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メールマガジン「FROM JPRS」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2013-08-01━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.134 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ICANNダーバン会合報告 ~ccTLDレジストリ関連の話題と新gTLDプログラムの進捗状況を中心に~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013年7月14日から18日にかけて、第47回ICANN Meetingが南アフリカ共和国の ダーバンで開催されました。 本会合の参加登録者数は約1,800人で、参加登録者のうち南アフリカ共和国の 登録者が約100人になるなど、アフリカ地域からの参加者が多く見られました。 今回のICANN会合では、参加者がプレゼンテーションや質疑応答を聴講するだ けでなく、より能動的な形で議論に参加できる運営形式が目立ちました。例え ば、今回開催された「Creating a New ICANN 5-Year Strategic Plan(新しい ICANN5カ年戦略計画の作成)」というプログラムでは、参加者を10人程のグ ループに分けてディスカッションを実施し、その結果を報告しあう形式が採用 されました。また、そのディスカッションの結果が会場内の掲示板で共有され るなど新たな試みも実施されました。 今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。なお、 DNSSECワークショップなどの技術系のセッションについては、別号にて報告す る予定です。 (1)ccNSOに関連した話題から - ccTLDからICANNへの財政的貢献 - IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討の状況 - ICANNとccTLDによるラウンドテーブル (2)IDN Variant TLD Program - IDN Variant TLD Programの状況 (3)その他の内容・議論から - ICANN構造改革の進捗状況 - 新gTLDレジストリ契約について - 2013年版レジストラ認定契約について ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (1)ccNSOに関連した話題から ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ccTLDからICANNへの財政的貢献 ccNSO(*1)ではこれまで、ICANNに対するccNSOからの財政面での貢献につい て、具体的にどの程必要なのかという根拠を検討してきました。その根拠を検 討するにあたり、ICANNが実施しているccNSOへのサポートを以下の三つに分類 しています。 1.IANA機能を利用したccTLDの運用サポート 2.ICANN会合時の会場提供など、間接的なサポート 3.ICANNスタッフによるccNSO活動のサポート (*1)ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体として、 ICANNの他の支持組織や委員会などと協調しながらccTLD全体にまたが るグローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告 を行う役割を担います。 このうち、三つ目のICANNスタッフによるccNSO活動のサポートについては、 各ccTLDで実施しているIGFに関連した活動などを通した知見がICANNに共有さ れることでICANN側の利益ともなっており、ccNSOが負担する費用としては計上 すべきでないという合意がなされていました。 前回の北京会合では、残りの二つに関する費用として約350万米ドルが妥当で あるとし、本件を検討するWGから提示された、各レジストリが管理するドメイ ン名数に対応させた支払額のモデル案について議論が行われました。 今回の会合では、ccTLDレジストリから寄せられた意見を参考に作成された新 たなモデル案について、活発な議論が展開されました。今回の案では前回のも のと比べ、ドメイン名の登録件数が少ないレジストリの負担額が少なくなって いるのが特徴です。 会合ではメンバーから、このモデルがccTLDレジストリにICANNへの支払いを強 制するものとなるのかという懸念が示されました。これに対しWGからは、今回 提示した支払額のモデルはあくまでもガイドラインであり、ICANNに対して財 政面から貢献を実施するかどうかは各ccTLDレジストリの判断に任されるべき であるとの回答がなされました。 WGでは今回の議論をもとに、支払額のモデル案についての検討を継続していく 予定です。 ▼IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討の状況 ICANNではこれまで、IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリシー策定 プロセス(PDP)(*2)」の検討が行われてきました。IDN ccTLDの文字列や委 任に関する検討はIDN PDP WG1で、IDN ccTLD導入に際して必要となるICANN定 款見直しの検討はIDN PDP WG2で進められてきました。JPRSはWG1にメンバーと して参加し、WG2ではJPRSの堀田博文が議長を務めています。 (*2)ICANNの役割の一つに、インターネット資源の調整業務に関連するポリ シー策定があり、このポリシー策定のための一連の流れをPDP (Policy Development Process)と呼びます。 各WGでの議論は既に収束しており、検討結果をまとめたそれぞれの文書が ccNSO評議委員会にて採択されています。 当初の予定ではその後の流れとしてccNSOメンバーによる投票を経たのち、 IDN ccTLDに関する恒久的ルール(ccPDP)及びccNSOに関するICANN定款の変更 を、ICANN理事会に提案する予定となっていました。