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メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.150

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2015/04/09━
                    ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.150 ◆
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                 APTLD福岡会合・APRICOT-APAN 2015報告
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2015年2月24日から3月6日にかけて、APRICOT-APAN 2015が福岡で開催されまし
た。また、2月26日から27日の2日間、APTLD(Asia Pacific Top Level Domain
Association)の会合が同地で開催されました。

APRICOT(Asia Pacific Regional Internet Conference on Operational 
Technologies)は、アジア太平洋地域におけるインターネットインフラの発展
のため、必要な知識や技術の向上を目指し開催される非営利のフォーラムです。
APAN(Asia-Pacific Advanced Network)は、同地域における学術ネットワー
クプロジェクトの相互接続を調整する非営利の団体で、ネットワーク基盤から
応用までの幅広い情報を共有しながら研究・発表活動を行ってきています。今
回はこの二つの国際会議がAPRICOT-APAN 2015として共同で開催され、アジア
太平洋地域のインターネットにさまざまな形でかかわる800人超の参加者が福
岡に集いました。

APTLDはアジア太平洋地域のccTLD連合組織で、現在JPRSを含む39のccTLDレジ
ストリが会員となっています。APTLD会合は、年に2~3回、アジア太平洋地域
諸国で開催され、技術動向やセキュリティ、マーケティングなどについての発
表や議論が行われており、今回の会合には63名が参加しました。

これらのイベントが日本で開催されるということで、JPRSはAPRICOT-APAN
2015に協賛するとともに、APTLD会合ではローカルホストを務めました。

今回のFROM JPRSでは、今回開催された一連のイベントの模様を報告します。

(1)APTLD会合に関する話題
       - ドメイン名・DNSデータの利用に関する取り組み
       - ウェブサイトの安全性証明に関する取り組み
       - その他の話題

(2)APRICOTカンファレンスに関する話題
       - オープニングセレモニーと全体会議より
       - DNSに関する話題
       - ライトニングトーク
       - APOPS
       - DNS Abuse Handlingチュートリアル
       - JANOGセッション

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(1)APTLD会合に関する話題
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APTLD会合では、会員の各レジストリからそれぞれが実施している施策につい
て紹介されました。

▼ドメイン名・DNSデータの利用に関する取り組み

.ru(ロシア)からは、ドメイン名・DNSデータの利用に関する取り組みについ
て発表があり、レジストリが管理する「ゾーンファイル」「登録者情報」「レ
ジストラID」などのデータを公開していることが紹介されました。また、ドメ
イン名に関する統計情報を収集・分析するサービス(http://tldstat.com/)
の展開や、関連企業・団体などと協力して、.ruやその国際化ドメイン名
(.рф)、.su(旧ソ連)の各ドメイン名が安全に使われているかを調べる
サービス(http://www.netoscope.ru/en/)が紹介されました。

▼ウェブサイトの安全性証明に関する取り組み

.lk(スリランカ)からは、2014年よりTLDレジストリが登録組織のウェブサイ
トを定期的にスキャンし、マルウェアなどがないかを確認の上、安全性を証明
するマークを発行するというサービス(http://www.verifiedweb.lk/)が紹
介されました。

▼その他の話題

セキュリティに関しては、DNSSECの導入など各レジストリでの取り組みが発表
されました。.sg(シンガポール)や.vn(ベトナム)では、.jpなどDNSSEC導
入が早かったccTLDの過去の取り組みを参考に、DNSSECの本格導入に向けた試
行を繰り返しているという状況が報告されました。

また、インターネットコミュニティで大きな話題となっているIANA監督権限の
移管(IANA Stewardship Transition)や、2015年2月に開催されたICANNシン
ガポール会合でのインターネットガバナンスに関する話題のインプットなど、
インターネットポリシー関連のセッションも多数設けられました。

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(2)APRICOTカンファレンスに関する話題
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▼オープニングセレモニーと全体会議より

オープニングセレモニーと全体会議(プレナリー)では、今回のAPRICOTは
APNIC 39でもあり、1995年のAPNIC 1から20周年となる歴史ある会合であるこ
とが、APIA(*1)議長のPhilip Smith氏から紹介されました。

(*1)Asia Pacific Internet Associationの略称(https://www.apia.org/)。
      アジア太平洋地域のインターネット技術・運用コミュニティの支援・開
      発を目的として、1997年に設立された非営利団体。

