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メールマガジン「FROM JPRS」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2013-12-19━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.139 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ICANNブエノスアイレス会合報告 ~ccTLDレジストリ関連の話題とインターネットガバナンスを中心に~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013年11月17日から21日にかけて、第48回ICANN Meetingがアルゼンチンのブ エノスアイレスで開催されました。 本会合の参加登録者数は約1,800名で前回のダーバン会合とほぼ同数でしたが、 地域ごとに見た場合地元ラテンアメリカ圏の参加者が大幅に増えており、また 北米からの参加者も多く見られました。 今回の会合を通じての話題の中心はインターネットガバナンスであり、多くの 関連セッションが設けられました。また、前回に引き続き新gTLDプログラムが 参加者の関心を集めました。 今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。 (1)ccNSOに関する話題から - ccTLDレジストリからICANNへの財政的貢献について - セキュリティ上の問題に関する関係者間の連携について (2)IDN Variant TLD Program - IDN Variant TLD Programの状況 (3)その他の内容・議論から - マルチステークホルダーモデルの重要性について - ローカルコミュニティの関与について - 新gTLDプログラムの進捗状況について ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (1)ccNSOに関する話題から ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ccTLDレジストリからICANNへの財政的貢献について ccNSO(*1)ではこれまで、ICANNに対するccNSOからの財政面での貢献につい て議論を重ねてきました。前回のダーバン会合では各ccTLDレジストリが支払 う会費を、管理するドメイン名数に対応させる支払額モデル案について活発に 意見が出されました。 (*1)ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体として、 ICANNの他の支持組織や委員会などと協調しながらccTLD全体にまたが るグローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告 を行う役割を担います。 今回の会合では、会費支払いのモデル案について、最終的な確認が行われまし た。ccTLDコミュニティによるこれまでの議論とパブリックコメントによって 内容が磨かれてきたこともあってか、前回の会合で提示された内容から変更は ありませんでした。 本内容は11月20日のccNSO評議委員会にて承認され、今後ccTLDレジストリが負 担する額のガイドラインとなります。 ▼セキュリティ上の問題に関する関係者間の連携について 2013年10月13日にコスタリカ(.cr)で発生したセキュリティインシデント (*2)を基に、事象発生時の対応状況とそれにより得られた知見(他のccTLD への推奨事項)が発表・共有されました。 (*2)レジストリのWebページに存在した脆弱性が悪用され顧客のアカウント が不正使用された結果、google.crなど八つのドメイン名の登録情報が 不正に書き換えられました。 発表では、インシデント発生時のICANN Security TeamやローカルCSIRT(*3) との連絡、公開用文書の作成、メディア対応、顧客への連絡などの状況につい て共有されました。その後、インシデント発生時に考慮すべき事項として、顧 客への連絡における即時性と透明性、ICANN Security TeamやローカルCSIRTと の連携、対メディア戦略の事前策定、組織内における対応手順の事前確立の重 要性などが挙げられました。また、正しい情報発信の重要性と、一度不正確な 情報を発信してしまった場合の情報訂正の難しさが参加者の間で共有されまし た。 (*3)Computer Security Incident Response Teamの略称。 セキュリティインシデントを前提とした対応チーム/機能として組織内 に設置され、問題の監視や問題発生時の原因解析、影響範囲の調査など を実施します。JPCERT/CCは日本における代表的なCSIRTの一つです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (2)IDN Variant TLD Program ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼IDN Variant TLD Programの状況 「IDN Variant TLD Program」は、DNSルートゾーン用のラベル生成ルール (LGR:Label Generation Rules)を作成するための活動で、非ASCII文字を ルートゾーンに追加するための手続きの策定を目的としたプロジェクトです。 本プロジェクトにはJPRSの米谷嘉朗がIDNの専門家の立場で参加しており、 2013年4月、これまでの活動結果をまとめた最終報告書がICANN理事会で承認さ れ、ルートゾーン用のLGR(以下、Root LGR)が完成しました。 今回の会合では、ICANNがIDN Variant TLDに関連して推進している三つのプロ ジェクト ・Root LGR(Label Generation Rules) ・LGR Tools ・User Experience Study の最新状況の紹介と、個別の言語や文字列の追加、異体字ルールの作成に関す る生成パネル(Generation Panel)の事例紹介が行われました。Root LGRにつ いては、2013年10月に各言語の生成パネルが作成したルールを統合する統合パ ネル(Integration Panel)が設立され、生成パネルとして四つ(アラビア文 字、中国語文字、キリル文字、ブラーフミー系文字)が設立されたことが紹介 されました。 LGR Toolsについては、Root LGRからテーブルを生成するツールの仕様と、既 存の言語テーブル(各TLDがIANAに登録しているIDNテーブル)のフォーマット をXMLに変換するツールが紹介されました。 生成パネルの事例については、TWNIC理事のKenny Huang氏が、中国語、日本語、 韓国語(CJK)生成パネルの進め方を紹介しました。まずそれぞれの言語コ ミュニティが個別に言語生成パネルを設立し、ローカルな課題をそこで議論・ 解決して言語LGR案を作成し、次にそれを基にCJK生成パネルで文字がオーバー ラップする部分について調整することが提案されたというものです。各言語生 成パネルは調整の結果を反映した言語LGRを統合パネルに提出します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (3)その他の内容・議論から ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼マルチステークホルダーモデルの重要性について 今回の会合ではICANN CEOのFadi Chehade氏がさまざまなセッションでマルチ ステークホルダーモデルの重要性を訴え、多くの参加者の関心を呼んでいまし た。