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ドメイン名関連会議報告

2007年

APTLDバリ会合報告

2007/03/13

APTLD(Asia PacificTop Level Domain Association)のミーティングが、2007年2月25日から27日にかけて、インドネシアのバリ島で開催されました。APTLDは、アジア太平洋地域のccTLD連合組織で、現在JPRSを含む27のccTLDレジストリが会員となっています。

今回の会合には18のレジストリから45名以上が出席し、25日と26日にNon-Technicalトレーニング、27日には総会と理事会が行われました。今回のFROM JPRSでは、それらの会合の模様を報告します。
APTLDの会場
APTLDの会場

APTLD Non-Technical トレーニング


27日の総会・理事会に先立ち、2月25日と2月26日の2日間に渡り、APTLDNon-Technicalトレーニングが開催されました。トレーニングではTLDを巡るこれまでの歴史、ICANNを中心とするTLDにまつわる枠組み、TLDのポリシーや近年のトピックスの紹介、各ccTLDの事例紹介、国際化ドメイン名(IDN)の状況の紹介など、多彩なテーマで情報交換がありました。JPRSからは、遠藤淳が.jpのレジストリの運営の枠組みの紹介を、堀田博文が国際化ドメイン名(IDN)の状況の紹介を行いました。

これまでも技術分野に焦点を当てたトレーニングは行われてきましたが、今回のような技術分野以外に包括的に焦点を当てたトレーニングは、新たな取り組みとなります。新規にAPTLDの会員となったレジストリを中心とする多くの参加者から、内容が充実しており大変参考になったと、このような機会を評価する声が多数聞かれました。

トピックス別の最新状況報告


2月27日の総会では、まず、各種のトピックス別に最新状況の報告が行われました。以下、主なものをご紹介します。

最初に、第一線の技術者を迎え、最新の技術トピックスの報告が2つ行われました。DDos攻撃についてArbor Networks社のDanny McPherson氏から、DNSSECDNSのリソースレコードに関する仕様であるDLV(DNSSEC Lookaside Validation)について南カリフォルニア大学情報科学研究所(ISI)のBill Manning氏から解説がありました。いずれもDNS運用の安定性、信頼性、安全性にとって重要なテーマであり、大きな関心を集めました。

次に、ICANN GAC(Government Advisory Committee)ChairのSharil Tarmizi氏から、GACの構造や設置されている分科会の活動の報告と2007年3月以降のGACの新体制の紹介が行われました。また、APRALO(AsiaPacificRegionalAt-LargeOrganisation)の設立に向けた動きについての情報提供がSiavashShahshahani氏(.ir)から行われました。

国際化ドメイン名(IDN)については、会員間でも関心が高く、前回の2006年11月のバンコク会合と同様、ICANNのIDN Program DirectorであるTina Dam氏が、IDN TLD、IDN Guidelinesの状況の報告を行いました。加えて、Chris Disspain氏(.au)からはccNSOにおいてIDN TLDに関する議論が進められており、2006年3月下旬のICANN会合までに課題が整理される予定であることが報告されました。

また、今回は「ICANN Regions - APTLD's View」と題した報告が、KeithDavidson氏(.nz)から行われました。これは、.ky(ケイマン諸島)のDaveArchbold氏がICANN Sao Paulo会合で行ったプレゼンテーションの紹介を中心とするもので、33のccTLDが、実際に位置する地域、国連による地域区分、ICANNによる地域区分の間で矛盾を抱えていること、それらのccTLDは、各地域コミュニティや地域組織への参加に関して「加盟資格がない」等の扱いを受けているといった問題を抱えていることが報告されました。この内容を受け、地域組織であるAPTLDとして取るべき対応について、意見交換もありました。

各ccTLDの事例紹介を含むテーマ別のパネルディスカッション


今回のAPTLDでは前回の2006年11月のバンコク会合に引き続き、各国のccTLDがそれぞれの国や地域ごとの事例を持ち寄り、それらの共通点および相違点について議論することにより、各会員間の情報共有や共通認識の形成を図るという取り組みが行われました。今回は、会員間で関心の高いテーマを3つ選定し、それぞれのテーマについて、パネルディスカッションを実施する方式が採用されました。

