JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト


メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.116

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2011-12-13━
          ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.116 ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___________________________________

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
        最新動向・議論から見る新TLDの"現在"
    ~申請受け付け開始を間近に控えた新gTLDの話題を中心に~
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2012年1月12日の申請受け付け開始を間近に控えた「新gTLD」。そして、ファ
ストトラックプロセスによる申請受け付け/委任と並行して、正式導入のため
に必要となる恒久的なポリシーの検討が着実に進む「IDN ccTLD」。2011年も
これらの「新TLD」が大きな注目を集めた1年だったといえます。
今回のFROM JPRSでは、2011年10月に開催された第42回ICANN会合における議論
とともに、新gTLDに関するICANNの各種取り組みや注目すべき世の中の動きを
交え、新TLDを取り巻く"現在"を読者の皆さまにお届けします。

     ◇           ◇           ◇

■新gTLDの具体的な申請・審査プロセスに会合参加者の注目が集まる

まず始めに、新gTLDの最新動向・議論をご紹介します。

冒頭でも触れた通り、2011年10月23日から28日にかけて第42回ICANN会合がセ
ネガルの首都ダカールで開催されました。
前回会合において新gTLD申請者用ガイドブックが承認され、新gTLDの申請受付
期間が「2012年1月12日から同年4月12日」に決定していたことから、会合参加
者の注目の多くは具体的な申請・審査プロセスに集まりました。

▼申請のバッチ化にとりわけ大きな関心が寄せられる

ICANNは、1年間に委任する新gTLDの件数を1,000件までとしています。また、
新gTLDの申請は一定の件数でひとまとめ(バッチ)にした上で、順に処理する
ことを想定しているとのことです。
初回のバッチは500件までとされ、この500件に入る申請がどのように決められ
るかに会合参加者の関心が寄せられました。具体的な実装方法については現時
点で未決定とされましたが、申請受付期間中のいつの時点で申請しても初回の
バッチに入る確率に差異はないようにするとの発言がありました。

▼新gTLD申請者用ガイドブックにまつわる検討課題

新gTLDの申請受け付け開始前としては、このダカール会合が最後の会合開催タ
イミングとなります。一方で、新gTLD申請者用ガイドブックにまつわる検討課
題は現在も存在している状況です。検討課題の中には、商標権侵害意図を持っ
た第三者によるドメイン名登録の防衛を目的として設けられるデータベース
(Trademark Clearinghouse)に商標権者が商標を登録する方法なども含まれ
ています。
これらについては決定次第、ガイドブックの改版という形ではなく、別文書と
して定められることになる見込みですので、ICANNの文書公開やアナウンスに
引き続き注意を払っておく必要があるといえます。

■ICANNによる「足固め」の取り組みが会合外でも進む

この他、会合外においても新gTLDの申請受け付け開始に向けた取り組みが
ICANNによってなされています。直近のアナウンスから、そのうちのいくつか
をご紹介します。

 1) 新gTLDのカスタマーサービスセンターのサービス拡張
   ⇒ICANNでは、新gTLDに関する情報提供を目的にカスタマーサービスセン
    ター(http://newgtlds.icann.org/applicants/customer-service)を設
    置しています。11月21日付のアナウンスにおいて、英語のみでの対応
    だったものを国連公用語の6言語(アラビア語、中国語、英語、フラン
    ス語、ロシア語、スペイン語)で対応可能にしたと発表しています。
    また、これに併せてナレッジベースも公開されています。

 2) 新gTLDプログラムの独立申立人の募集
   ⇒新gTLD申請に対して公益性の観点から異議を唱えられる独立申立人
    (Independent Objector/IO)の募集が12月22日まで行われています。

 3) 新gTLD申請システムのデモ版の公開
   ⇒新gTLD申請システム(Top-Level Domain Application System/TAS)
    のデモ版がhttp://newgtlds.icann.org/applicants/tas/demoで公開
    されています。これにより、具体的な申請操作がどのような流れにな
    るのかをあらかじめ体験しておくことができるようになっています。

このように、ICANNによるいわば「足固め」ともいえるさまざまな取り組みが
なされています。これ以外にも世界各地において新gTLDの周知イベントを実施
するなど、これまでのICANN主体の取り組みとして比較的手薄であったといえ
る非英語圏に向けた情報提供・啓発活動を積極化している向きが見られます。
日本においても、東京・秋葉原で開催されたインターネット関連イベント
「Internet Week 2011」の11月29日のプログラムの中で、ICANN理事である
呉國維(Kuo-Wei Wu)氏による特別講演が行われました。講演では、申請の概
要や留意すべき事項の説明とともに、申請受付タイミングは今回に限らないの
で十分な時間をかけて必要性を検討して欲しい旨の呼び掛けがなされています。

