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メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.125

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2012-11-15━
          ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.125 ◆
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            ICANNトロント会合報告             
 ~IDN ccTLD導入に関する最新動向と新gTLDプログラムの進捗状況を中心に~
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2012年10月14日から18日にかけて、第45回ICANN Meetingがカナダのトロント
で開催されました。

北米での開催ということもあり、本会合の参加登録者数は約1,500人と、多く
の参加者が集まりました。
また、会合への初参加を示す「New Comer」のバッジをつけた参加者は、前回
会合に比べると減っているように見受けられ、新gTLD導入をきっかけにドメイ
ン名業界に参入した企業や組織からの参加者の増加は落ち着いたようです。

今回のFROM JPRSでは、IDN ccTLD導入に関する最新動向や新gTLDプログラムの
進捗状況をはじめ、その他、会合で取り上げられた内容や議論についてお届け
します。

(1)IDN ccTLD導入に関する最新動向
(2)ccNSO会合での話題から
    - ccTLDからICANNへの財政的貢献
    - 各レジストリでのDNSSECの展開動向
    - インターネットへのITR適用を巡る動向
(3)その他の内容・議論から
    - 新CEOの下で進められるICANNの構造改革
    - 新gTLDプログラムの進捗状況

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(1)IDN ccTLD導入に関する最新動向
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■IDN ccTLD導入に関する最新動向

▼WGにおけるポリシー検討がおおむね収束、ccNSO評議委員会における検討へ

IDN ccTLDについては、早期に必要とされるIDN ccTLDを限定的に迅速導入する
ための「ファストトラックプロセス」による申請受け付け/委任と、IDN ccTLD
の正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(PDP)(*1)」の検
討が引き続き進められています。 ポリシー検討については、JPRSも参加する
ccNSO(*2)の二つのワーキンググループにおいて検討を行ってきました。
IDN ccTLDの文字列や委任に関する検討はIDN PDP WG 1で、IDN ccTLD導入に際
して必要となるICANN定款見直しの検討はIDN PDP WG 2で進められています。

(*1)ICANNの役割の一つに、インターネット資源の調整業務に関連するポリ
   シー策定があり、このポリシー策定のための一連の流れをPDP
   (Policy Development Process)と呼びます。

(*2)ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体として、ICANN
   の他の支持組織や委員会などと協調しながらccTLD全体にまたがるグロー
   バルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行う役割
   を担います。

今回の会合では、各ワーキンググループで進めてきた検討事項についての議論
がおおむね収束し、今後は、議論の内容をまとめた最終報告書の作成に入りま
す。その後、各ワーキンググループでの議論の結果は、ccNSO評議委員会にて
ccNSO全体の合意とすべきかどうかの検討がなされることとなります。

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(2)ccNSO会合での話題から
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■ccTLDからICANNへの財政的貢献

前回のICANNプラハ会合で検討されながら進展がなかった「ccTLDからICANNへ
の財政的貢献」について、検討状況の共有が行われました。
具体的にどの程度の財政的な貢献が必要なのかを考えるにあたり、まず、ICANN
の活動について以下の三つのカテゴリーに分類を行い、検討を進めていくこと
が決定されました。

1.IANA契約など直接的なサポート関連
2.ICANN会合時の会場提供など間接的サポート関連
3.各WGの活動サポート関連

具体的な内容については、2013年4月に開催されるICANN北京会合にて、引き続
き検討が進められる予定です。

■各レジストリでのDNSSECの展開動向

DNSSECの普及・導入活動を進めているいくつかのレジストリから、それぞれの
TLDにおけるDNSSECの展開状況が共有されました。

今回報告された特徴的な施策として、レジストラをDNSSEC対応状況によってラ
ンク付け/公開するなどのインセンティブの設定や、DNSSECに関する教育ツー
ルの提供、ウェビナー(Webinar: インターネット上で行われるセミナー)の
開催といった、レジストラに対する手厚いサポートの実施が挙げられます。

