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ドメイン名関連会議報告

2009年

国際化ccTLDの早期導入に関する最新動向

〜ICANNソウル会合における話題を中心に〜

2009/11/20

2009年10月25日から30日にかけて開催されたICANNソウル会合において、「ファストトラックプロセス」による国際化ccTLD(以下、IDN ccTLD)の早期導入が決議されました。

今回のFROM JPRSではICANNソウル会合での話題を中心に、IDN ccTLDの導入に関する最新動向についてお伝えします。

ICANNソウル会合の様子
ICANNソウル会合の様子

国際化TLDの導入に向けた二つの活動―IDN ccTLDと新gTLDの導入

これまでのFROM JPRSでもお伝えしてきたように、ICANNにおける国際化TLDの導入に関する議論は、従来のccTLDとgTLDを拡張する形、すなわち、IDN ccTLDの追加導入とIDNを含む新gTLDの導入を前提に進められています。具体的には、ccTLDの支持組織であるccNSO、およびgTLDの支持組織であるGNSOの場において、コミュニティから広くコメントを受けつつ検討が進められています。

単純ではない国際化TLDの導入

ICANNの用語集(*1)ではccTLDとgTLDについて、それぞれ以下のように記述しています。

  • ccTLD
    - 2文字で、かつ国、地域あるいは地理的場所に対応するTLD
  • gTLD
    - 3文字以上のほとんどの(*2)TLD

このようにccTLDは「2文字」、gTLDは「3文字以上」と定められています。

しかし、これらの記述はIDNの規格が定められる以前のものであり、IDNの存在は想定されていません。そのため、実際に国際化TLDを導入するに当たっては、ルートゾーンの大きさやDNS応答データの増大などといった技術的な問題(*3)以外に、このようなccTLDやgTLDそのものの定義の見直しや、ステークホルダー(利害関係者)による具体的な導入ポリシーの策定など、広い範囲での検討や意思決定が必要になります。そして、これらの検討や意思決定には、相応の時間を要することになります。

(*1)
ICANN | Glossary
http://www.icann.org/en/general/glossary.htm
(*2)
「ほとんどの(most)」とあるのは、3文字以上のTLDに特別なTLDである「.arpa」を含むためです。
(*3)
IETFやICANN SSAC、RSSACを始めとするインターネット技術コミュニティによるこれまでの調査・検証により、国際化TLDの導入は技術的に可能であり、インターネット全体の安定性に影響を与えないと結論付けられています。

国際化TLD導入の要求の強まり

インターネットの世界的な普及により非英語圏の国や地域、特に中国語やアラビア語圏を中心に国際化TLDの早期導入に対する要求が高まってきています。そうした状況を受け、ICANN ccNSOでは、「ファストトラックプロセス」によるIDN ccTLDの早期導入の可能性について検討を進めてきました。


ファストトラックプロセスによるIDN ccTLDの早期導入

「ファストトラックプロセス」とは、IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(ccPDP)」の作成と並行して、既存のccTLDに対応した形でIDN ccTLDを限定的に早期導入し、技術、運用、ポリシーなどの問題が発生しないことを確認するための活動をいいます。

今回のICANNソウル会合では、ファストトラックプロセスによるIDN ccTLDの早期導入の申請受付の開始が決議され、2009年11月16日から募集が開始されました。これまでに、エジプトや中国などいくつかの国がIDN ccTLDの申請をしたことが報じられています。

また、ファストトラックプロセスについて検討課題となっていた以下の二つの事項に関する実装計画がまとめられ、合意されました。

  1. IDN ccTLDレジストリとICANNとの契約を必須とするか
  2. IDN ccTLDレジストリからICANNへの支払いを必須とするか

このうち 1. については、IDN ccTLDレジストリとなる組織はICANNとの関係締結に際し以下のいずれかを選択しなければならない、と定められました。

  • DoR(Documentation of Responsibility)
  • EoL(Exchange of Letters)
  • 正式(フル)契約

上記のうちDoRとEoLは、ccTLDレジストリがローカルレベルで、ICANNがグローバルレベルでそれぞれに果たすべきお互いの責務を保証する文書である従来の「Accountability Framework」に類似した形態のもので、正式(フル)契約は、ccTLDの登録管理におけるccTLDレジストリの責任とICANNの責任、そして該当国政府の役割を明確化する契約文書である従来の「ccTLDスポンサ契約」に類似した形態のものです。

また、2. については申請料金が26,000米ドル(約231万円)、年間料金が収入の1〜3%(登録件数が50,000件を超える場合は3%)と定められました。ただし、事情により支払いが困難である場合、支払いの免除を申し込むことが可能となっています。

関係者からは今回のファストトラックプロセスによる募集開始後の2年間で、50件程度のIDN ccTLD追加の提案がなされると見込んでいるとの発言がありました。また、ICANN/IANAにおいて提案を処理する流れとスケジュールの見込みについて、以下のように発表されました。

  • フェーズ1: 該当文字列が国名を表現しているかどうかの審査(1〜2ヶ月程度)
  • フェーズ2: レジストリ組織そのものの審査(3ヶ月程度)

今回のファストトラックプロセスではこれら二つのフェーズによる審査を経た上で、IDN ccTLDが登録されることになります。


新gTLDの導入に関する動向

一方、国際化TLDを含む新gTLDの現時点における導入スケジュールとして、これまでICANNから以下が示されてきました。今回のICANNソウル会合では提案受付開始時期を明示的に変更するような決定はなされませんでしたが、参加者の間からは、開始時期が更に遅れるのではないかと懸念する声も聞かれました。

  • 2009年11月22日
    応募者向けガイドブックver.3 パブリックコメント締切
  • 2009年末
    応募者向けガイドブックの最終版をリリース見込み
  • 2010年中
    新gTLDの提案受付開始

このような状況から今回のICANNソウル会合では、今後の新gTLDの導入予定を明確にすべき、との要求が出席者から多く寄せられました。それを受け、事務局から新gTLD導入の「プロジェクト計画」を、近日中にICANN理事会に提出することになりました。

新gTLDの導入については以下の項目が未解決事項として残されており、今後、ICANNの場において解決していく必要があります。

  1. 商標・地理的名称の保護および消費者の混乱への対応
  2. フィッシングを始めとする不正行為の防止と対応
  3. 数多くのgTLDがルートゾーンに追加されることによる技術的な影響
  4. 「3文字以上」というgTLDの制限がIDNでは不合理である点
  5. 商業的TLDとコミュニティ向けTLDにおいて申請の取り扱いを変更すべきか
  6. 現在gTLDにおいて存在している、レジストリ―レジストラ兼業の禁止を継続するかどうか



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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