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ドメイン名関連会議報告

2006年

APTLDバンコク会合報告

2006/11/24

2006年11月13日と14日、タイのバンコクでAPTLD(Asia Pacific Top Level Domain Association)の総会と理事会が開催されました。APTLDは、アジア太平洋地域のccTLD連合組織で、JPRSを含む27のccTLDレジストリが会員となっています。

今回の会合には15のレジストリから約30名が出席し、ドメイン名登録管理ポリシーと運用に関する情報交換を行いました。また、ICANN(Internet Corporaton for Assigned Names and Numbers)のIDN Program DirectorであるTina Dam氏をゲストに迎え、IDN(国際化ドメイン名)に関する情報共有や議論が行われました。

ここでは、バンコク会合で特に熱心に議論された以下の話題について報告します。

   1. IDNの動向
   2. ccTLDの成長戦略

会議の模様
会議の模様

1. IDNの動向


(1)世界におけるIDNの成長

今会合で行われたVeriSignの発表によれば、2006年第2四半期時点で、.jpを含む35のccTLDと6のgTLDでIDNが導入されており、2005年第1四半期から2006年第2四半期の間に、ccTLDは24%成長、gTLDのIDNは31%成長しました。また、ccTLD、gTLDそれぞれにおけるIDN登録のうち、各62%をアジアが占めています(*1)。さらに、特に.com/.netに関しては、ドイツ、日本、韓国、中国語圏が成長を牽引しています。こうしたことから、IDNに関しては、アジアが大きな成長力を有していることがあらためて確認されました。

(*1)
ccTLDについてはそれぞれのコードが表す国または地域、gTLDについてはWhoisに登録された登録者の住所によって分類

APTLD会員からは、一般に多くの企業は国内向けにビジネスを行っていること、IDNはその視認性の高さから国内ユーザに訴求でき、従ってIDNの浸透がローカルな商取引の活性化に繋がると指摘されました。そして、IDNに期待しており、促進策を検討しているとの発言が複数聞かれました。

(2)TLDへのIDN導入に関する状況

今年に入ってから、TLDへのIDN導入についてICANNで活発に議論されるようになってきました。国や地域によっては、そのTLDラベルも含め、ドメイン名の一部にでもASCII文字を使うことに無理があると言われています。このため、現在ASCII文字のみ認められているトップレベルにおいても、それぞれの言語文字を使用できるようにすべきという要望があります。特に、文章を右から左に書くアラビア語圏、外国語も漢字表記に書き換える中国語圏の人々は、ICANNなどの国際会議でこの要求を強く打ち出しています。

APTLDの会員は、アラビア語圏、中国語圏にも広がっています。このため、ICANNは、APTLDがこうした地域の関係者と交流する重要な場であると位置づけています。

APTLDバンコク会合では、ICANNのTina Dam氏より、TLDへのIDN導入に関する最新動向について説明がありました。ICANNでは、IDN化したTLDの導入試験を10月より実験環境で行っています。具体的には、BIND、リゾルバなどの一連のアプリケーションも含め実際のルートサーバに可能な限り類似させた環境を作り、そこでのルートゾーンに、63文字で構成する仮想のTLD文字列をNSレコードとして挿入するというものです。その中で、リゾルバは問題なく動作したものの、一部のエンドユーザアプリケーションにおいて、既存の標準に基づく形でIDNA(Internationalizing Domain Names in Applications)を実装していない場合に不具合が生じ得ることが認識されたとのことです。実験環境の試験を完了した後は、アプリケーションプロバイダも参加し、様々な言語文字によるTLDを実際のルートに導入する試験が行われる予定です。

こうした状況報告の後には議論が行われ、インターネットの安定性を損なうことのないよう、TLDへのIDNの導入は慎重に行う必要があることが認識されました。


2. ccTLDの成長戦略


今回のバンコク会合では、IDNに続く第2テーマとして、ccTLDの成長戦略が取り上げられました。

ccTLDは、国や地域のインターネットコミュニティの状況やニーズに合わせて登録管理されています。このため、登録管理のモデルやポリシーは多様であり、世界共通の正しい方式があるわけではありません。APTLDにおいても、この件について何らかの結論や統一見解は作られませんでしたが、意見交換が活発に行われました。

議論の中で、成長の鍵となる要素について統一の解が存在しないことが、あらためて確認されました。とはいえ、一般的には、強力なレジストラ(または再販業者)ネットワーク、レジストリ基盤の堅牢性に対する消費者の信頼、成長を妨げることのない必要最小限のポリシーがポイントになりうるという整理もなされました。

ブログ、企業のブランド、電子証明書関連ビジネスなど、ドメイン名はさまざまな用途に利用されるようになってきています。このような中、既存レジストラとのパートナーシップを維持するとともに、これまでのチャンネルが含まれていなかった新たな業界との協力を模索することにより、ドメイン名登録者、利用者への新たな付加価値を提供できると、多くのccTLDが発言していました。

また、国や地域を表すccTLDとしてのアイデンティティの維持、レジストリの信頼性の維持、登録の意欲をくじくことのないポリシーの策定というポイントをどうバランスするかは、各国、地域の事情によって異なります。今回の情報交換で、登録資格要件を設けているccTLD(.jp他多くのccTLD)、誰でも登録できるようにしているccTLD(.cc、.tv他)、一部のドメイン名についてオークションを導入したccTLD(.au、.hk他)など、実に多種多様な事例が存在することが明らかになりました。このように施策はさまざまですが、事例を持ち寄ることによってこれまで把握されなかった共通点、相違点を見いだし、それぞれのccTLDに活かすことができるため、今後もAPTLDで共有していくことが重要であると認識されました。

APTLDは今後も引き続き地域レベルでの技術、運用、ポリシー情報の交換に取り組み、登録管理に関する実務上の連携も強めていくことにしています。次回のAPTLD会合は、2007年2月にインドネシアで開催される予定です。


本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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