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ドメイン名関連会議報告

2006年

APRICOT 2006 / APNIC 21参加報告

2006/03/16

2006年2月27日から3月2日にかけて、APRICOT 2006がオーストラリアのPerth Convention and Exhibition Centreで開催されました。APRICOT(Asia Pacific Regional Internet Conference on Operational Technologies)は、ネットワーク運用に携わる技術者を対象とした実用的な技術や知識の習得を目指す会議として、毎年2月下旬~3月上旬頃に開催されています。

APRICOTに併設する形で、APNIC OPMも開催されました。APNIC OPM(Asia Pacific Network Information Centre Open Policy Meeting)はアジア太平洋のインターネットコミュニティを対象とした、インターネット関連技術、ポリシーを議論するミーティングです。APNIC OPMでは関連技術毎にSIG(Special Interest Groups)が設けられており、さまざまな議論が行われます。

ここでは、DNS関連のカンファレンスやSIGを中心に会議模様を報告します。

APRICOT Conference DNSセッション


DNSセッションでは、DNSSEC、Anycast DNS、レジストリシステム共同開発に関する3件の発表が行われました。

▼DNSSEC

AfiliasのEdmon Chung氏から.ORGで行われているDNSSECテストベッドの解説が行われました。DNSSECテストベッドは2005年10月31日に開始され、DNSSEC対応のネームサーバおよびEPPベースのゾーン情報登録システムから構成されています。レジストラが参加対象であり、2005年11月23日では3レジストラからDNSSEC実験用に15のドメイン名が登録され、現在ではそれが135に増えているそうです。また、DNSSEC普及のために必要な要素や環境についての考察も解説されました。DNSSECに対する関心は高く、Edmon Chung氏からの解説の後、会場からは、以下のような様々な意見が寄せられていました。

  ・「DNSSECの普及はRootの署名と署名鍵の更新が課題だった。」
  ・「DNSSEC対応のインフラがないことが課題だ。TLDがそれぞれ独立したテストベッドをたくさん作るのは有用ではない。」
  ・「もっと多くの者に利用させる努力が必要だ。」

など

▼Anycast DNS

PCHのBill Woodcook氏からPCHで展開しているDNS用BGP Anycast Network構築を通じて得られたノウハウがいくつか解説され、BGP Anycastでは経由するルータの数が少ない経路が選ばれる傾向にあるので、衛星経由などルータ数は少ないが遅延の大きい経路が選ばれる場合の回避方法や、2つのBGP Anycastサイトが用意され、耐障害性や信頼性に優れた構成方法などが紹介されました。

▼レジストリシステム共同開発

AFNICのStephane Bortzmeyer氏から小国のccTLDが協同で開発しているレジストリシステムが紹介されました。小国のccTLDは十分な資金がなくレジストリ業務の多くがまだ自動化されていないため、採用するモデルやIDN対応など方針の異なるレジストリでも共通で使えるレジストリシステムを共同で開発し、自動化できるようにするプロジェクトを開始したというものです。現在、AFNIC、NIC-CI(象牙海岸)、NIC-MG(マダガスカル)が参加しており、象牙海岸では2006年2月から運用を開始し、マダガスカルも今年中に運用を開始するそうです。このプロジェクトの成果はフリーソフトウェアとするそうですが、まだWebサイトはなく、口コミで参加者を募集している段階です。

APNIC DNS Operations SIG

DNS Operations SIGではAPNICから4件、NIRから1件、TLDから2件の報告が行われました。

▼APNIC

Lame Delegation削除方針適用後の状況、ip6.int廃止プロジェクトの状況、およびAPNICのDNS管理システムロードマップ報告などが行われました。Lame Delegationに関しては、2005年1月に最初の削除を開始後に減少しており効果が見られ、現在はAPNICがホストするセカンダリサービスを検討しているそうです。ip6.int廃止プロジェクトに関しては、現在でもip6.intに5(問合せ/分)程度のトラフィックがあるが、2005年11月と比較すると1/2~1/4程度まで減っており、定期的なアナウンスを行った後の2006年5月末にはip6.intを廃止するという報告がありました。APNICのDNS管理システムロードマップ報告では、2005年10月に発生した逆引きDNS障害へのクレームを受けて検討が行われているシステム変更についての解説が行われました。

▼NIR

JPNICの穂坂俊之氏から、2005年10月に発生した逆引きDNS障害に関して起きた日本国内での混乱と対応、そして日本のコミュニティでまとめられた改善要求が解説されました。上記、APNICから報告されたDNS管理システムロードマップは、これを受けてのものとなります。

▼TLD

DNSSEC登録システムとDNS用Anycast展開の紹介が行われました。DNSSEC登録システムの紹介では、NeuStarのEd Lewis氏から逆引きのDNSSEC対応についての提案と、EPPでリアルタイムにDNSSECのDSレコードを登録システムのデモが行われました。DNS用Anycast展開の紹介では、JPRSの米谷嘉朗がJPRSの調査研究で行っている海外でのDNS用Anycast展開で検討したサイト構築の検討項目と、実際の構築・運用を通じて得られた所見を解説しました。

APNIC Members Meeting


APNIC Members Meeting(AMM)ではAPNICからの報告、他のRIRからの報告、IANAからの報告、SIGからの報告、EC(Executive Committee)選挙、オープンディスカッションなどが行われました。

IANAからの報告では、現在メールで行われているRootゾーンへの変更申請をWebベースで自動化するためのツールの開発が行われていること、また近い将来にRootゾーンをDNSSEC署名することが検討されていることなどが報告されました。

オープンディスカッションでは、2006年2月末から3月頭にかけてWebメディアなどで報道された、中国が漢字TLDを始めたということについて質問が出ました。その質問に対し、CNNICから、中国はICANNでのIDN活動に積極的に参加しており独自に漢字TLDを設けるようなことはしていなく、3年前からブラウザ用のプラグインとして漢字TLDのドメイン名に.CNを補う機能を持ったものを配布しているがそれが今になって報道されたものである、という説明が行われました。

関連URI



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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