1つ目のセッションのテーマは、政府とccTLDレジストリの関係でした。まず、JPRSの大橋由美が導入のプレゼンテーションとして.jpの状況を報告し、議論をリードしました。.jpの報告を受け、.fg(フィジー)、.ir(イラン)、.nz(ニュージーランド)、.tw(台湾)の状況が報告され、それぞれの国や地域毎の事情について有益な情報交換が行われました。結果としてそれぞれのccTLDで事情が異なるものの、インターネットガバナンスおよびドメイン名の登録管理等に関するグローバルレベルの議論と国内レベルの議論を連動させるためには、ccTLDレジストリと政府関係者との間で有効なコミュニケーションを確立することが重要であることが参加者の間で認識されました。

2つ目のセッションでは「スパム、フィッシングに対する会員の役割」というテーマで、.nz、 .sg(シンガポール)、 .hk(香港)と準会員の.asiaからのパネリストが、各TLDにおける取り組みを紹介しました。スパム、フィッシングへの対応は世界的な課題であり、TLD間の連携の重要性について活発な議論が行われました。

3つ目のセッションでは「登録ポリシーを遵守するためにそれぞれのccTLDにおいて、どのような枠組みが採用されているか」に焦点が当てられました。今回は.th(タイ)、.au(オーストラリア)、.nz、.hk、.jpからそれぞれのccTLDの枠組みが紹介されました。.auでは、申請する文字列と登録者との間に密接な関連性がなければならないという要件を設けており、ドメイン名登録に先立つ審査を厳格に行っています。その一方で.nzでは、登録に先立ってはほとんど審査を行わず、登録後に紛争が発生した場合に対応できるよう紛争処理手続を充実させています。ポリシー実装の枠組みは、それぞれのccTLDが拠って立つ法制度、経済的状況、歴史等による影響が大きく、逆に言えば、あるccTLDの手法をそのまま別のccTLDに当てはめることは難しいということになります。各ccTLDからの具体的な事例の紹介を通じ、このような土台となる部分を踏まえた枠組みの模索について議論が行われました。
Peter Dengate-Thrush氏へ記念品贈呈(画面左:JPRSの大橋由美)
Peter Dengate-Thrush氏へ記念品贈呈(画面左:JPRSの大橋由美)

General Managerによる活動報告と理事改選


2006年6月にAPTLDのGeneral Managerに就任したDon Hollander氏から、APTLD の活動報告が行われました。専任のGeneral Managerの着任はAPTLDにとって、APTLDそのものの設立・組織の法人化と並ぶ大きな出来事でした。

会議ではGeneral Managerの精力的な活動がAPTLDに組織の強化と安定をもたらし、様々な面で会員の利益につながるとの期待を多くの会員が抱いているという印象を持ちました。

今回の会議ではAPTLDの理事の改選が行われ、その結果が報告されました。任期2年の理事の顔触れは以下の通りです。(非改選の理事4名を加えた計8名でAPTLD理事会は構成されます)

Richard St. Clair(.nu:再任)
Keith Davidson (.nz:新任)
Ai-chin Lu(.tw:再任)
大橋由美(.jp:再任)

また、APTLDのChairと理事を長年に渡り務めてきたPeter Dengate-Thrush氏(.nz)が今回退任することとなり、APTLDから謝意の表明と記念品の贈呈が行われました。

APTLDは今後、太平洋地域、南アジア、西アジアでの会員獲得活動をこれまで以上に積極化させ、また、技術・非技術トレーニングの場を通じて、アジア太平洋地域のインターネットコミュニティへの一層の貢献を図ろうとしています。加えて、これまで同様、会員間の技術、運用、ポリシー情報の交換に取り組み、各ccTLDレジストリ間の連携の強化を図ること、ICANN等のグローバルなコミュニティにアジア太平洋地域の視点をインプットしていくことにも、これまで以上に取り組んでいこうとしています。

次回のAPTLD会合は、2007年6月にアラブ首長国連邦で開催される予定です。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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