また、その他の施策として、政府が政府機関における遵守事項を定めたリスト
にDNSSECを必須施策として指定することが有効であるという報告がありました。
実際にリストへの掲載を実施しているオランダのccTLD「.nl」のレジストリ
SIDNから、これらの施策を実施した結果.nlにおけるDNSSECの署名済みドメイ
ン名数が飛躍的に増加し、施策が効果を発揮していることが紹介されました。

■インターネットへのITR適用を巡る動向

前回のプラハ会合におけるccNSO会合では、国際連合の専門機関の一つである、
国際電気通信連合(以下、ITU)の定める「国際電気通信規則(以下、ITR)」
の動向に関する議論が行われました。

ITRは、これまで国際電話通信の分野に適用されてきましたが、今後、その適
用範囲をインターネットにも拡大しようとするという動きが出てきているため
です。ITRの改正には、ITU内の世界国際電気通信会議(以下、WCIT)の開催が
必要とされており、2012年12月にWCITの初開催が予定されています。

今回の会合におけるWCITに関するパネルディスカッションでは、ITRが改正さ
れた場合に発生するとみられる具体的な影響について言及はありませんでした。
しかし、ccTLDコミュニティとして、継続して議論の動向を注視し、各国政府
と連携を取り合うなどの行動が必要であるとのコメントが多く聞かれました。
WCITの開催が12月に迫る中、今後の動向に注目が集まっています。

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(3)その他の内容・議論から
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■新CEOの下で進められるICANNの構造改革

2012年10月15日に開催された「Opening Ceremony」において、同年9月14日に
ICANN CEOに就任したFadi Chehade氏が、「A New Season」と題したプレゼン
テーションを行いました。

同氏はプレゼンテーションの中で、ICANNは「Multi Stake Holder"Equal"
Model」であるとし、それぞれのステークホルダーを平等に扱うことの重要性
を示しました。

そして、ICANNの幹部スタッフを改めて紹介するとともに、ICANNにおける理事
とスタッフの壁や部門間の壁を取り除き、ICANNメンバーが一丸となって、多
様なステークホルダーとの協調に基づく組織運営を目指すことを表明しました。

さらに、ICANNと各国、各地域のインターネットコミュニティとの連携が重要
であるという点にも言及しました。会場では、このプレゼンテーションで示さ
れたICANNの方向性に好感を持ったという声が多く聞かれました。

▼新たなコミュニケーションツール「myICANN」

Chehade氏は同プレゼンテーションの終了後、ICANNの新たなコミュニケー
ションツールとなる「myICANN」を紹介しました。現
在のものは、ICANNからの情報を受け取る機能しかないものの、今後、ボトム
アップ型の意見形成のツールとして、また、各種トレーニングのプラット
フォームとしての役割を果たしていけるよう機能を拡充していくことを発表
しています。

今回のプレゼンテーションや新しいコミュニケーションツールの発表などから
は、新CEOの下、さまざまなステークホルダーと積極的なコミュニケーション
の確立を目指すICANNの姿勢が垣間見えます。今後、新CEOとなったChehade氏
が中心となって進められていくであろう、ICANNの構造改革の内容に要注目で
す。

     ◇           ◇           ◇

■新gTLDプログラムの進捗状況

▼ICANNによる新gTLDの審査結果発表と委任手続の順番決定方法

現在進行中の新gTLDプログラムでは、申請された文字列の審査の順番を決める
ための「Digital Archery」が中止されるなど、スケジュールの遅れが懸念さ
れていました。

これを受け、ICANNは2012年10月10日、新gTLDの審査の結果発表と委任手続き
の順番を決める方法として、「Prioritization Drawing(以下、抽選)」を用
いる提案を発表しました。この提案に対して、これまでに否定的な意見は出て
おらず、「新gTLDプログラムの今後の見通しがICANNによって明確に示された
ことを歓迎する」といった声が多数聞かれました。

