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メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.141

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2014-04-18━
          ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.141 ◆
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           ICANNシンガポール会合報告             
    ~ccTLDレジストリ関連の話題と新gTLDプログラムを中心に~     
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2014年3月23日から27日にかけて、第49回ICANN Meetingがシンガポールで開催
されました。参加登録者数はアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた前回
会合の約1,800人とほぼ同規模で、アジア・東南アジアを中心としたアジア地
域からの参加者が多く、4月23、24日に開催される予定の「インターネットガ
バナンスに関するブラジル会合(NETmundial)(*1)」の関係者も多く見られ
ました。

(*1)全コミュニティがグローバルなマルチステークホルダーによる協力体制
      の発展に向けた検討を行う会議で、インターネットガバナンス原則とイ
      ンターネットガバナンス体系の更なる発展に向けたロードマップを主要
      テーマとしています。

本会合のオープニングセレモニーでは、ICANNのアジア地区におけるVice 
PresidentであるYu-Chuang Kuek氏が「Info Society Innovation Fund
(ISIF)」を始めとする発展途上国へのサポート活動の紹介を行いました。
また、ICANN CEOのFadi Chehade氏がAPRALO(アジア太平洋地域のAt-Large
Organization)のセレモニーでスピーチを行うなど、市民社会の声に積極的に
耳を傾けていこうとするICANNの姿勢をアピールしていました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

(1)ccNSOに関する話題から
    - インターネットガバナンスに関する議論
    - セキュリティに関する取り組み
    - ICANN会合の開催形態変更に関する検討

(2)新gTLDプログラムに関する話題から
    - ブランドTLDを規定する「Specification 13」の採択
    - TLD運用関連セッションの開催
    - EBEROの追加募集

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(1)ccNSOに関する話題から
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▼インターネットガバナンスに関する議論

インターネットガバナンスに関連したセッションは、会合全体を通じて数多く
設けられました。ccNSOでも中核のテーマとなりましたが、ICANN全体とは議論
の対象が以下のように異なっているのが特徴的でした。

ICANN全体では、

  ・現在米国商務省電気通信情報局(NTIA)が契約主体となっているIANA(*2)
    やルートゾーン管理に関する契約の移行
  ・IANAのオペレーションに関してNTIAが果たしている役割(IANAの機能遂行
    状況の監督、TLDの委任(delegation)可否判断など)の移行

といった「IANA transition」が主な話題の一つでした。また、

  ・ポリシー検討に際し、より広いマルチステークホルダーからの意見の収集
  ・ICANNの活動をマルチステークホルダーに対してより責任を持つ形にする
    体制の検討

といった「ICANN globalization」についても主要な話題となりました。その
中で、日々の運用とポリシーの策定が一つの組織に存在する現在のIANAからポ
リシー策定機能を別の組織に分離して担わせるという提案が活発な議論を呼ん
でいました。

(*2)Internet Assigned Numbers Authorityの略称。現在はドメイン名、IP
      アドレス、プロトコル番号などのインターネット資源を管理するICANN
      の一機能として運用されています。

一方でccNSOでは、TLDの委任(delegation)、再委任(re-delegation)、委
任終了(retirement)時にNTIAが担っている役割の移行が主な議論の対象とな
りました。

ccNSOではgTLDと異なり、Framework of Interpretation(FoI)Working Group
(WG)によりTLDの委任、再委任、委任終了に関する独自のフレームワークを
検討しています。これはIANA機能に関するICANNと米国政府間の契約において、
ccTLDとIANAが非常に軽い関わりであることを背景としたものです。しかし、
今回の移行に関するICANN全体の議論の中で、ccTLDレジストリにも影響を及ぼ
すポリシーが策定されることが懸念されています。ccNSOでは、コミュニティ
全体での議論に参加しつつ、ccTLD特有の観点も取り入れてIANA transitionに
関する案を作成し、ccNSOメンバー内でレビューを行うことが合意されました。

▼セキュリティに関する取り組み

セキュリティ関連では、インシデント発生時の対応やドメイン名の悪用への対
応についての取り組みが紹介されました。

ドメイン名やDNSなどに関するインシデント発生時にccTLD間で情報を共有でき
るようにするための最初の取り組みとして、2014年5月頃までに連絡用のメー
リングリストを作成することが検討されています。メーリングリストの作成・
運用が行われた後、適宜活動の拡大についての検討を進めていく予定であり、
JPRSからも斉藤仁がContact Repository Implementation WGにメンバーとして
参加しています。

