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ドメイン名関連会議報告

2014年

ICANNロサンゼルス会合報告

~インターネットガバナンスとccTLDレジストリに関する話題~

2014年10月12日から16日にかけて、第51回ICANN Meetingが米国のロサンゼルスで開催されました。

本会合の参加登録者数は約2,500人で、英国のロンドンでの前回会合から減少したものの、DNS-OARC(*1)のワークショップと年次総会が併催されたことにより、レジストリやレジストラ、インターネットガバナンス関係者らに加えて、技術者の参加が多かったのが特徴的でした。

(*1)
DNS Operations, Analysis, and Research Centerの略称。DNSの運用・分析・調査研究などを通じ、DNSをより安全で高品質なものとすることを目的としています。

話題の中心は、引き続きインターネットガバナンスと新gTLDであり、数多くの関連セッションが設けられました。特にインターネットガバナンスに関しては概要紹介のセッションや専用のWGの活動紹介及び意見交換を行うためのセッションが設けられ、専門的な内容のセッションが増える傾向にある中で理解促進を図り、より広く意見を収集する姿勢がうかがえました。その他、オープニングセレモニーで米国商務省長官がスピーチを行ったことも注目を集めていました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

  • インターネットガバナンスに関する話題から
    - IANA transitionに関する議論
    - ICANNのアカウンタビリティについて
  • ccNSOに関する話題から
    - Framework of Interpretationについて
    - セキュリティに関する話題
    - JPRSの活動紹介について
  • その他の内容・議論から
    - 次回の新gTLD募集に向けた動きについて
    - 新gTLDにおける2文字ドメイン名の登録について
オープニングセレモニーの様子

オープニングセレモニーの様子

インターネットガバナンスに関する話題から

IANA transitionに関する議論

インターネットガバナンスにおいて主要な話題の一つとなっている「IANA(*2)transition」、つまり、

  • 現在、米国商務省電気通信情報局(NTIA)が契約主体となっているIANA機能やルートゾーン管理に関する契約の移行
  • IANAのオペレーションに関してNTIAが果たしている役割(IANAの機能遂行状況の監督、TLDの委任(delegation)可否判断など)の移行
については、NTIAがIANA機能の監督権限を保持する現契約が失効する2015年9月までに、グローバルなマルチステークホルダーのコミュニティに権限を移管する提案の検討が行われています。

(*2)
Internet Assigned Numbers Authorityの略称。現在はドメイン名、IPアドレス、プロトコル番号などのインターネット資源を管理するICANNの一機能として運用されています。

今回の会合では、IANA transitionにより影響のあるステークホルダーの代表者からなる調整機関であるIANA Stewardship Transition Coordination Group(ICG)などを中心に、検討状況の共有や意見交換が行われました。

これまでに、IANA機能をプロトコル、IPアドレス、ドメイン名の分野に分け、各分野でNTIAが果たしていた役割の整理と代替案作成を実施してきており、その検討状況は以下の通りとなっています。

  • プロトコル:IETFにて検討中
  • IPアドレス:RIR(Regional Internet Registry)ごとに検討を行い、一つの提案としての調整予定
  • ドメイン名:ICGとは別に、Generic Names Supporting Organization(GNSO)、Country Code Names Supporting Organisation(ccNSO)、At-Large Advisory Committee(ALAC)、Security and Stability Advisory Committee(SSAC)でCross Community Working Group(CWG)を立ち上げ、ドメイン名におけるIANA機能の監督権限機能の移管について検討中
ドメイン名分野の検討では、議論はCWGのメンバーだけでなく、議論専用のメーリングリストに登録した誰もが参加可能であるとして、政府担当者にも一ステークホルダーとしての積極的な参加が呼び掛けられました。今後、3分野で作成された提案は2015年1月にICGに提出され、調整が行われた後、ICANN理事会に対して提案が行われる予定です。

ICANN理事会を経て最終提案が確定することについて、ICANN理事からは「内容について判断を下すのではなく、その作成プロセスがマルチステークホルダーの意見を反映するものであったかを判断する」と明確に発言し、ICANNが主体ではなく、コミュニティが主体であることが強調されました。

ICANNのアカウンタビリティについて

ポリシー策定や財政面での透明性、現状で十分かどうかなど、幅広く議論が行われてきたICANNのアカウンタビリティについても、IANA transitionと同様に、3分野それぞれで検討を行うこととなりました。

