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ドメイン名関連会議報告

2013年

ICANNダーバン会合報告

~ccTLDレジストリ関連の話題と新gTLDプログラムの進捗状況を中心に~

2013年7月14日から18日にかけて、第47回ICANN Meetingが南アフリカ共和国のダーバンで開催されました。

本会合の参加登録者数は約1,800人で、参加登録者のうち南アフリカ共和国の登録者が約100人になるなど、アフリカ地域からの参加者が多く見られました。

今回のICANN会合では、参加者がプレゼンテーションや質疑応答を聴講するだけでなく、より能動的な形で議論に参加できる運営形式が目立ちました。例えば、今回開催された「Creating a New ICANN 5-Year Strategic Plan(新しいICANN5カ年戦略計画の作成)」というプログラムでは、参加者を10人程のグループに分けてディスカッションを実施し、その結果を報告しあう形式が採用されました。また、そのディスカッションの結果が会場内の掲示板で共有されるなど新たな試みも実施されました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。なお、DNSSECワークショップなどの技術系のセッションについては、別号にて報告する予定です。

  • ccNSOに関連した話題から
    - ccTLDからICANNへの財政的貢献
    - IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討の状況
    - ICANNとccTLDによるラウンドテーブル
  • IDN Variant TLD Program
    - IDN Variant TLD Programの状況
  • その他の内容・議論から
    - ICANN構造改革の進捗状況
    - 新gTLDレジストリ契約について
    - 2013年版レジストラ認定契約について
第47回ICANN会合(ダーバン会合)でのオープニングの様子

第47回ICANN会合(ダーバン会合)でのオープニングの様子

ディスカッション結果を掲示

ディスカッション結果を掲示

ccNSOに関連した話題から

ccTLDからICANNへの財政的貢献

ccNSO(*1)ではこれまで、ICANNに対するccNSOからの財政面での貢献について、具体的にどの程必要なのかという根拠を検討してきました。その根拠を検討するにあたり、ICANNが実施しているccNSOへのサポートを以下の三つに分類しています。

  • 1. IANA機能を利用したccTLDの運用サポート
  • 2. ICANN会合時の会場提供など、間接的なサポート
  • 3. ICANNスタッフによるccNSO活動のサポート
(*1)
ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体として、ICANNの他の支持組織や委員会などと協調しながらccTLD全体にまたがるグローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行う役割を担います。

このうち、三つ目のICANNスタッフによるccNSO活動のサポートについては、各ccTLDで実施しているIGFに関連した活動などを通した知見がICANNに共有されることでICANN側の利益ともなっており、ccNSOが負担する費用としては計上すべきでないという合意がなされていました。

前回の北京会合では、残りの二つに関する費用として約350万米ドルが妥当であるとし、本件を検討するWGから提示された、各レジストリが管理するドメイン名数に対応させた支払額のモデル案について議論が行われました。

今回の会合では、ccTLDレジストリから寄せられた意見を参考に作成された新たなモデル案について、活発な議論が展開されました。今回の案では前回のものと比べ、ドメイン名の登録件数が少ないレジストリの負担額が少なくなっているのが特徴です。

会合ではメンバーから、このモデルがccTLDレジストリにICANNへの支払いを強制するものとなるのかという懸念が示されました。これに対しWGからは、今回提示した支払額のモデルはあくまでもガイドラインであり、ICANNに対して財政面から貢献を実施するかどうかは各ccTLDレジストリの判断に任されるべきであるとの回答がなされました。

WGでは今回の議論をもとに、支払額のモデル案についての検討を継続していく予定です。

IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討の状況

ICANNではこれまで、IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(PDP)(*2)」の検討が行われてきました。IDN ccTLDの文字列や委任に関する検討はIDN PDP WG1で、IDN ccTLD導入に際して必要となるICANN定款見直しの検討はIDN PDP WG2で進められてきました。JPRSはWG1にメンバーとして参加し、WG2ではJPRSの堀田博文が議長を務めています。

(*2)
ICANNの役割の一つに、インターネット資源の調整業務に関連するポリシー策定があり、このポリシー策定のための一連の流れをPDP(Policy Development Process)と呼びます。

各WGでの議論は既に収束しており、検討結果をまとめたそれぞれの文書がccNSO評議委員会にて採択されています。

当初の予定ではその後の流れとしてccNSOメンバーによる投票を経たのち、IDN ccTLDに関する恒久的ルール(ccPDP)及びccNSOに関するICANN定款の変更を、ICANN理事会に提案する予定となっていました。しかし、2013年5月から6月にかけて実施されたccNSOメンバーによる投票が65票と定足数(ccNSO会員数の過半数。投票実施時点では68票)に満たなかったため成立せず、2013年7月下旬から8月中旬にかけ、メンバーによる再投票が実施されることとなりました。ccNSO では、ccNSOメンバーの連絡先情報の適正化や各メンバーへの投票の呼び掛けにより、投票への参加をさらに推進していく予定です。

ICANNとccTLDによるラウンドテーブル

現CEO着任後、ICANNではこれまで、ラウンドテーブル(Roundtable:出席者の序列を定めずに実施する小規模な会議)を、関係業界ごとに開催してきました。今回のICANN会合では世界各地域のccTLD連合組織を対象としたラウンドテーブルが開催され、各地域から代表としてそれぞれ三つのccTLDが参加しました。アジア太平洋地域の代表として、.jp(日本)、.cn(中国)、.sg(シンガポール)の三つのccTLDが参加しています。

会議では、管理ポリシーや運用体制・規模が多様でかつ地理的に分散している各ccTLDに対し、ICANNの活動やポリシーを周知することや積極的な情報収集を実施することの難しさが議題となりました。そして、各ccTLDや各地域におけるccTLDの連合組織とICANNとが相互に協力し、ccTLD全体としての力の強化やグローバル社会への関与を高めていく必要性が共有され、そのための具体策をICANNとccTLDが協力して作り上げていくことが合意されました。