ドメイン名の悪用防止の施策として、SGNIC(.sg)からは、政府が個人に対し
て発行するID(Singapore Personal Access)を活用した本人確認の実施が紹
介されました。また、ロシアでは国内のISP及び関連企業と連携して悪用され
ているドメイン名を収集・廃止した結果、その数が3万件に上ったことが紹介
されました。

▼ICANN会合の開催形態変更に関する検討

ICANN会合の参加者は2006年には約800人の規模でしたが、最近では約1,800人
規模にまで増加しており、開催地の用意やローカルホストの負担の増加が問題
となってきています。この状況を踏まえて、Meeting Strategy WGから現在年3
回開催されている会合について、以下の通り開催内容に変化を付けることが提
案されました。

  ・1回目:現状と同規模
  ・2回目:Supporting Organization、Advisory Committeeの活動中心
  ・3回目:現状と同規模、年次総会

今後、この提案は意見募集を経て更に検討がなされ、2016年開催分より適用さ
れる見込みとなっています。

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(2)新gTLDプログラムに関する話題から
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▼ブランドTLDを規定する「Specification 13」の採択

前回のブエノスアイレス会合におけるBrand Registry Group(BRG)とICANNの
折衝を受け、2013年12月6日に「ブランドTLD」を規定する「Specification 13
(案)」が公開され、2014年1月31日までパブリックコメントの募集が行われ
ました。

Specification 13は、レジストリオペレーター自身またはそのグループ会社な
どのみに登録者及び利用者が限定される「ブランドTLD」の場合には、従来の
不特定多数のドメイン名登録者の存在を前提に登録者を保護するために設け
ている各種規定の遵守義務を軽減することで、「ブランドTLD」を円滑に運用
できるようにするものです。

「ブランドTLD」として契約することで、「レジストリ行動規範」の適用が除
外されたり、「ブランドTLD」である限りサンライズ登録期間が免除されると
いったメリットがあります。

パブリックコメントを受けての最終案は3月14日に公開され、3月26日のICANN
理事会(New gTLD Program Committee)で採択されました。なお、本会合後の
4月14日に「ブランドTLD」の手続き方法が案内され、同時に受け付けも開始さ
れました。

Specification 13の制定を主導したBrand Registry Group(BRG)のICANNコ
ミュニティ内での認知度が高まってきており、新gTLDの半分以上を占めること
が見込まれている「ブランドTLD」の意見を代表するグループとして、BRGが
gTLDのポリシー策定にどのように関与していくのかに注目が集まりつつありま
す。

▼gTLD運用関連セッションの開催

新gTLDレジストリ契約(Registry Agreement:RA)の締結及び委任プロセス中
の申請者や、それらを完了し登録サービスを開始したgTLDが増えてきたことも
あり、今回の会合ではこれまで主流であった申請者向けの情報提供よりも、登
録サービスの開始に向けたICANNとの間の手続きの詳細説明、また、レジスト
リオペレーターに対してICANNが求める各種遵守事項への対応方法や監査への
対応方法など、より実務的なセッションが多く開催されました。

一方で、RAの遵守を要求されながらも、その方法や報告様式については未制定
の事項も多く残っており、セッション中に多くの質問や問題提起が行われ、
ICANNスタッフ側から「順次対応する」という言葉を引き出す場面も多く見ら
れました。

▼EBEROの追加募集

ICANNは、Emergency Back-End Registry Operator(EBERO)の地理的及び法域
の多様性を担保することを理由として、本会合中のセッションにて追加募集を
行う旨を明らかにしました。ICANNでは今後、2014年4月に提案を募集し、6月
には選定を行いたいとしています。

■次回のICANN会合

次回の第50回ICANN会合は、2014年6月22日から26日にかけて英国のロンドンで
開催される予定です。

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◎関連URI

 - ICANN 49 | Singapore
  http://singapore49.icann.org/
  (ICANNシンガポール会合公式ページ)

 - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
  http://ccnso.icann.org/workinggroups/
  (ccNSOのWG紹介ページ)

 - Program Status | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/en/program-status
  (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ)

 - Applicants | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/en/applicants
  (新gTLD申請者に向けたICANNのページ)

 - Announcements | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/en/announcements-and-media/latest
  (新gTLDプログラムに関するICANNのアナウンス一覧ページ)

 - Announcements for 2014 | ICANN
  http://www.icann.org/en/news/announcements
  (ICANNのアナウンス一覧ページ)

 - Net Mundial | Global Multistakeholder Meeting on the Future of 
    Internet Governance
  http://netmundial.br/
  (NETmundial公式ページ)

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