ドメイン名関連会議報告
2013年
APTLDシンガポール会合報告
2013/03/01
APTLD(Asia Pacific Top Level Domain Association)の会合が2013年2月21日から22日の2日間にわたり、シンガポールにおいて開催されました。APTLDはアジア太平洋地域のccTLD連合組織で、現在JPRSを含む36のccTLDレジストリが会員となっています。
今回の会合には18のレジストリから約60名が出席しました。2月21日にはICANN CEOのFadi Chehade氏による講演、各種情報共有や議論が行われ、2月22日には総会と理事会が行われました。
今回のFROM JPRSでは、それらの会合の模様を報告します。
Fadi Chehade氏による講演
2月21日のプログラムでは、ICANN CEOのFadi Chehade氏による講演が行われました。講演では、ICANNはインターネットユーザーが今後ますます増加する地域としてアジア太平洋地域を重要視しており、これまで以上により広く意見を取り入れていきたいという意向が表明されました。その一環として、従来米国が中心であったICANNのオフィスをロサンゼルス、シンガポール、イスタンブールの3拠点に分散させるとともに、スタッフも各拠点に分散させる予定であることが紹介されました。
また、同氏からは、各拠点におけるローカルコミュニティに密着したよりよいカスタマーサポートを提供するため、各地域について最も状況を把握している各国のccTLDレジストリから、各地域に合わせたオペレーションや政府とのやり取りに関する知見や見解についての情報共有を進めていきたいとの内容も発表されました。このようにChehade氏の発表では、アジア太平洋地域におけるAPTLDの重要性が強調され、今後のICANNの活動を通じアジア太平洋地域のccTLDレジストリとのさらなる連携強化を進めていきたいという強い意志が示されました。
これに対し、APTLDのGeneral ManagerであるJian Zhang氏は、同氏の発表内容に謝意を示すとともに、APTLDがICANNに対し、積極的に情報の共有やアジア太平洋地域としての意見の発信を行い、ICANNからの要望に応えていくことを同氏に伝えました。
Chehade氏はこの講演を行う直前に中国、日本、韓国を訪問しています。同氏はJPRS訪問の際にも、ICANNのローカルコミュニティに対する活動への協力に対する期待を示しており、JPRSもこれに応えることを約束しています。
各ccTLDによるテーマ別パネルディスカッション
今回のAPTLD会合では、各ccTLDレジストリがそれぞれの国や地域ごとの事例を持ち寄り、それらの共通点や相違点について議論することにより、会員間の情報共有や共通認識の形成を図るための取り組みが行われました。今回は、以下に示す二つのテーマについてのパネルディスカッションが行われました。
一つ目のセッションのテーマとして、各ccTLDにおけるガバナンスとポリシーの状況が取り上げられました。今回は.sg(シンガポール)、.kr(韓国)、.cn(中国)、.nz(ニュージーランド)、.hk(香港)、.lk(スリランカ)、.in(インドネシア)、.vn(ベトナム)の各レジストリから、政府やレジストラ、登録者との関係についての状況報告が行われました。それぞれの国や地域ごとの事情について有益な情報交換が行われ、インターネットガバナンスやドメイン名登録に関し、それぞれの国や地域の状況に合わせたポリシーの実施が重要であることが、参加者間の共通認識となりました。
二つ目のセッションのテーマとして、新gTLDの運用開始に伴うレジストリ・レジストラモデルやccTLDへの影響が取り上げられました。.nu(ニウエ)、.jp(日本)、.id(インドネシア)の各レジストリと、シンガポールのレジストラであるIP Mirrorからそれぞれの意見が紹介され、活発な議論が交わされました。今回のパネルディスカッションではJPRSの堀田がパネリストの一人として参加し、新gTLDの実施に伴いccTLDレジストリが果たすことのできる役割と、コミュニティや業界にとってのそれらの価値についての発表を行いました。ccTLDレジストリとしての業務に加え、その経験を活かすことで幅広くコミュニティや業界に貢献していくというJPRSの基本姿勢には、参加者から多くの賛同の声が寄せられました。
APTLD理事会議長による活動報告と理事改選
2013年2月にAPTLD理事会議長であるJonathan Tat On Shea氏から、APTLDのこれまでの活動報告が行われ、今後は統計的な情報の収集や、調査対象として欧米圏を含むレポートなどを積極的に作成していく予定であることが発表されました。また、今回の会議ではAPTLDの理事の改選結果が報告されました。2013年2月からの理事の顔ぶれは以下の通りです。(以下、敬称略)
- Chair
Jonathan Tat On Shea(.hk) - Vice Chair
Lim Choon Sai(.sg) - Secretary
Ting Chen(.cn) - Treasurer
堀田博文(.jp) - Board Members
YungJin Suh(.kr)
Norsuzana Harun(.my)
Jeongjun (June) Seo(.cc & .tv)
Ai-Chin Lu(.tw)
JPRSの堀田博文がAPTLDの理事に選出
今回の改選により、JPRS取締役の堀田博文が理事に選出されました。堀田は、今後2年間の任期で理事を務めます。
APTLDは、ドメイン名やレジストリ運用に関する議論や情報交換、ICANNを始めとするインターネットガバナンス組織への提言などを通じ、アジア太平洋地域のccTLDの発展に寄与する重要な役割を担っています。特に、ICANNが2009年11月から募集を開始したIDN ccTLDの導入プロセスである「ファストトラック」は、堀田らがAPTLDでの議論を先導しまとめた上で関係団体の支持を受け、ICANN全体に提案したものです。結果として、この提案をきっかけに世界的な国際化ドメイン名の普及の動きへとつながっており、APTLDの大きな成果の一つとなっています。
また、堀田は2002年よりAPTLDのメンバーとして会合における発表や議論への参加を通じ、APTLDの活動に貢献しています。また、堀田は、ICANNに設置された支持組織の一つであるccNSOの評議委員を2004年6月より務めており、その活動において積極的な貢献を行うなどインターネットコミュニティへの継続的な貢献を行ってきました。今回のAPTLD理事への選出は、堀田のこれまでのAPTLDへの貢献やccNSOの評議委員としての活動や成果が評価されたものと考えます。
今後の展望
APTLDでは今後、IDN ccTLDや新gTLDのレジストリが増加していく新時代の到来を迎える中、APTLDをどのような組織にしていくかを検討し、その実現に向けた取り組みを進めていくことになります。APTLDではこれを目的としたワーキンググループ「Mission and Objectives WG」を創設しており、JPRSの堀田が議長に就任しています。
今後、ワーキンググループにおける活動を通じ、アジア太平洋地域のインターネットコミュニティへの一層の貢献を図っていく予定です。APTLDはそれに加え、従来から進めてきた会員間の技術、運用、ポリシー情報の交換への取り組み、各ccTLDレジストリ間の連携の強化やICANNなどのグローバルなコミュニティに対するアジア太平洋地域の視点からのインプットなどにもこれまで以上に取り組んでいきます。
ワーキンググループ「Mission and Objectives WG」について発表する
JPRS 取締役の堀田博文
次回のAPTLD会合
次回のAPTLD会合はAPNIC会合と併催の形で、2013年8月に中国で開催される予定です。
本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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