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ドメイン名関連会議報告

2003年

ヨーロッパにおける国際化ドメイン名の最新動向

~CENTR IDN Workshop報告~
2003/10/27
2003年10月13日~14日の日程でCENTR(Council of European National Top-Level Domain Registries)第2回IDN Workshopと第3回Administrative Workshopがデンマークの首都コペンハーゲンで開催されました。

CENTRとは.ukや.de等のヨーロッパの国別ドメイン名の管理団体(レジストリ)が中心になり、ドメイン名登録管理に関する情報交換、検討、調整等を行っており、JPRSもAssociate Memberとして参加しています。本稿では、第2回IDN Workshopについて報告します。

IDN Workshopの様子
IDN Workshopの様子(Scandic Hotel, Copenhagen)

国際化ドメイン名(IDN)は、9月のポーランドを皮切りに数日前に、スウェーデンでもサービスが始まるなど、ヨーロッパでも注目されています。そのような中、今回の会合では20のレジストリから約40名が集まり、お互いの活動報告と意見交換を行いました。

日本からは、IDNを導入する上で検討した制度とその経験、IDN環境の整備に関する状況を紹介しました。制度面では、日本語JPドメイン名登録開始時の優先・同時登録、予約語、紛争処理等の制度とその効果を紹介しました。IDN環境面では、IDN用アプリケーション開発ツールであるidnkitの開発と無償配布、InternetExplorer用IDNプラグインi-Navの提供、PCメーカー等へのIDN対応のための働きかけ等の活動に関する報告とそれを受けての課題を提示し、レジストリ間の協力を提案しました。これらに関し、多くの質問を受け、賛同を得、IDNの先駆者として会場の注目を集めました。

以下、IDN Workshopにおける各レジストリからのIDNに関する発表について概要を報告します。

<ドイツ>

.deのレジストリであるDENICは、2004年第1四半期中にIDNの登録を開始すると発表しました。ドイツ語はオーストリア、スイス、ルクセンブルクでも使われている言語であるため、登録に関する制度や利用可能文字等についてそれらの国のレジストリとも協調して検討しています。最初に登録を受け付ける非ASCII文字は、ウムラウトを使った3文字のみの予定です。ドイツ語圏におけるIDNのニーズは高く、登録できる文字が3文字増えるだけにもかかわらず、年内に10万件程度の登録が見込まれているとの報告がありました。

<イギリス>

.ukのレジストリであるNominet UKからもIDNに関する発表が行われました。英語の母国であるイギリスではあるが、レジストリとしては英語以外の言語として、ウェールズ語、スコットランド語、アイルランド語等についても配慮しなければならないということが理由です。2004年前半には登録の受付を開始したいとのことでしたが、国際化ドメイン名に関するコミュニティとのやり取りはまだほとんどないとのことでした。

<イスラエル>

.ilのレジストリであるISOC-ILからはドメイン名の国際化について深く考えさせられる発表が行われました。具体的には、イスラエルで使われるヘブライ語では右から左に記述するため、ヘブライ語ドメイン名の登録を開始しても、利用しにくいのではという点です。またASCIIとヘブライ語の文字を組み合わせたドメインラベルを使うこともできません。IDNはローカルコミュニティーのニーズを満たすためにありますが、イスラエルではそもそもローカルコミュニティーのニーズは何かという議論がされている段階で、IDNの実現にはまだかなり時間がかかることが予想されます。

< Afilias >

.infoのレジストリであるAfiliasもAssociate MemberとしてCENTRに参加していますが、2003年の第4四半期にドイツ語のウムラウト3文字の登録受付を開始すると発表しました。ドイツ語から開始するのは、.infoの全登録のうち約5分の1がドイツ語圏からであるためとのことです。.deと同じく最初はウムラウトを使った3文字のみの登録受付の予定です。優先登録は行わない代わりに、登録後60日間は移転を禁止しDRPにより不正な登録を防止する方策をとるとのことです。

< VeriSign >

.comと.netのレジストリであるVeriSignもAssociate MemberとしてCENTRに参加しています。RACEからpunycodeへの移行に関するICANNとの手続きは調整中で2004年第1四半期には完了する予定と説明されました。また、i-NavプラグインのOutlook、OutlookExpressでの対応はベータテスト中、ドイツ・スペイン・北欧でIDNへのニーズに関する市場調査ではIDNへのニーズが高いという結果が出た、i-Navは世界中で1400万件ダウンロードされている、などが発表されました。そして最後にIDN対応のアプリケーションの開発を促進するためにIDN Software Consortiumを立ち上げることが提案されました。

<その他>

予定されていた発表が一通り終わった後、各レジストリからそれぞれのIDNの進捗に関する簡単な報告が行われました。それによるとスイス・オーストリア・デンマーク・ノルウェー・ハンガリーでは2004年の第1四半期までにサービスを開始する、イタリア・オランダ・フィンランド・ルクセンブルクでは前向きに検討中、スペイン・ギリシア・スロベニアは検討中でサービス開始は未定とのことです。ドイツ語圏と北欧が一歩リードして進んでいるという状況です。

まとめ

最後に、CENTR事務局とJPRSが合同で、次にとるべきステップについてまとめました。それはヨーロッパ各言語の文字テーブルの完成、メールアカウント名、URIにおける技術標準の早期実現、そしてレジストリが連携してアプリケーションベンダーに環境整備を働きかけることです。大筋が合意され、今後はオンラインで詳細をつめていくことになりました。

関連URI



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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