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ドメイン名関連会議報告

2013年

ICANN北京会合報告

2013年4月7日から11日にかけて、第46回ICANN Meetingが中国の北京で開催されました。

本会合の参加登録者数は約2,600人と前回のICANNトロント会合の約1,500人から大きく増加し、これまでにおける最大規模のICANN会合となりました。中国国内からの登録者は約700人でしたが、これら中国国内からの参加者を中心に会合への初参加を示す「New Comer」のバッジをつけた参加者が目立ちました。

今回の会合では、CNNICとDotAsia Organisationがメインスポンサーとなった「Youth Forum in ICANN」及び「Children's Forum in ICANN」というフォーラムが開催されました。フォーラムには世界各国から10代の若者・子供が参加し、若者や子供の視点から見たインターネットが抱える課題とその解決に向けた活動についての議論が行われました。参加した若者・子供はICANN本会議におけるPublic Forumでも今回の議論結果を踏まえた発言をするなど、参加者に強い印象を与えました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。なお、DNSSECワークショップなどの技術系のセッションについては、別号にて報告予定です。

  • IDN ccTLD導入に関する最新動向
    - IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討
    - IDN Variant TLD Program
  • ccNSO会合での話題から
    - ccTLDからICANNへの財政的貢献
    - インターネットガバナンスに関する議論
  • その他の内容・議論から
    - ICANN構造改革の進捗状況
    - 新gTLDレジストリ契約(Registry Agreement:RA)について
    - 2013年版レジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement:RAA)について
第46回ICANN会合(北京会合)でのオープニングの様子

第46回ICANN会合(北京会合)でのオープニングの様子

IDN ccTLD導入に関する最新動向

IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討

IDN ccTLDについては、早期に必要なIDN ccTLDを限定的に迅速導入するための「ファストトラックプロセス」による申請受付/委任がこれまで行われてきました。それと並行して、IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(PDP)(*1)」の検討も、WG 1とWG 2という二つのワーキンググループで進められてきました。なお、JPRSはいずれのワーキンググループにも参加しています。

今回の会合ではPDPの策定に関する議論が進められました。IDN ccTLDの文字列や委任に関する検討はIDN PDP WG 1で、IDN ccTLD導入に際して必要となるICANN定款見直しの検討はIDN PDP WG 2で検討を実施してきましたが、前回のトロント会合においてそれぞれのワーキンググループの議論が収束したことを受け、議論結果を記した文書の最終的な確認が行われました。

(*1)
ICANNの役割の一つに、インターネット資源の調整業務に関連するポリシー策定があり、このポリシー策定のための一連の流れをPDP(Policy Development Process)と呼びます。

検討結果の文書は、それぞれccNSO(*2)評議委員会にて採択されました。今後ccNSOメンバーによる投票を経た後、IDN ccTLDに関する恒久的ルール及びccNSOに関するICANN定款の変更をICANN理事会に対し提案する予定です。

(*2)
ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体として、ICANNの他の支持組織や委員会などと協調しながらccTLD全体にまたがるグローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行う役割を担います。

また、国名として認識すべき文字列についての検討は研究グループ「Study Group on Use of Names for Countries and Territories」で進められています。この研究グループにも、JPRSがメンバーとして参加しています。ワーキンググループでは今回UNESCOとの協働により、各国が国名をどのように取り扱っているかについての調査を実施しました。現在、これらの議論や調査の結果を踏まえた最終報告書の作成を進めています。

IDN Variant TLD Program

「IDN Variant TLD Program Project 2.1」は、DNSルートゾーン用のラベル生成ルール「RootLGR(Root Label Generation Rules)」を作成するための活動で、ルートゾーンで使用可能な国際化された文字を追加するための手続きの策定を目的としたプロジェクトです。

本プロジェクトにはJPRSの米谷嘉朗がIDNの専門家の立場で参加しており、2013年3月22日に活動結果をまとめた最終報告書を提出し、活動を完了しました。その後、当該報告書は2013年4月11日のICANN理事会で承認され、RootLGRが完成しました。RootLGRの完成に伴い、個別の言語や文字の追加や異体字ルールの作成に関する「生成パネル(Generation Panel)」、及び生成パネルが作成したルールを統合する「統合パネル(Integration Panel)」の活動が開始されることになります。

ccNSO会合での話題から

ccTLDからICANNへの財政的貢献

ICANNに対するccNSOからの財政面での貢献について、前回のトロント会合後に行われた調整の状況が報告されました。

報告では、ccTLDからICANNに対して具体的にどの程度の貢献が必要なのかという根拠を、以下の三つのカテゴリーに分類して検討しています。

  • 1. IANA契約など、直接的なサポート関連
  • 2. ICANN会合時の会場提供など、間接的なサポート関連
  • 3. 各ワーキンググループの活動サポート関連

その結果、三つ目の各ワーキンググループの活動サポート関連については、各ccTLDで実施しているIGF(インターネットガバナンスフォーラム)関連活動などにより、知見がICANNと共有されたりICANN活動の啓発が行われたりしていることでICANN側の利益ともなっており、費用として計上すべきではないという合意がなされました。

