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ドメイン名関連会議報告

2009年

アジア太平洋地域のインターネット関連課題を総合的に議論

~AP* Retreat会合報告~

2009/09/09

AP*(APstar) Retreat会合が、2009年8月24日に中国の北京で開催されました。本会合ではJPRSの堀田博文がCNNICの張健(Jian Zhang)氏と共同議長を務め、会議の企画・進行を担当しました。

AP* Retreat会合は原則として年に2回開催され、APNIC、APTLDなどのアジア太平洋地域のインターネット団体の代表や、各国・地域でインターネット上の重要な役割を担っている組織から参加者が集まります。会合では、各組織の活動状況の報告や問題意識の共有に加え、インターネットに関連する課題に対して、アジア太平洋地域のコミュニティ全体としてどう取り組むべきかの議論が行われています。

今回の会合は第28回APNIC Meetingの前日に同一会場で開催され、約25名の参加がありました。アジア太平洋地域でのspam対策に関する議論と実践を活性化させようという観点より、日本からは従来より多い5名が参加しました。

AP* Retreat会合の様子
AP* Retreat会合の様子

アジア太平洋地域のインターネット関連組織からの活動報告

午前の部では、以下に示すアジア太平洋地域のインターネット関連10組織から、この半年の活動と今後の予定についての報告が行われました。


これらの組織では、適切な資金調達や役員・事務局機能の増強などを通じ、組織力の強化を進めています。例えば、アジア太平洋地域を相互接続する学術研究ネットワークであるAPANは、1997年の設立以来法人格を持たない形で活動を続けてきましたが、APANとして法人格を所有するための検討を進めています。これは、APAN事務局担当組織や参加組織・外部組織との契約を締結できるようにすることで、より安定的かつ広範囲に本来の研究活動を進められるという判断によるものです。


APNGの再構築~アジア太平洋地域の関連課題を総合的に議論する場として~

APNGはAPCCIRN(Asia Pacific Coordination Committee for Inter-Continental Research Networking)が発展する形で、1994年に組織化されました。これまでにその活動からAPNIC、APTLDなど多くのアジア太平洋地域の団体・組織が誕生しており、APNGはそれらの母体と位置付けることができます。

APNGの活動から生み出された団体・組織の成熟化とともに、最近では新たな活動や組織が自発的に生まれるようになりました。こうした状況の変化に対応し、APNGはアジア太平洋地域における次世代のリーダーを育成することを目的とする「APNG Camp」の活動を中心とした組織に変化していきました。

しかし、APNG Campはそれ自体が何らかの具体的な任務や使命を持つものでないため、アジア太平洋地域のインターネット全体の発展に体系的に寄与するための枠組みが別途必要ではないかという議論が、今回の会合で行われました。

すなわち、以前のAPNGのような位置付けの組織を再構築し、インターネット全体の動向や課題を把握し、組織創設などの必要な活動を進めていこうというものです。

今回の会合では、今後この観点での議論を更に進めるための「ディスカッションペーパー」を用意し、メーリングリストや関連会議において議論していくことが決められました。


アジア太平洋地域におけるspam対策の状況

spamは長期にわたり、インターネットの円滑な利用を妨害する問題であり続けています。以前からさまざまな対策が講じられてきましたが、現時点においてもspamはインターネットにおける未解決課題の一つです。

そして、インターネットでは国境を越えたspamの送信が多く行われているため、対策には国際的な協調が必要になります。

今回の会合ではアジア太平洋地域におけるspam対策の活発化も視野に入れ、日本と中国におけるspam対策の取り組みが紹介されました。

日本からはIIJの櫻庭秀次氏が、spam対策への取り組み状況について発表しました。発表ではJapan Email Anti-Abuse Group(JEAG)により作成された、

  • Outbound Port25 Blocking(OP25B)(*1)
  • 送信ドメイン認証技術(*2)
  • 携帯電話あて迷惑メール対策(*3)

に関する三つの勧告について紹介し、日本では現在これらの導入・利用が進められていることが報告されました。



中国からも現在実施している対策の紹介がありましたが、それぞれの国の事情によりどのような対策が取れるかには差があることから、今後も情報交換・技術交換にとどまらず、具体的な対策実施に向けて協調する必要性のあることが確認されました。櫻庭氏によると本会議の翌日、日本と中国のspam対策関係者による会合が開催されたとのことです。


自然災害発生時などの情報インフラの確保について

アジア太平洋地域は、地震や台風、津波といった自然災害が発生しやすい場所を数多く含みます。このような災害発生時には、ネットワークインフラが確保されているか、そして、どこに行けば適切な情報が得られるのかが考慮すべき重要な課題となります。今回の会合ではこの問題に対し、ドットアジア・オーガニゼーション(DotAsia)及びアジア工科大学院(AIT)から発表がありました。

DotAsiaからは、災害発生時に最新情報を掲載するためのサイトをあらかじめ決めておき、アジア太平洋地域のインターネット関連組織がそのサイトの運営を行うのはどうかという提案がされました。

また、AITからは「Digital Ubiquitous Mobile Broadband OLSR(DUMBO)」プロジェクトという、衛星や無線による暫定的な通信システムを災害発生時に構築し、それを各国政府やNGOが使う仕組みを構築するための取り組みが紹介されました。この仕組みは、既にミャンマーなどで構築が進められているとのことです。


アジア太平洋地域のインターネットエクスチェンジ(APIX)

インターネットエクスチェンジ(IX)は、ISPやデータセンター(iDC)の相互接続ポイントです。前回のAP* Retreat会合において、インターネット協会(IAjapan)の高橋徹副理事長から「アジア太平洋地域におけるIXのあり方を考えよう」という呼び掛けがありました。今回の会合ではそれを受け、アジア太平洋地域のIXの状況の共有が行われました。会合では、APIXの構築に向けて関連する団体、専門家が協力を開始したこととともに、各国におけるIXの状況が紹介されました。


今後のAP* Retreat

今回のAP* Retreat会合では、アジア太平洋地域のインターネット関連課題を体系的に見る組織の必要性、すなわち、同地域のインターネット全体の動向を把握し、組織化などの必要な手段を講じるための仕組みが必要なのではないかという課題が新たに認識されました(上記、「APNGの再構築」を参照)。
本課題は今後、メーリングリスト及び次回以降の会合で議論されていくことになります。

次回のAP* Retreat会合は、APRICOT会合に併設する形で2010年2月にクアラルンプールで開催される予定です。



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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