IDN Variant TLD Program

IDN Variant TLD Programの状況

「IDN Variant TLD Program」は、DNSルートゾーン用のラベル生成ルール(LGR:Label Generation Rules)を作成するための活動で、非ASCII文字をルートゾーンに追加するための手続きの策定を目的としたプロジェクトです。

本プロジェクトにはJPRSの米谷嘉朗がIDNの専門家の立場で参加しており、2013年4月、これまでの活動結果をまとめた最終報告書がICANN理事会で承認され、ルートゾーン用のLGRが完成しました。LGRの完成後、個別の言語や文字列の追加や異体字ルールの作成に関する生成パネル(Generation Panel)、及び生成パネルが作成したルールを統合する統合パネル(Integration Panel)の活動が計画されました。

2013年6月に、生成パネル及び統合パネルのメンバー募集がICANNからアナウンスされました。そして、今回の会合では、中国語、日本語、韓国語(CJK)に関するIDN Variantを生成する組織的な仕組みの構築に関するキックオフミーティングをJPRSの堀田博文が召集し、議長を務めました。

このミーティングには、ICANNと本件に関連する各ccTLDレジストリであるCNNIC(中国)、JPRS(日本)、KISA(韓国)、TWNIC(台湾)のメンバーが参加し、議論が進められました。今後、中国語、日本語、韓国語の三つの言語において生成パネルや調整機能(coordination function)を一つにするのか別々にするのかといった仕組み作りに関する検討を、メンバーであるCNNIC、JPRS、KISA、TWNICが協働で進めていくことになります。

JPRSでは、日本のインターネットコミュニティや言語の専門家との連携を探るとともに、中国語、日本語、韓国語に関する生成パネルのルール作成に積極的に参加していく予定です。

その他の内容・議論から

ICANN構造改革の進捗状況

7月15日に開催された「Opening Ceremony」に続く形で行われた「President's Opening Session」において、ICANNのCEOであるFadi Chehade氏が「On Track for the New Season」と題したプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーションではICANNが今後注力する取り組みとして、以下の事項が紹介されました。

  • 1. レジストリ契約やレジストラ認定契約の普及
  • 2. gTLDの次世代WHOIS「Next Generation Directory Service」の検討
  • 3. 各ステークホルダーとのさらなる協調

さらに、以下の五つの分野について「ICANN戦略パネル(The ICANN Strategy Panels)」を新設することが発表されました。

  • 1. 識別子技術の革新
  • 2. インターネット組織のエコシステムにおけるICANNの役割
  • 3. ICANNのマルチステークホルダーによる革新
  • 4. ICANNが負うべき公的責任の枠組み
  • 5. 将来のインターネットガバナンスにおけるICANNの役割
同氏からは、ICANN戦略パネルの活動計画として、2013年9月からオンライン上でのやり取りや電話会議を通した活動を開始することと、各パネルにおいて必要に応じた対面での直接的な議論を進めていくという基本方針が示されました。

ICANNでは従来から、ICANN戦略パネルに相当する機能として、「President's Strategy Committee(PSC)」という形で検討が進められてきました。今回Chehade氏が示した方針では、インターネットコミュニティに対しより開かれた形で各課題に取り組み、客観的な意見を広く取り入れていこうとするICANNの姿勢が打ち出されています。各パネルの議長にはDNSの発明者であるPaul Mockapetris氏やICANN前議長であるVint Cerf氏などが選ばれています。

また、ICANNの新しい活動拠点の一つとなるイスタンブールのオフィスへのスタッフの着任が開始されたことや、体制強化のためICANNのスタッフを現在の130人から200人へと大幅に増員する予定であることなども発表されています。

新gTLDレジストリ契約について

新gTLDレジストリがICANNとの間で締結する新gTLDレジストリ契約(RegistryAgreement:RA)について、2013年4月にICANNが契約書案を提示した後、レジストリ側のグループであるRegistries Stakeholder Group(RySG)及び新gTLDプログラムに応募した事業者のグループであるNew TLD Applicant Group(NTAG)の有志とICANNの間で、検討が進められてきました。

2013年7月2日、ICANN理事会は新gTLDレジストリ契約の基本契約書を採択し、翌7月3日、ICANNは新gTLDの申請者のうち要件を満たす申請者に契約手続きに必要な情報の提供を要請する案内を送付しました。このうち、7月12日までに所定の情報をICANNに返送した四つ(3組織)のTLD について、7月15日のOpening Ceremonyにおいて、RAの調印式が行われました。今回の調印式の実施は会議参加者には直前まで秘密にされており、こうした演出にもレジストリ契約の普及に対するICANNの力の入れようがうかがえます。

2013年版レジストラ認定契約について

2013年6月27日、ICANN理事会は認定レジストラが新gTLDの取次を行うために必要となる2013年版レジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement:RAA)を採択しました。これを受けて、新gTLDレジストリ契約と同様、7月15日のOpening Ceremony内にてRAAの調印式が行われました。今回の調印式において、ICANNは5組織との契約に調印しています。

今後、新gTLDプログラムの進行に伴い、RAやRAAのプロセスが進められていることになります。しかし、新gTLDプログラムのプロセスには現在も未決事項が数多く残っており、引き続き、今後の動向に注目が集まっています。

Opening Ceremonyにおける調印式の様子

Opening Ceremonyにおける調印式の様子

次回のICANN会合

次回の第48回ICANN会合は、2013年11月17日から21日にかけてアルゼンチンのブエノスアイレスで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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