今回、ICANNが提案した「抽選」の概要は以下となります。

・ICANNの主催により、2012年12月に米国(ロサンゼルス)にて抽選会を開催する
・抽選参加希望者は、事前に100米ドルの参加チケットを抽選を希望するgTLD
 申請ごとに購入する必要がある
 (「非営利法人が基金創設抽選会を実施する」旨のカリフォルニア州法の規
  定の適用を受けるための法的要請によるもの)
・抽選会の参加者は、当該新gTLD申請組織の代表者もしくはその代理人とする
・ICANNは抽選の代理人の斡旋を実施する
・抽選会に参加しなかったgTLDの申請者の委任手続きの順番は、抽選に参加し
 た申請者の後になる
・IDN(ASCII以外の文字を用いたドメイン名)の申請に優先権を与える

今後も新gTLDプログラムでは、さまざまな動きがあると見られます。引き続き、
新gTLDプログラムの動向に注目が集まりそうです。

▼Trademark Clearinghouse

「Trademark Clearinghouse」は、新gTLDプログラムにおいて、商標権の侵害
を意図する第三者によるドメイン名登録からの防衛を目的として設けられる
データベースです。

2012年6月1日にICANNがTrademark Clearinghouseの実施事業者の選定結果を発
表したものの、その後の実現に向けた見通しが示されていない状況でした。そ
の後、2012年10月14日に行われた「GNSO Working Session」において、新CEO
のChehade氏は、「現行のICANN案はコミュニティからの支持を十分に得ていな
い」との判断を下し、仕様案の見直しを決定しました。

Chehade氏は、Trademark Clearinghouseの検討における混乱状況の解決
を当面の最重要課題として取り組むという方針を明らかにし、ICANN理事会も
この方針を支持しました。近日中に、更新された仕様案がICANNから提示され
るとみられており、新提案に対するパブリックコメント募集が行われることが
期待されています。

▼Uniform Rapid Suspension導入の状況について

Uniform Rapid Suspension(以下、URS)は、商標権を侵害したドメイン名が
発見された場合に、その商標の権利者が当該ドメイン名の利用を早期に凍結す
ることができるシステムとして、ICANNが導入を計画しているものです。

しかし、当初、ICANNが計画していたコストではURSの実装が不可能であること
が明確となり、URSの構想そのものが危うい状態になっていました。

会期中に開催されたワーキングセッションにおいて、3組織が規定のコスト
(500米ドル)に収まる提案を行いました。既に提案を行っている1組織と合わ
せて、計4組織がプロバイダーの募集に応募する可能性があります。今後、
2013年2月までに、ICANNが応募組織の中からURSを実装するプロバイダの選定
を行う可能性が高いとみられています。

     ◇           ◇           ◇

■次回のICANN会合

次回の第46回ICANN会合は、2013年4月7日から11日にかけて中国の北京で開催
される予定です。

◎関連URI

 - ICANN 45 | 14-18 October 2012 | Canada
  http://toronto45.icann.org/
  (ICANNトロント会合公式ページ)

 - ICANN | IDN ccTLD Fast Track Process - News and Announcements
  http://www.icann.org/en/topics/idn/fast-track/announcements-en.htm
  (IDN ccTLDファストトラックプロセスに関するICANNのニュースページ)

 - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
  http://ccnso.icann.org/workinggroups/
  (ccNSOのワーキンググループ紹介ページ)

 - DNSSEC - SIDN ::: SIDN.nl
  
  (SIDNのDNSSECについてのページ)

 - myICANN.org
  
  (ICANNのコミュニケーションツール「myicann.org」のページ)

 - Applicants | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/en/applicants
  (新gTLD申請者に向けたICANNのページ)

 - Program Status | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/en/program-status/statistics
  (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ)

 - ICANN | 2012 Announcements
  http://www.icann.org/en/news/announcements
  (ICANNのアナウンス一覧ページ)

 - International Telecommunication Union(ITU)
  http://www.itu.int/en/Pages/default.aspx
  (International Telecommunication Unionのページ)

 - International Telecommunication Regulations(ITR)
  http://www.itu.int/ITU-T/itr/
  (International Telecommunication Regulationsのページ)

 - World Congress on Information Technology(WCIT)
  http://www.wcit2012.org/en/
  (World Congress on Information Technologyのページ)

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