27/program/index.html
  (JANOG27プログラム・発表資料一覧)

 - 高校の情報の授業を知っていますか?
  http://www.janog.gr.jp/meeting/janog27/program/school.html
  (パネルディスカッションでの内容・発表資料)

 - JP DNSが返すもの - DNSSEC対応によるDNSトラフィックの変化 -
  http://www.janog.gr.jp/meeting/janog27/program/dnssec.html
  (ライトニングトークでの発表内容・発表資料)

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