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ドメイン名関連会議報告

2014年

ICANNロンドン会合報告

~ccTLDレジストリ関連の話題とインターネットガバナンスを中心に~

2014年6月23日から27日にかけて、第50回ICANN Meetingが英国のロンドンで開催されました。参加登録者数は3,343人と過去最高を記録し、シンガポールで開かれた前回会合の約1,800人から大幅に増加しました。参加者はレジストリやレジストラ関係者、インターネットガバナンス関係者に加えて、GAC(*1)のハイレベル会合が開催されたこともあり、通常より多くの政府関係者が参加しているのが目立ちました。また、会合への初参加を示す「New Comer」のバッジを着けた参加者も多く見られました。

(*1)
Governmental Advisory Committeeの略称。ICANNの諮問機関の一つで、各国政府などからの代表メンバーによって構成されます。GACは政府の立場からICANN理事会に対して助言を行っています。

今回の会合では、ICANNコミュニティ全体としてはインターネットガバナンスとICANNのアカウンタビリティ(説明責任)が話題の中心となり、数多くの関連セッションが設けられました。また、スポンサーブースでは、新たにサービスが始まった新gTLDのアピールが盛んに行われていたのが印象的でした。

最終日のPublic ForumではICANN理事を含め、フランス語やスペイン語、中国語など、英語以外での発言が多く見られ、ハブオフィスの設置に伴うスタッフの出身地域の多様化と共に、ICANNが「アメリカの団体」というイメージから脱却する傾向を強めていることが感じられました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

  • ccNSOに関する話題から
    - インターネットガバナンスに関する議論
    - gTLD業界から見たccTLDマーケットについて
  • IDN Variant TLD Program
    - IDN Variant TLD Programの動向
  • 新gTLDプログラムに関する話題から
    - 次回の新gTLD募集に向けた動き
オープニングセレモニーの様子

オープニングセレモニーの様子

ccNSOに関する話題から

インターネットガバナンスに関する議論

前回の会合でも主な話題の一つとなった「IANA transition」、つまり、

  • 現在、米国商務省電気通信情報局(NTIA)が契約主体となっているIANA機能やルートゾーン管理に関する契約の移行
  • IANAのオペレーションに関してNTIAが果たしている役割(IANAの機能遂行状況の監督、TLDの委任(delegation)可否判断など)の移行
について、各Supporting Organization(SO)/Advisory Committee(AC)などの代表により構成されるCoordination Groupのうち、ccTLDオペレーター枠(4名)を選ぶプロセスについて、ccNSOメンバーで議論を行いました。

代表となるメンバーの条件については、コミュニケーション能力と地域多様性への配慮が必要という方向で合意されました。また、IANA transitionの件だけでなく、ccNSOメンバーではないccTLDオペレーターとの情報共有や協力に関する働き掛けを今後も継続していくことが重要であるとの認識が共有されました。

ccNSO評議委員会では、ccNSO members meetingでの議論の採択文書の細部を詰めるための議論が行われ、Coordination Groupのメンバーを確定するまでのプロセスとスケジュールが採択されました。

また、ICANNのアカウンタビリティについては、ポリシー策定や財政面での透明性、現状で十分かどうかなど幅広く議論されました。

ICANNの活動のレビューは、Accountability and Transparency Review Team(ATRT)という枠組みによって実施されています。第2回目となるATRT2によって提示された改善提案についても、ICANN会合の最終日に開催されたICANN理事会において、全て採択されています。

一方で、IANA transitionに関する議論の中、特にポリシー策定面に関してはICANNのアカウンタビリティの改善が必要であるとの意見もあり、現IANA契約が失効する2015年9月に結論を出すため、IANA transitionに関連する部分についてはアカウンタビリティ全体に先んじて議論を行うべきとの声もありました。

gTLD業界から見たccTLDマーケットについて

今回、ccTLDレジストリの立場から欧州(.eu)、メキシコ(.mx)、香港(.hk)の各レジストリ、gTLDレジストラの立場からRegistrar Stakeholder Group(RrSG)議長、オランダレジストラ連盟理事らを迎え、「gTLDとccTLDで一つの規格は作り得ないのか?(Can we Standardise "One Size does not Fit All?")」と題したパネルディスカッションが実施されました。このパネルの進行/調整役は、コロンビア(.co)のレジストリが務めています。

gTLDレジストラ側からは「ccTLDならではの、各国の状況に合わせたサービスポリシー、技術規格の利用といった文化がレジストラの参入を阻んでいる」といった点が指摘されました。また、レジストリとレジストラ間のコミュニケーションをより綿密にし、お互いのビジネスモデルに対する理解を深めてはどうかといった提案が行われました。

パネリストとなっていた各ccTLDレジストリは、いずれもgTLDレジストラ側の意見に積極的に耳を傾けている様子でしたが、フロア全体のccTLDレジストリを中心とした参加者間からは、パネリストとの温度差も感じられました。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

IDN Variant TLD Program

IDN Variant TLD Programの動向

「IDN Variant TLD Program」は、DNSルートゾーン用のラベル生成ルール(LGR:Label Generation Rules)を作成するための活動で、非ASCII文字をルートゾーンに追加するための手続きの策定を目的としたものです。2013年4月にこれまでの活動結果をまとめた最終報告書がICANN理事会で承認され、ルートゾーン用のLGRが完成しています。

今回の会合では、中国語、韓国語、アラビア語、インド系言語などの言語ルールの生成パネル(Generation Panel)が立ち上がってきている状況が紹介されました。

また、漢字を共通に用いる「中国語、日本語、韓国語」(CJK)の連携について、ICANNの担当者及び中国、台湾、韓国、日本の関係者が集まり、CJKそれぞれの言語ルールの考え方と共通ルールの作り方についての議論が行われました。

CJKの言語ルールの作成については、

  • CJKがそれぞれ個別に言語生成パネルを設立する
  • 各パネルが議論を行い、各言語のルール案を作成する
  • CJKそれぞれの言語ルール案間の重複部分を調整・統合し、一つのルールを作成できるか確認する
という進め方が合意されており、現在その体制構築の準備を各国で行っています。

中国語(中国、台湾、マカオ、香港など)及び韓国語では、言語ルール生成パネルの初期的な体制が作られ、中国語圏におけるルールの具体的な検討が進められており、韓国では基本的な検討が始まっている段階です。

日本語に関してはJPRSの堀田博文から、関係者への呼び掛けを進めるなど生成パネルを立ち上げる途上の段階であることを報告しました。

新gTLDプログラムに関する話題から

次回の新gTLD募集に向けた動き

今回の会合中に開催されたGNSO評議委員会において、以下の内容を含む「New gTLDs Subsequent Rounds」が採択されました。

  • 申請者ガイドブックには「募集が終わってから1年後を目安に可能な限り早く次の募集を行う」と記されている。
  • GNSO評議委員会は、新gTLDの初回ラウンドの経験を議論し、次回募集に向けた課題を特定するためのディスカッショングループを設置する。
  • ICANN理事会のNew gTLD Program Committeeに対して、検討ポイントのGNSO評議会へのインプットを求める。
  • GNSO評議委員会はICANNスタッフに、必要とされている2012年ラウンドの各種レビューの状況と、現時点における次回ラウンドの予定の見込み状況の報告を求める。
これらの動きは、次回の新gTLD募集に向けたGNSO評議委員会レベルでの動きが始まったことを示しています。JPRSでは引き続き、この動向に注目していく予定です。

次回のICANN会合

次回の第51回ICANN会合は、2014年10月12日から16日にかけて米国のロサンゼルスで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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