JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト


ドメイン名関連会議報告

2008年

新TLDの追加に関する最新動向

~gTLDの追加とIDN ccTLDの導入―ICANNにおける進行状況~

2008/11/28

ここ数年、ICANN会合では新TLDの追加に関する議論が大きな焦点となっていま す。FROM JPRSでもこれまで何回かにわたり、ICANN会合における新TLDの追加、 特に国際化(IDN)TLDの導入をめぐる最新動向を中心に報告してきました。

今回のFROM JPRSでは、先日のICANNカイロ会合に先立ってICANNから公開され た二つのドキュメント「新gTLD追加についての提案募集(RFP)案」と「IDN ccTLD Fast Trackの実装計画案」に記述された内容を中心に、ICANNにおける 新TLDの追加に関する議論の最新動向についてご紹介します。

ICANN会合の様子
ICANN会合の様子

公開された二つの草案

現在、ICANNにおける新TLDの追加に関する議論や作業は、以下の二つを柱とし て進められています。

  1. 新gTLDの追加
  2. IDN ccTLDの導入

このうち「1.」はIDNを含む新しいgTLD追加に関するもの、「2.」は国際化さ れたccTLDを現存するそれに合わせた形で追加導入しようというもので、双方 とも2009年後半ないしはそれ以降の導入を目標として議論が進められています。

今回のICANNカイロ会合を直前に控えた2008年10月、ICANNから公開された以下 ニつの草案(ドラフト)は、この両者に関して作られたもので、今後の進め方 やICANNの活動計画のベースとなる重要なものです。

  • 新gTLD追加についての提案募集(RFP)案(応募者向けガイドブック案)
  • IDN ccTLD Fast Trackの実装計画案

以下より、これら二つの草案の内容と現在の論点について順に解説します。

「新gTLD追加についてのRFP案(応募者向けガイドブック案)」の公開と議論

ICANNは2008年10月23日(米国太平洋時間)に「New gTLD Program: Draft Applicant Guidebook (Draft RFP)」を公開しました。これは、今回の新gTLD 追加募集に際し、応募者向けに作成したガイドブックの形式をとっています。 そのため、本稿では以降「ガイドブック案」と呼びます。

このガイドブック案は97ページとボリュームがあるため、内容の解説を行い、 理解を深め広報を促進するためのワークショップ「Understanding the New gTLD Applicant Guidebook(draft RFP)」がICANN会合とは別に開かれました。 使われた資料は、Web上で公開されており、誰でも入手することができます。 (本号の最後の「関連URI」を参照)

今回公開された募集要項は、これまでの内容と比べて、手続きの明確化と募集 要件の緩和を図ろうとしている点で大きな違いがあります。

ICANNはこれまで2000年と2003年の2回にわたって新gTLDの追加募集を行いまし たが、実際に追加されたgTLDの数は決して多いものとは言えませんでした。い わゆるsponsored TLDと呼ばれる、登録要件を制限したgTLDの追加が主流であっ たこともあり、目的の一つである「gTLDの円滑な新設を図る」という趣旨に沿っ た結果は得られませんでした。

そこで今回の募集では、申し込みに必要な条件の大幅な緩和と、募集の時点で 追加される予定のgTLDの数に上限を設けないこととなりました。そのため一部 のメディアから「TLDの自由化」といったセンセーショナルな見出しで報道が あったことは、私たちの記憶にも新しいところです。

また、募集に追加される新たなgTLDとして「Open」と「Community-based」の2 種を定めました。「Open」は、基本的に誰でも登録が可能なgTLDであり、従来 のunsponsored TLDに相当します。それに対し「Community-based」は、特定の コミュニティにおいて使われることを前提としたものであり、従来のsponsored TLDに相当するものです。

今回の募集では、「Open」「Community-based」共に登録要件を満たしていれば、 基本的に登録数の上限を設けないこととなっています。

そして、今回のガイドブック案では、応募時の査定方法(Evaluation Procedure)の制定について、大幅な強化を図っています。従来からある要件 である財務的、技術的、運用的な能力やICANNとの契約の必要性などに加え、 応募時の査定料(EvaluationProcessing Fee)として、1提案あたり185,000米 ドル(約1,750万円)を徴収、またその他の手続きにも別途料金がかかる可能 性があると記載されています。

この料金はこれまでの募集でICANNが徴収した料金(第1回では50,000米ドル、 第2回では45,000米ドル)よりもかなり高額であるため、この料金設定では特 に小規模なコミュニティが「Community-based」のgTLDを応募する場合の障害 となる可能性がある、またこの料金は「Based on a cost recovery model」と 言っているが、査定にかかる料金についての根拠が明確になっていない、といっ た意見が寄せられています。

また、以前から地理的名称のgTLDについては既存のccTLDとの混乱を防ぐため、 要件上何らかの制限を設けるべきであるという要望が、主にccTLDや GAC(Governmental Advisory Committee: 各国政府諮問委員会)から出されて いましたが、今回のガイドブック案では盛り込まれませんでした。そのため、 混乱防止のためにも、募集要項にこれらを盛り込むべきであるという意見が出 されました。