しかし、2013年5月から6 月にかけて実施されたccNSOメンバーによる投票が65票と定足数(ccNSO会員数 の過半数。投票実施時点では68票)に満たなかったため成立せず、2013年7月 下旬から8月中旬にかけ、メンバーによる再投票が実施されることとなりまし た。ccNSO では、ccNSOメンバーの連絡先情報の適正化や各メンバーへの投票 の呼び掛けにより、投票への参加をさらに推進していく予定です。 ▼ICANNとccTLDによるラウンドテーブル 現CEO着任後、ICANNではこれまで、ラウンドテーブル(Roundtable:出席者の 序列を定めずに実施する小規模な会議)を、関係業界ごとに開催してきました。 今回のICANN会合では世界各地域のccTLD連合組織を対象としたラウンドテーブ ルが開催され、各地域から代表としてそれぞれ三つのccTLDが参加しました。 アジア太平洋地域の代表として、.jp(日本)、.cn(中国)、.sg(シンガ ポール)の三つのccTLDが参加しています。 会議では、管理ポリシーや運用体制・規模が多様でかつ地理的に分散している 各ccTLDに対し、ICANNの活動やポリシーを周知することや積極的な情報収集を 実施することの難しさが議題となりました。そして、各ccTLDや各地域におけ るccTLDの連合組織とICANNとが相互に協力し、ccTLD全体としての力の強化や グローバル社会への関与を高めていく必要性が共有され、そのための具体策を ICANNとccTLDが協力して作り上げていくことが合意されました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (2)IDN Variant TLD Program ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼IDN Variant TLD Programの状況 「IDN Variant TLD Program」は、DNSルートゾーン用のラベル生成ルール (LGR:Label Generation Rules)を作成するための活動で、非ASCII文字を ルートゾーンに追加するための手続きの策定を目的としたプロジェクトです。 本プロジェクトにはJPRSの米谷嘉朗がIDNの専門家の立場で参加しており、 2013年4月、これまでの活動結果をまとめた最終報告書がICANN理事会で承認さ れ、ルートゾーン用のLGRが完成しました。LGRの完成後、個別の言語や文字列 の追加や異体字ルールの作成に関する生成パネル(Generation Panel)、及び 生成パネルが作成したルールを統合する統合パネル(Integration Panel)の 活動が計画されました。 2013年6月に、生成パネル及び統合パネルのメンバー募集がICANNからアナウン スされました。そして、今回の会合では、中国語、日本語、韓国語(CJK)に 関するIDN Variantを生成する組織的な仕組みの構築に関するキックオフミー ティングをJPRSの堀田博文が召集し、議長を務めました。 このミーティングには、ICANNと本件に関連する各ccTLDレジストリである CNNIC(中国)、JPRS(日本)、KISA(韓国)、TWNIC(台湾)のメンバーが参 加し、議論が進められました。今後、中国語、日本語、韓国語の三つの言語に おいて生成パネルや調整機能(coordination function)を一つにするのか別 々にするのかといった仕組み作りに関する検討を、メンバーであるCNNIC、 JPRS、KISA、TWNICが協働で進めていくことになります。 JPRSでは、日本のインターネットコミュニティや言語の専門家との連携を探る とともに、中国語、日本語、韓国語に関する生成パネルのルール作成に積極的 に参加していく予定です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (3)その他の内容・議論から ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ICANN構造改革の進捗状況 7月15日に開催された「Opening Ceremony」に続く形で行われた 「President's Opening Session」において、ICANNのCEOであるFadi Chehade 氏が「On Track for the New Season」と題したプレゼンテーションを行いま した。プレゼンテーションではICANNが今後注力する取り組みとして、以下の 事項が紹介されました。 1.レジストリ契約やレジストラ認定契約の普及 2.gTLDの次世代WHOIS「Next Generation Directory Service」の検討 3.各ステークホルダーとのさらなる協調 さらに、以下の五つの分野について「ICANN戦略パネル (The ICANN Strategy Panels)」を新設することが発表されました。 1.識別子技術の革新 2.インターネット組織のエコシステムにおけるICANNの役割 3.ICANNのマルチステークホルダーによる革新 4.ICANNが負うべき公的責任の枠組み 5.将来のインターネットガバナンスにおけるICANNの役割 同氏からは、ICANN戦略パネルの活動計画として、2013年9月からオンライン上 でのやり取りや電話会議を通した活動を開始することと、各パネルにおいて必 要に応じた対面での直接的な議論を進めていくという基本方針が示されました。 ICANNでは従来から、ICANN戦略パネルに相当する機能として、 「President's Strategy Committee(PSC)」という形で検討が進められてき ました。今回Chehade氏が示した方針では、インターネットコミュニティに対 しより開かれた形で各課題に取り組み、客観的な意見を広く取り入れていこう とするICANNの姿勢が打ち出されています。各パネルの議長にはDNSの発明者で あるPaul Mockapetris氏やICANN前議長であるVint Cerf氏などが選ばれていま す。 また、ICANNの新しい活動拠点の一つとなるイスタンブールのオフィスへのス タッフの着任が開始されたことや、体制強化のためICANNのスタッフを現在の 130人から200人へと大幅に増員する予定であることなども発表されています。 ▼新gTLDレジストリ契約について 新gTLDレジストリがICANNとの間で締結する新gTLDレジストリ契約(Registry Agreement:RA)について、2013年4月にICANNが契約書案を提示した後、レジ ストリ側のグループであるRegistries Stakeholder Group(RySG)及び新 gTLDプログラムに応募した事業者のグループであるNew TLD Applicant Group (NTAG)の有志とICANNの間で、検討が進められてきました。 2013年7月2日、ICANN理事会は新gTLDレジストリ契約の基本契約書を採択し、 翌7月3日、ICANNは新gTLDの申請者のうち要件を満たす申請者に契約手続きに 必要な情報の提供を要請する案内を送付しました。このうち、7月12日までに 所定の情報をICANNに返送した四つ(3組織)のTLD について、7月15日の Opening Ceremonyにおいて、RAの調印式が行われました。今回の調印式の実施 は会議参加者には直前まで秘密にされており、こうした演出にもレジストリ契 約の普及に対するICANNの力の入れようがうかがえます。 ▼2013年版レジストラ認定契約について 2013年6月27日、ICANN理事会は認定レジストラが新gTLDの取次を行うために必 要となる2013年版レジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement: RAA)を採択しました。これを受けて、新gTLDレジストリ契約と同様、7月15日 のOpening Ceremony内にてRAAの調印式が行われました。今回の調印式におい て、ICANNは5組織との契約に調印しています。 今後、新gTLDプログラムの進行に伴い、RAやRAAのプロセスが進められている ことになります。しかし、新gTLDプログラムのプロセスには現在も未決事項が 数多く残っており、引き続き、今後の動向に注目が集まっています。 ■次回のICANN会合 次回の第48回ICANN会合は、2013年11月17日から21日にかけてアルゼンチンの ブエノスアイレスで開催される予定です。 ◇ ◇ ◇ ◎関連URI - ICANN 47 | 14-17 July 2013 | South Africa http://durban47.icann.org/ (ICANNダーバン会合公式ページ) - IDN ccTLD Fast Track Process | ICANN http://www.icann.org/en/resources/idn/fast-track (IDN ccTLDファストトラックプロセスに関するICANNのページ) - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation http://ccnso.icann.org/workinggroups/ (ccNSOのWG紹介ページ) - IDN Variant TLDs | ICANN http://www.icann.org/en/resources/idn/variant-tlds (IDN Variant TLD Programに関するICANNのページ) - Call for Generation Panels to Develop Root Zone Label Generation Rules http://www.icann.org/en/news/announcements/announcement-11jul13-en.htm (生成パネル及び統合パネルのメンバー募集のアナウンスページ) - Program Status | ICANN New gTLDs http://newgtlds.icann.org/en/program-status (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ) - Applicants | ICANN New gTLDs http://newgtlds.icann.org/en/applicants (新gTLD申請者に向けたICANNのページ) - Announcements for 2013 | ICANN http://www.icann.org/en/news/announcements (ICANNのアナウンス一覧ページ) - Explore the Draft Next Generation gTLD Directory Services Model | ICANN http://www.icann.org/en/news/announcements/announcement-3-24jun13-en.htm (「Next Generation Directory Service」に関するページ) - ICANN Strategy Panels Launched | ICANN http://www.icann.org/en/news/announcements/announcement-15jul13-en.htm (ICANN戦略パネル発足についてのアナウンスページ) 登録に心当たりのない方、今後配信を希望されない方は 下記をクリックしてください。登録が解除されます。 http://from.jprs.jp/d.x?u=382&k=b778AD ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━ ■会議報告:http://jprs.jp/related-info/event/ ■配信先メールアドレスなどの変更:http://jprs.jp/mail/henkou.html ■バックナンバー:http://jprs.jp/mail/backnumber/ ■ご意見・ご要望:from@jprs.jp 当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、 ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。 また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、 リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに ご注意ください。 その他、ご利用にあたっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。 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