そのため、残りの二つに関する費用をccTLDからICANNに対する貢献の根拠として検討することとなり、その結果370万米ドルが貢献額として妥当であるという結論に至りました。ワーキンググループではこれを基に、ICANNに対して各ccTLDが支払う金額のあり方についての検討を開始しています。

今回の会合では、各レジストリが管理するドメイン名数に対応させた費用負担案が発表され、活発な議論が行われました。本セッションにおける議論内容を基に、引き続き、支払額モデルの検討をワーキンググループにて進めていく予定です。

インターネットガバナンスに関する議論

ccNSO会合では2012年の後半から国際連合の専門機関の一つである国際電気通信連合(以下、ITU)の定める「国際電気通信規則(以下、ITR)」が、インターネットにも適用されるのではないかという動きに関する議論が行われてきました。ITRの改正には、ITU内の世界国際電気通信会議(以下、WCIT)の開催が必要とされており、2012年12月に開催されたWCITの内容に注目が集まっていました。

今回のccNSO会合では、今後開催される各種インターネットガバナンスに関する議論の動向を引き続き注視し、各国政府と連携を取り合って行動することが必要であることが確認されました。

また、ICANNが各国政府との間で進めている調整と各ccTLDレジストリがそれぞれの国や地域内において実施している活動との間の連携が十分に取れていないため、ICANNが現在進めている戦略の内容を提示してほしいという意見が参加者から出されました。この件についてはccNSO評議委員会とICANN理事会の間の会合でもccNSO側から質問事項として提示しましたが、今回はICANN側からの明確な回答は得られませんでした。

その他の内容・議論から

ICANN構造改革の進捗状況

4月8日に開催された「Opening Ceremony」において、ICANNのCEOであるFadi Chehade氏が「Our Season」と題したプレゼンテーションを行いました。これは、前回のトロント会合におけるプレゼンテーション「A New Season」の続きにあたり、前回と同様に今後のICANNが目指す方向性に関する強いメッセージ性を持つ内容となっていました。同氏はプレゼンテーションの中で、ICANNそのものがインターネットガバナンスにおける活動の中心となるのではなく、ICANNの役割はあくまでもインターネットの各コミュニティにおける活動であり、活動の主役は各コミュニティの参加者自身であるべきであるという所感を示しました。

また、同氏はICANN本部のあるロサンゼルスに加え、活動拠点をイスタンブールとシンガポールに新設し、3拠点体制とすることを発表しました。その上で24時間体制でのサービス提供を可能とし、米国法人であることに由来するさまざまな制約からの脱却を図っていくという決意を示しました。

さらに、今回新設する二つの活動拠点とは別に「協力センター(Engagement Center)」を世界中に設置する予定ですが、その第一号として、北京に設置することを発表しました。Chehade氏はプレゼンテーションの中で拡大し続ける中国のインターネット市場についても言及し、今後中国がインターネットコミュニティの中心となっていくであろうと述べるなど、中国を重視した発言が目立つ内容となりました。

新gTLDレジストリ契約(Registry Agreement:RA)について

4月1日付でICANNが提示した新gTLDプログラムにおけるレジストリの契約書案を基に、レジストリ側のグループである「Registries Stakeholder Group(RySG)」と新gTLDプログラムに応募した事業者のグループ「New TLD Applicant Group(NTAG)」の有志が、最終的な内容の合意に向け、会期中にICANN側と積極的な折衝を重ねました。

当初の計画では最初のレジストリ契約の締結を2013年4月23日としており、ニューヨークでの大々的なプレスイベントの実施も計画されていました。しかし、本会合後も、契約書の内容の合意に向けた折衝が継続されることとなったため、計画されていたプレスイベントは中止となりました。

今後、近日中に契約の最終案が公表され、パブリックコメントを経たうえでICANN理事会が「基本契約書」として採択する予定となっています。採択時期は早ければ2013年6月、遅くとも7月のダーバン会合において採択される見込みです。

今回の採択の遅れが委任前試験の実施など、他の新gTLDプログラムのスケジュールにどのような影響を与えるかについては、ICANNが精査を進めています。

2013年版レジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement:RAA)について

2011年から断続的に進められていたICANNとレジストラ側チームとのレジストラ認定契約の改訂交渉が会期中に妥結し、最終合意に至りました。

今回合意に至った内容は2013年3月7日にICANNが発表したレジストラ認定契約案における未合意内容を合意したもので、原案からの大きな変更はなかったとのことです。

本会議終了後の4月22日付で契約最終案が公開されており、5月13日までパブリックコメントの募集が行われています。その後、早ければ6月のICANN理事会で採択される可能性があります。

Public Forumの様子

Public Forumの様子

次回のICANN会合

次回の第47回ICANN会合は、2013年7月14日から19日にかけて南アフリカ共和国のダーバンで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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