■新gTLDの申請受け付け開始に異を唱える団体の活動も活発に

しかし、こうしたICANNの取り組みに相反する形で、米国を中心に新gTLDの申
請受け付け開始に異を唱える団体の活動が活発になっています。

とりわけ強い反対表明を行っているのが全米広告主協会(Association of 
National Advertisers)です。米国の大手広告主400社で構成される同協会は
商標権者の立場からこれまでも新gTLDプログラムへの懸念を示してきましたが、
ダカール会合と同時期に行った年次会議及びプレスリリースにおいて、
「新gTLDプログラムが回復不能な損害を引き起こす前に、商標コミュニティ全
体でICANNに対して再考と延期を求めねばならない」とのメッセージを改めて
打ち出しています。
同協会はまた、11月に47の団体及び40の企業とともにCRIDO(Coalition for 
Responsible Internet Domain Oversight)を結成し、新gTLDプログラムへの
反対姿勢を強めています。CRIDOにはその後も参加する団体・企業が続いてい
るようで、12月12日の閲覧時点では98の団体と56の企業がリストに名を連ねて
います。

全米広告主協会ならびにCRIDOは、11月10日付で米国商務長官あてに新gTLDプ
ログラムへの異議を表明する請願書を提出しており、12月8日には米上院商業・
科学・運輸委員会において公聴会が開催されています。この場にはICANNや全
米広告主協会/CRIDOからの参考人の他、ICANNの初代理事会議長を務めたエス
ター・ダイソン氏も参考人として召還され、新gTLDプログラムのメリットや影
響とともに、インターネットコミュニティから寄せられた懸念へのICANNの取
り組みが審査されました。12月14日には米下院エネルギー・商業委員会小委員
会においても公聴会が開催される予定です。

この他にも、全米小売業協会(National Retail Federation)や全米映画俳優
組合(Screen Actors Guild)などが新gTLDの申請受け付け開始に異を唱えて
います。こうした動向が新gTLDプログラムに今後どういった影響を与えるのか、
注視しておく必要があるといえます。

■恒久的なポリシーの検討が着実に進むIDN ccTLD

ここからは、IDN ccTLDの最新動向・議論をご紹介します。

冒頭でも記した通り、IDN ccTLDについては早期に必要とされるIDN ccTLDを限
定的に迅速導入するための「ファストトラックプロセス」による申請受け付け/
委任と、正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(ccPDP)」の
検討が並行して進められています。

▼「酷似」問題に対する模索(ファストトラックプロセス)

ファストトラックプロセスにおいてICANNは、申請されたIDN ccTLDの文字列が
ISO 3166で定められている2文字のASCII国名コード(*1)と酷似している/将
来的に酷似する可能性があるとして、これまでにギリシャとブルガリアの申請
を却下しています。

(*1)ASCII文字のccTLDは、原則としてISO 3166で定められている2文字の
   ASCII国名コードに基づくものとなっています。

具体的には、ギリシャの申請したIDN ccTLD「.ελ(大文字表記では
『.ΕΛ』)」はASCII文字のccTLDとなり得る「.ea(大文字表記では
『.EA』)」に、ブルガリアの申請したIDN ccTLD「.бг」はブラジルの
ASCII文字のccTLDである「.br」にそれぞれ酷似しているとされています。

この問題に対しccNSO(*2)は、JPRSの堀田博文もメンバーに含む検討チーム
を立ち上げ、ICANNに対して何らかの解決策を提案できないか模索してきまし
た。その結果、「ASCII国名コードが示す国や地域に対応するIDN ccTLDが、元
のASCII文字のccTLDと同一のレジストリに委任されるのであれば許可すべき」
との提案をICANN理事会に提出しました。ギリシャとブルガリアについては、
申請文字列が他国のASCII文字のccTLDに酷似している/将来的に酷似する可能
性があることからやはり却下となるものの、今後欧州連合の「.eu」のレジス
トリであるEURidが申請を予定しているIDN ccTLDなどは本提案が承認となれば
許可される見込みです。

(*2)ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体としてICANN
   の他の支持組織や委員会などと協調しながら、ccTLD全体にまたがるグ
   ローバルな課題についてccTLDコミュニティにおける合意を形成し、
   ICANN理事会に対してポリシーの勧告を行う役割を担います。

▼IDN PDP WG 2においてコンセンサス形成に至る(ccPDP)

ccPDPについては、ccNSOの「IDN PDP WG 1」と「IDN PDP WG 2」という二つの
ワーキンググループにおいて検討が進められています。なお、これらのワーキ
ンググループにもJPRSの堀田博文が参加しています。

WG 1においては、IDN文字列及び委任についての検討が最終段階にあります。
「.中国(簡体字)/.中國(繁体字)」のような、同一と見なすべき複数の文
字にまつわる検討・課題抽出がTLD全体にわたるプロジェクトとして進められ
ており、その完了を待って結論付ける予定となっています。