同氏のスピーチの内容は一貫して、2013年10月7日にインターネットの技 術調整を行う10団体(IAB、ICANN、IETF、ISOC、W3Cと五つの地域インター ネットレジストリ)によって発表された「今後のインターネット協力体制に関 するモンテビデオ声明(以下、モンテビデオ声明)」に関連したものでした。 ICANNそのものの重要性が増すにつれ、従来からのICANNの役割であるインター ネット資源管理に関する調整のみにとどまらず、インターネットガバナンスに 関連するさまざまな項目がICANNにおける検討課題として認識され始めていま す。これを受けICANNでは、関連する議論により広い範囲で関わる方向性を打 ち出しています。 ICANNでは、インターネットガバナンスに関する議論は政府主導ではなく、全 てのステークホルダーからの意見を反映可能なマルチステークホルダーモデル で行われる必要があるとしています。具体的には、モンテビデオ声明を受けて 設置された「1net.org」http://1net.org/とそのメーリングリストを通じて、 マルチステークホルダーモデルによる議論を促進しようとしています。 ▼ローカルコミュニティの関与について 今回の会合では、Public Forumの一部でスペイン語を母語とする理事が議事進 行を担ったことも特徴の一つでした。ICANN会合では、マイクの前での発言者 が「おなじみの顔」ばかりになりがちであるため、現地の言葉を用いることで ローカルコミュニティからの発言者をできるだけ増やそうという狙いがあると 考えられます。しかし、結果的には地元アルゼンチンのユーザー系団体からの 発言が相次ぎ、制限時間を超えてICANNコミュニティ全体の関心事とは言えな い主張を行う場面なども見られました。 また、これまでPublic Forumにおける次回会合の紹介プレゼンテーションは ローカルホストの組織が行うのが通例でしたが、今回の会合では次回の会場と なるシンガポールに設置されたICANNオフィスのスタッフによって行われまし た。また、現時点で次回の会合にはローカルホストが設けられていないといっ た、今後のICANNミーティングの開催方法に関する変化の予兆も見られました。 ▼新gTLDプログラムの進捗状況について 11月21日のPublic Forumの中で「ブランドTLD」の申請組織の有志によって結 成されたBrand Registry Group(BRG)のChairから、新gTLDレジストリ契約 (Registry Agreement:RA)におけるブランドTLDの定義と、当該のgTLDがブ ランドTLDであった場合に特定の条項の読み替えを行う旨を明記した 「Specification 13」を追加する交渉がICANNスタッフとの間で大筋合意に達 した旨の発言がありました。Specification 13は、ブランドTLDの場合に、RA 締結によってレジストリとなる組織が負う義務事項を変更することで、ブラン ドの信頼性を向上・維持させることを目的としたものです。BRGとICANNとの間 での合意を受け、ICANNは12月6日にSpecification 13を追加することについて のパブリックコメント募集を開始しました(募集期間:2014年1月31日まで)。 データエスクローエージェントの認定については、11月18日に開催されたgTLD Program Updateにおいて、認定済みの2社に加えて4社が審査中であるとの報告 がICANNスタッフから補足されました。 ICANNとの間でRAを締結した新gTLD申請組織の増加に伴い、 GNSO(Generic Names Supporting Organization)のRegistries Stakeholder Group(RySG) の正式メンバーが増えてきています。11月19日に行われたRySG Meetingでは、 今後のRySGのあり方を検討する「RySG Evolution Working Group」からの中間 報告も行われました。今後、会員が大幅に増えることが想定されるRySGのあり 方については、引き続き議論・検討が行われることになります。 ■次回のICANN会合 次回の第49回ICANN会合は、2014年3月23日から27日にかけてシンガポールで開 催される予定です。 ◇ ◇ ◇ ◎関連URI - ICANN 48 | Buenos Aires http://buenosaires48.icann.org/ (ICANNブエノスアイレス会合公式ページ) - IDN ccTLD Fast Track Process | ICANN http://www.icann.org/en/resources/idn/fast-track (IDN ccTLDファストトラックプロセスに関するICANNのページ) - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation http://ccnso.icann.org/workinggroups/ (ccNSOのWG紹介ページ) - IDN Variant TLDs | ICANN http://www.icann.org/en/resources/idn/variant-tlds (IDN Variant TLD Programに関するICANNのページ) - Montevideo Statement on the Future of Internet Cooperation | ICANN http://www.icann.org/en/news/announcements/announcement-07oct13-en.htm (モンテビデオ声明に関するICANNのページ) - /1Net Discussion Group http://1net.org/ (モンテビデオ声明を受けて設置された1Net Discussion Groupのページ) - Program Status | ICANN New gTLDs http://newgtlds.icann.org/en/program-status (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ) - Applicants | ICANN New gTLDs http://newgtlds.icann.org/en/applicants (新gTLD申請者に向けたICANNのページ) - Announcements for 2013 | ICANN http://www.icann.org/en/news/announcements (ICANNのアナウンス一覧ページ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━ ■会議報告:http://jprs.jp/related-info/event/ ■配信先メールアドレスなどの変更:http://jprs.jp/mail/henkou.html ■バックナンバー:http://jprs.jp/mail/backnumber/ ■ご意見・ご要望:from@jprs.jp 当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、 ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。 また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、 リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに ご注意ください。 その他、ご利用にあたっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。 http://jprs.jp/mail/kiyaku.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) http://jprs.jp/ Copyright(C), 2013 Japan Registry Services Co., Ltd.