なお、このガイドブック案はあくまでも草案であり、本文中にも「議論を進め るためのドラフトに過ぎず、詳細は今後改定される」と明記されています。今 後は指摘された点も含め、新gTLDの追加に関する手続きに関する検討が進めら れていくことになります。

IDN ccTLD Fast Trackの実装計画案の公開と議論

ICANNは2008年10月23日(米国太平洋時間)に「IDN ccTLD Fast Track Draft Implementation Plan」に関するパブリックコメントの募集を開始しました。 これは、これまで作業が進められてきた「Fast Track」によるIDN ccTLD の導 入計画の策定について、ICANNとしての最終案をまとめる段階に入ったことを 意味しています。

今回ICANNから公開された実装計画案は、基本的にはICANN内に設置されたIDNC WGでまとめられた内容に沿ったものとなっています。以下、順を追って内容を 解説します。

(速報: ICANNは2008年11月26日(米国太平洋時間)に同案の更新版を公開し ました。更新内容はIDNテーブル(使用する言語と文字種)に関する概念の明 確化で、本稿で解説している申請および審査のプロセスには大きな変化はあり ませんでした)

現在計画されている申請・審査・委任のプロセス

今回公開された申請および審査のプロセスは、以下の3つの段階により構成さ れています。

1) 準備
申請者は文字列の言語・スクリプト(文字種)を決め「IDNテーブル」を作成する
申請者は以下を記したエンドース(裏書き)文書を作成する必要がある
- 文字列に意味があることについての該当国または地域の支持
- レジストリオペレータに対する国または地域の支持
- 使うIDNテーブルに対する関連コミュニティの支持
2) 申請と審査
申請はICANNが準備する定型フォームにより、文書で提出する必要がある
申請はICANNによる以下の審査を経る必要がある
- 申請の形式審査
- 文字列の確定プロセスの審査
- 文字列と委任準備状況確認プロセスの審査
3) 委任プロセス
全ての申請は、ICANN理事会の承認を得る必要がある


すなわち、1)の段階において、使用文字列、申請者がレジストリオペレータを 行うこと、そして使用するテーブルが適切であることの全てについて、国また は地域、および関連コミュニティの支持を得ていることが条件になります。こ の条件を満たしていない場合、ICANNにFast Trackに基づいたIDN ccTLD導入の 申請を行うことができません。

2)の段階において、申請が正当なものであるか、その文字列がDNSをはじめと する既存のインターネットに影響を与えないかが審査されます。全ての審査結 果は公開されます。

3)の段階において、全ての申請はICANN理事会による最終的な承認を得る必要 があります。ICANN理事会では提出された書類に基づき、以下の審査が行われ ます。

  1. 運用および技術に関する能力、IP接続性があること
  2. オペレータ、運用責任者の連絡先がその国または地域内に存在すること
  3. すべての申請者を公平に扱うこと
  4. 関連コミュニティ/該当国または地域の政府の支持を得ていること

そのうえで申請者は申請書において、以下の要件に関するサポート状況を明確 に記述しておく必要があります。

  1. RFC 1591(DNSの構造と権限委任に関する技術要件)
  2. ICP-1(ccTLDの管理と委任についての要件)
  3. GAC原則(ccTLDの管理と委任についての「GAC原則」)

今回発表された草案では、Fast TrackによるIDN ccTLDの導入を行おうとする 申請者は、国または地域、および関連コミュニティの支持を得られていること が必須となっています。

また技術コミュニティやICANN理事会による直接の承認を得ることを必須とす ることにより、既存のインターネットやDNSに関する影響、あるいはインター ネットユーザへの影響をできる限り最小限にとどめた上で、できる限り円滑に IDN ccTLDの導入を進めようという配慮がうかがえます。

IDN ccTLD導入における未解決の課題

Fast TrackによるIDN ccTLDの導入では、以下のような未解決の問題が指摘さ れています。これらについては今後、ICANNの場で議論が進められていくこと になります。

  1. IDN技術標準への継続的な準拠の保証
  2. ICANNへの資金拠出
  3. IDN ccTLDオペレータの、ICANNコミュニティとの連携
  4. ICANN合意形成ポリシーへの準拠
  5. 既存のTLD、および新gTLD追加プロセスで申請されている文字列との衝突回避


まとめ

新TLD追加の本来の目的は「インターネットユーザーが、インターネットをよ り便利に使えるようにすること」です。

新gTLDの追加、IDN ccTLDの導入の双方とも、2009年の後半の導入を目標とし、 より具体的な草案が議論される段階に入っています。今後これらの計画がより 具体化していく段階において、インターネットユーザー自身もこの動向に関心 を持ち続けている必要があるでしょう。

関連URI



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
「FROM JPRS」にご登録いただいた皆さまには、いち早く情報をお届けしております。ぜひご登録ください。