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ドメイン名関連会議報告

2008年

国際化ドメイン名に関する最新技術動向

~ 第71回IETF Meetingでの話題を中心に ~

2008/04/04

今回のFROM JPRSでは国際化ドメイン名に関する最新技術動向について、2008年3月に米国のフィラデルフィアで開催されたIETF 71 Meeting(以下、IETF71)における議論内容を中心にお伝えします。

IETF会合の様子
IETF Meetingの様子

IDNプロトコルの改定に関する活動状況

国際化ドメイン名(IDN)のプロトコルは2003年にRFC 3490~RFC 3492として標準化され、インターネット上で運用されてきました。しかし、IDNを実際に運用する中で、現在のIDNプロトコルに存在する課題が顕在化してきました。

これを受け、現在のIDNプロトコル(IDNA2003)(*1)を改定し、課題を解決するための活動が開始されました。元IETFチェアであり、また現在電子メールアドレスの国際化(EAI)WGの共同チェアを務めているハラルド・アルベストランド氏により、この議論をオープンな場で進めるための「idna-update」メーリングリストが2006年10月に開始され、メーリングリスト上で活発な議論が進められています。

今回のIETF71ではWGの再設立を目的とし(*2)、アルベストランド氏がチェアを務める形でIDN BOFが開催されました。BOFでは現在議論が進められているIDNA2003 の改定提案(IDNA200x)(*3)のインターネットドラフト文書紹介と、これまでに顕在化した課題や活動内容が報告されました。

それぞれの文書の概要については、下記「関連URI」を参照ください。

(*1)
現在のIDNプロトコルであるRFC 3490~3492は2003年に発行、標準化されたため、このように呼ばれています。
(*2)
以前存在していたIDN WGは2003年の標準化完了に伴い、活動を終了しています。
(*3)
IDNプロトコルの改定版は、IDNA2003に対しIDNA200xと呼ばれています。

区切り文字の扱いに関する議論

今回のIDN BOFでは、IDNA200xにおける区切り文字の扱いについての議論も併せて行われました。

「区切り文字」とはドメイン名におけるラベルの区切りとして使われる文字のことで、現在のIDNA2003では半角ピリオド(.)に加え、区点記号(。)や全角ピリオド(.)も区切り文字として定義されています。しかし、現在議論されているIDNA200xでは今後のUnicodeの改版等への対応を容易にするため「。」や「.」等、半角ピリオド以外の文字を区切り文字として扱う部分をプロトコルの標準仕様から分離し、アプリケーションが必要に応じてローカルに行うこととすることが提案され、その是非が検討されています。

BOFでは、もしIDNA200xでこの変更を行った場合、ユーザに直接影響を及ぼす部分においてIDNA2003との互換性・相互接続性が失われるため、導入すべきではないのではないかという指摘が複数あり、これについて一定の理解が得られました。今後は、メーリングリストや次回以降のIETF Meetingの場において議論が継続されていくことになります。

IETF会合の様子
IETF Meetingの様子

IDNABIS WG設立へ

今回のIDN BOFでは今後の活動の主な目的として、
  • Unicodeのバージョン依存性の排除
  • より理解しやすいプロトコル文書に
  • Bidi(*4)への対応
  • フィッシング防止対策

が挙げられました。そのうちフィッシング防止対策については活動の対象外とされましたが、残りの項目については今回のBOFで合意がなされました。

WGのチェアには、TCP/IPの開発やISOCの創立をはじめとするインターネットへの数多くの貢献から「インターネットの父」と称され、2007年までICANN理事会の議長を務めたビント・サーフ氏が立候補し、「IDNABIS WG」(*5)の設立に向けた準備が進められています。

サーフ氏は1943年生まれの64歳です。しかし、インターネットエンジニアとしての活動は現在も非常に活発であり、idna-updateメーリングリスト上においても数多くの意見や提案を行っています。同氏が自らWGチェアに立候補し、IDNプロトコルの改定に着手するという事実は、現在のインターネットにおけるIDNの重要性を示すものの一つであるといえるでしょう。

(*4)
TBidi: Bidirectional tex
アラビア文字やヘブライ文字を表記する場合、右から左に文字を表記します。しかし、アラビア文字で構成された文書中にラテン文字や算用数字が現れる場合には、その部分のみ左から右に表記します。このように一つのテキスト中に双方向の表記が混在している文書をBidi(ビーディー:双方向テキスト)と呼びます。
なお、IDNA2003におけるBidiの取り扱いに関する規定は個々のラベルに対してのみであり、IDNA200xでは複数のラベルにより構成されるドメイン名全体におけるBidiの取り扱いに関する仕様を決定しようとしています。
(*5)
「-bis」は2を意味する接尾語で、通信プロトコルの改定の際によく用いられます。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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