オープニングセレモニーでは基調講演として、ICANNのElise Gerich氏から
「ABCs of Number Allocation」と題した、1990年代にCIDR(*2)が導入され
る以前の番号(IPアドレスとAS番号)資源管理の状況が発表されました。講演
では、その後の世界的なIPアドレス管理体制の構築につながる日本へのブロッ
ク単位でのIPアドレスの割り当てなど、さまざまな興味深い歴史が取り上げら
れました。

(*2)Classless Inter-Domain Routingの略称。IPアドレスを任意のブロック
      単位で区切られるようにすることで、利用の効率化と経路情報の集約
      (aggregation)を図るための技術。

▼DNSに関する話題

DNS関連の話題を取り扱うDNSセッションでは、現在インターネットで問題に
なっているDNS水責め(DNS Water Torture)攻撃とその対策が取り上げられま
した。

まず、米国Nominum社のBruce Van Nice氏から、DNSに対するDDoS攻撃の現状と
状況分析が紹介されました。水責め攻撃と考えられるDNS問い合わせが不正な
DNS問い合わせ全体の約80%を占めていること、欠陥を持つホームルーターに
代表されるオープンDNSプロキシーや、Botnetを悪用した攻撃が増えているこ
となどが説明されました。

次に、ISCのEddy Winstead氏から、DNS水責め攻撃の原理とキャッシュDNSサー
バー側で取りうる対策、同社が開発を進めているBIND 9におけるDNS水責め攻
撃の効果軽減のための新機能の概要が紹介されました。

また、APNICのGeoff Huston氏からは、インターネット利用者の国や地域ごと
のリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)の利用状況の調査結果が発表されま
した。公開DNSサービスではGoogle Public DNSのシェアが最も高く、特定の国
や地域の利用者が検閲の回避や不安定なサーバーの代替などを目的として、
Google Public DNSを利用している状況が解説されました。

▼ライトニングトーク

現在取り組みを進めているさまざまな話題について短時間で紹介するライトニ
ングトークでは、九州通信ネットワーク(QTNet)の西田圭氏から、実際の運
用経験に基づいたDNS水責め攻撃の状況と防御の現状が説明されました。この
発表は運用現場からの貴重な事例報告であり、注目を集めていました。

▼APOPS

APOPSとはAsia Pacific OperatorS Forumのことで、アジア太平洋地域のネッ
トワーク運用者グループ(NOG)の一つです。今回のAPOPSではBhutan Telecom
のJichen Thinley氏から、ブータン(.bt)のインターネットの歴史が紹介さ
れ、.btのTLDとネットワーク構築の状況が年代ごとに説明されました。また、
新しいサービスとして英国のEsgob LtdのNat Morris氏から、安価にDNSのIP
Anycastサービスを実現できる「Anycast 101」が紹介され、サービスを安価に
実装するためのネットワーク・サーバーの構成について説明されました。

▼DNS Abuse Handlingチュートリアル

今回のAPRICOT 2015では、いくつかのチュートリアルセッションが開催されま
した。「DNS Abuse Handling」と題したチュートリアルでは、ICANNの
Champika Wijayatunga氏から、ドメイン名の不正使用など、DNSが関連する何
らかの迷惑行為が発生した場合の調べ方などが紹介され、DNS全般の基礎知識
からWhois・digなどの調査方法・ツールの紹介など、初心者にも分かりやすい
形で説明が行われました。

▼JANOGセッション

会期中、唯一の日本語でのセッションとして、JANOGセッションが開催されま
した。セッションでは日本のインターネットトラフィックの現状が全体のテー
マとなり、ISP・IX・CSP(コンテンツ事業者)の各立場から見たトラフィック
の傾向、九州地域におけるアカデミックネットワークとコマーシャルネット
ワーク間の相互接続実現による遅延の改善などの話題が取り上げられました。

■次回の会合

次回の各会合は以下の通り開催される予定です。

  ・APTLD会合     2015年9月8日から9日    インドネシアのジャカルタ
  ・APRICOT 2016  2016年2月16日から26日  ニュージーランドのオークランド
  ・APAN会合      2015年8月10日から14日  マレーシアのサバ

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◎関連URI

  - APTLD Fukuoka, Japan - February 2015 | APTLD
   http://www.aptld.org/content/aptld-fukuoka-japan-february-2015
     (APTLD福岡会合公式ページ)

  - APRICOT-APAN 2015
   http://jp.apricot-apan.asia/
     (APRICOT-APAN 2015公式ページ日本語版)

  - APRICOT 2015 | Home
   https://2015.apricot.net/
     (APRICOT-APAN 2015公式ページ)

  - APAN 39th Conference
   https://www.apan.net/meetings/Fukuoka2015/
     (APAN39公式ページ)

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