その結果、プロトコルとIPアドレスではIANAの果たす役割は簡明であるため、ICANNという組織形態を変更する必要はなく、現状のままでよいとの結論に至りました。ドメイン名に関しては、IANA機能の監督権限移管の検討とは異なるWGを設立し、引き続き検討を行うこととなっています。

ccNSOに関する話題から

Framework of Interpretationについて

TLDの委任などに関するフレームワークの作成を目的として、DNSの構造と委任に関する既存のポリシー(RFC1591)についての解釈を行ったFramework of Interpretation(FoI)WGから最終報告書の概要が紹介され、主な用語の解釈が以下の通り示されました。

  • 委任(Delegation)
    IANAオペレーターがccTLDの運用責任を初めて割り当てること、及び、IANAオペレーターが運用者への委任を解約したccTLDについて、新たに運用責任を割り当てること
  • 移管(Transfer)
    IANAオペレーターが現ccTLD運用者と新ccTLD運用者双方の合意をもって運用責任を移すこと
  • 解約(Revocation)
    IANAオペレーターが既存のccTLD運用者の責任を廃止すること
最終報告書は10月15日のccNSO評議委員会にて承認されました。引き続き、Governmental Advisory Committee(GAC)への意見照会が行われた後、ICANN理事会に提出されます。最終的な承認は次回のICANN会合で行われる予定です。

セキュリティに関する話題

Secure Email Communication for ccTLD Incident Response(SECIR)WGでは、2014年6月に最終報告書を作成して活動を終了したContact Repository Implementation(CRI)WGの活動を継承し、インシデント発生時のコンタクト情報の保管とメールによる情報共有サービスの段階的実施を検討しています。CENTRやLACTLDといった地域ccTLDの連合体との連携も視野に進めており、ccNSOの一部だけでなく、ccTLD全体を巻き込むサービスとして検討することを予定しています。

その他、「.il(イスラエル)」では、DDoS攻撃やフィッシングなど、1日当たり150,000件以上の攻撃があり、情報漏えいの件数も毎年40%のペースで増えているという現状が紹介されました。その上で、必要とされる対策について話され、攻撃の分析や適切な機器の設置、スタッフの指導、事前のシミュレーションといった準備が挙げられました。

JPRSの活動紹介について

JPRSの堀田博文からは、「Prefecture-type JP domain names and its IDN version」と題して、JPRSが2012年にサービスを開始した都道府県型JPドメイン名を紹介しました。

2014年11月3日よりセカンドレベルドメイン部分に当たる全国47都道府県の名称部分(都道府県ラベル)に、アルファベットだけでなく、日本語を使ったドメイン名も登録できるようになることについて、サービス導入の経緯や背景とともに説明を行いました。

その他の内容・議論から

次回の新gTLD募集に向けた動きについて

前回会合におけるGNSO評議委員会での決議を受けてGNSO内に設置されたNew gTLD Subsequent Procedure Discussion Groupが、暫定議長の下で打ち合わせを重ね、次回募集に向けて検討を要する課題のリスト作成に取り組んでいます。

今回の会合で開催された打ち合わせでは、2014年内に報告書をまとめ、コメント募集後にGNSO評議委員会にて報告書が採択され、2015年第1四半期にGNSOのポリシー検討プロセスの開始を目指すというタイムラインが示されました。

新gTLDにおける2文字ドメイン名の登録について

新gTLDのRegistry Agreement(RA)で明示的に禁止されている2文字ドメイン名の登録サービスの許可を求めるレジストリオペレーターは、ICANNが用意しているRegistry Services Evaluation Process(RSEP)にその申請を行っていますが、プロセスが完了したTLDは出ていない状況にあります。

そのような中、最終日に開催されたICANN理事会で、gTLD空間において2文字ドメイン名の登録が安全性・安定性に影響を与えるとは認められないとして、ICANNスタッフに対して2文字ドメイン名の開放に向けた手続きを進めることを指示する旨の決議が採択されました。

当事者であるレジストリオペレーターからは、具体的な内容に欠ける理事会の決議に対する困惑の声と、今後どのような効果を与えるのかという実務上の疑問が呈されている状況にあります。このためRegistries Stakeholder Group(RySG)では、ICANNスタッフと対話を行い、新gTLDにおいて2文字ドメイン名の登録が可能な状況を早期に実現すべく動くことを確認し、質問状の作成とRySG電話会議へのICANNスタッフの参加を要請することとなりました。

次回のICANN会合

次回の第52回ICANN会合は、2015年2月8日から12日にかけてモロッコのマラケシュで開催される予定でしたが、ICANNより開催地をシンガポールに変更すると発表がありました。詳細については関連URI内のICANNのアナウンス一覧ページをご覧ください。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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