WG 2においては、ccNSOのメンバーにIDN ccTLDのレジストリを含めるか、また
そのときの投票権はどうあるべきかといった課題を中心に議論が深められてい
ましたが、IDN ccTLDを含むccNSOの構造について一定のコンセンサスが形成さ
れるに至っています。「IDN ccTLDのレジストリもccNSOのメンバーとなれる」
「提案・議論には全メンバーが同等の権利で関われる」「ICANN理事会へのポ
リシー提案書の決定や選挙のように、ccNSOとしてのアウトプットを決めるた
めの投票行為はISO 3166の国/地域単位で1票とする」ことがその内容となっ
ています。
WG 2ではまた、最終報告書ドラフトへのパブリックコメントを12月15日まで受
け付け中であり、これと並行する形でccNSOのルールとガイドライン文書の改
訂案作成を進めています。

■次回のICANN会合

次回の第43回ICANN会合は、2012年3月11日から16日にかけてコスタリカの首都
サン・ホセで開催される予定です。

     ◇           ◇           ◇

◎関連URI

 - ICANN 42 | 23-28 October 2011 | Dakar
  http://dakar42.icann.org/
  (ICANNダカール会合公式ページ)

 - Applicants | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/applicants
  (新gTLD申請者に向けたICANNのページ)

 - ICANN | 2011 Announcements
  http://www.icann.org/en/announcements/
  (ICANNのアナウンス一覧ページ)

 - Internet Week 2011 - P2-3 第32回ICANN報告会 -
  https://internetweek.jp/program/p2-3/
  (呉國維(Kuo-Wei Wu)氏による特別講演が行われた「Internet Week 
  2011」のプログラム紹介ページ)

 - ANA 2011 Annual Conference Opens with Largest Attendance Ever
  http://www.ana.net/content/show/id/22189
  (年次会議についての全米広告主協会のプレスリリース)

 - 87 Major Assns. and Businesses Join with ANA to Form Coalition to 
  Oppose ICANN's TLD Expansion Program
  http://www.ana.net/content/show/id/22351
  (CRIDO結成についての全米広告主協会のプレスリリース)

 - Coalition for Responsible Internet Domain Oversight (CRIDO)
  http://www.ana.net/content/show/id/crido
  (CRIDO参加団体・企業のリストを掲載する全米広告主協会のページ)

 - Hearings
  ICANN's Expansion of Top Level Domains
  http://commerce.senate.gov/public/index.cfm?p=Hearings&ContentRecord_id=22f4a71e-93e9-4711-acec-3ed7f52277cc&ContentType_id=14f995b9-dfa5-407a-9d35-56cc7152a7ed&Group_id=b06c39af-e033-4cba-9221-de668ca1978a
  (米上院商業・科学・運輸委員会の公聴会についてのページ)

 - HEARING
  ICANN's Top-Level Domain Name Program
  http://energycommerce.house.gov/hearings/hearingdetail.aspx?NewsID=9134
  (米下院エネルギー・商業委員会小委員会の公聴会についてのページ)

 - National Retail Federation - NRF Seeks Delay in Plan to Expand 
  Internet Domain Names
  http://www.nrf.com/modules.php?name=News&op=viewlive&sp_id=1229
  (新gTLDの申請受け付け開始に異を唱える全米小売業協会のパブリックポ
  リシー)

 - Screen Actors Guild Opposes ICANN's Top-Level Domain Expansion 
  Program | Screen Actors Guild
  http://www.sag.org/press-releases/november-14-2011/screen-actors-guild-opposes-icann%E2%80%99s-top-level-domain-expansion-progr
  (新gTLDの申請受け付け開始に異を唱える全米映画俳優組合のプレスリ
  リース)

 - ICANN | IDN ccTLD Fast Track Process - News and Announcements
  http://www.icann.org/en/topics/idn/fast-track/announcements-en.htm
  (IDN ccTLDファストトラックプロセスに関するICANNのニュースページ)

 - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
  http://ccnso.icann.org/workinggroups/
  (ccNSOのワーキンググループ紹介ページ)

 - ICANN | Public Comments - Open
  http://www.icann.org/en/public-comment/
  (ICANNのパブリックコメント募集ページ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━
■会議報告:http://jpinfo.jp/event/
■配信先メールアドレスなどの変更:http://jpinfo.jp/mail/henkou.html
■バックナンバー:http://jpinfo.jp/mail/backnumber/
■ご意見・ご要望:from@jprs.jp

当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、
ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。
また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、
リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに
ご注意ください。
その他、ご利用に当たっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。
http://jpinfo.jp/mail/kiyaku.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
http://jprs.jp/
http://日本レジストリサービス.jp/
Copyright(C), 2011 Japan Registry Services Co., Ltd.