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ドメイン名関連会議報告

2015年

ICANNシンガポール会合報告

~インターネットガバナンスとccTLD、新gTLDに関する話題を中心に~

2015年2月8日から12日にかけて、第52回ICANN Meetingがシンガポールで開催されました。

本会合の参加登録者数は約1,800人で、全体としては引き続き、インターネットガバナンスに関する情報共有と議論が中心となりました。

オープニングスピーチでは、ccNSOやGNSOなどICANNに関連する組織の代表者らが自らの組織の紹介を行いました。今回、それぞれの組織が持つ経緯の共有がICANNコミュニティ全体に行われたことについては、ICANN会合初参加者だけでなく参加経験者にも好意的に受け入れられているようでした。

また、最終日に行われたパブリックフォーラムでは、英語を使わずにそれぞれの母語を使った発言が、参加者からだけでなく理事からも多く行われ、言語の多様性に関する配慮が今回も行われていました。今回の開催地が当初予定されていたモロッコのマラケシュからシンガポールに変更されたことについて参加者から懸念が表明されるなど、ICANNには言語の多様性と同様、会合の参加者層や開催地などさまざまな点において、より一層のバランスが求められていくと考えさせられる会合となりました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

  • インターネットガバナンスに関する話題から
    - IANA監督権限の移管に関する議論
    - ICANNのアカウンタビリティに関する議論
  • ccNSOに関する話題から
    - Framework of Interpretationについて
    - セキュリティに関する話題
  • その他の内容・議論から
    - IDN TLDに関する話題
    - 新gTLDに関する動向
    - APAC Spaceの開催
オープニングセレモニーでccNSOの紹介を行うccNSOのByron Holland議長

オープニングセレモニーでccNSOの紹介を行うccNSOのByron Holland議長

インターネットガバナンスに関する話題から

IANA監督権限の移管に関する議論

インターネットガバナンスにおいて主要な話題の一つとなっているIANA(*1)監督権限の移管(IANA Stewardship Transition)、つまり、

  • 現在、米国商務省電気通信情報局(NTIA)が契約主体となっているIANA機能やルートゾーン管理に関する契約の移行
  • IANAのオペレーションに関してNTIAが果たしている役割(IANAの機能遂行状況の監督、TLDの委任(delegation)可否判断など)の移行
については、NTIAがIANA機能の監督権限を保持する現契約が失効する2015年9月までに、グローバルなマルチステークホルダーのコミュニティに権限を移管できるようにするための体制作りが求められています。

(*1)
Internet Assigned Numbers Authorityの略称。現在はドメイン名、IPアドレス、プロトコル番号などのインターネット資源を管理するICANNの一機能として運用されています。

それを受けICANNでは、IANA機能をドメイン名、IPアドレス、プロトコルの分野に分け、各分野でNTIAが果たしていた役割の整理と代替案の作成を実施してきています。

作成された3分野からの提案は、IANA Stewardship Transitionにより影響のあるステークホルダーの代表者からなる調整機関として組織されたIANA Stewardship Transition Coordination Group(ICG)が調整した上で、NTIAに提出することになっており、当初は2015年1月末より調整が開始される予定となっていました。

しかし、ドメイン名の分野の提案がまとまらなかったため、今回の会合においては状況及び課題の共有と、それに対する意見募集に関するセッションが複数設けられ、検討が進められました。会合中に結論には至りませんでしたが、引き続き2015年6月をめどに提案を固める作業を続ける予定となっています。

ICANNのアカウンタビリティに関する議論

ポリシー策定や財政面においてICANNが十分に説明責任を果たすことができているかなど、幅広く議論が行われているICANNのアカウンタビリティ(説明責任)についても、IANA Stewardship Transitionと同様に、3分野それぞれで検討が行われてきています。IPアドレスとプロトコルでは前回会合までに、IANAの果たす役割は簡明であるためICANNという組織形態を変更する必要はないとの結論に至っています。

ドメイン名に関しては、ICANNのアカウンタビリティを検討する際の主な要素であるコミュニティ、理事会、規則、独立した監査体制の4点や、ストレステストについての検討を行っているCross Community Working Group(CCWG)on Enhancing ICANN Accountabilityにより情報共有と意見収集の場が設けられました。しかし、結論が出るには至らず、引き続き検討が行われることとなりました。

ccNSOに関する話題から

Framework of Interpretationについて

TLDの委任などに関する枠組みの作成を目的として、RFC 1591で定義されているDNSの構造と委任に関する既存のポリシーについての解釈を行い、主な用語の解釈などについて検討を実施してきたFramework of Interpretation(FoI)WGの最終報告書は、GAC(*2)への意見照会が行われ、ICANN理事会で承認を得ました。

(*2)
Governmental Advisory Committeeの略称。ICANNの諮問機関の一つで、各国政府などからの代表メンバーによって構成されます。GACは政府の立場からICANN理事会に対して助言を行っています。

これに伴い、これまで委任や移管を実施する際にICANN、IANAが参照していたGAC Principles 2000、ICANNが公開しているICP-1などの文書については今後は参照せず、RFC 1591及びその解釈を根拠とするように対応が進められる予定です。

セキュリティに関する話題

Secure Email Communication for ccTLD Incident Response(SECIR)WGでは、インシデント発生時に各ccTLDレジストリの担当者が緊急に情報を共有できるメーリングリスト(TLD-OPS list)の運用方法について検討を進めています。

メーリングリストには、.jpを含むいくつかのccTLDレジストリからメンバーが加入しています。JPRSからも斉藤仁と堀五月の2名が登録しており、既に試験的な運用を開始しています。

なお、SECIR WGは6月に行われる予定のICANN会合にて活動を終了し、正式運用に移行する見込みとなっています。

その他の内容・議論から

IDN TLDに関する話題

新gTLD導入プログラムでは国際化ドメイン名(IDN)によるTLDも申請可能となっており、既にいくつかのIDN TLDの運用が始まっています。そのような状況において、TLDにおける各言語の文字列の取り扱いに関しても、それぞれの状況を考慮した共通ルールを早期に策定することが求められています。

本会合で開催されたIDN Workshopでは、JPRSの堀田博文より日本語生成パネル(Japanese Generation Panel:JGP)(*3)の活動に関するプレゼンテーションを行いました。

(*3)
DNSのルートゾーンにおける新gTLDの日本語文字列が従うべきルールを検討し、ICANNに対して提案を行うことを目的としたパネルで、2015年2月6日にICANNに提案書が提出されました。

プレゼンテーションでは、JGPの立ち上げについてICANNに提案したことや作業の洗い出しがほぼ完了したことなどが発表されました。また、漢字の取り扱いに関する共通ルールについては、日本語と同じく漢字を使用する言語である中国語と韓国語のパネル(CGP、KGP)の他、ICANNや各言語の文字列ルールを統合する検討チーム(Integration Panel:IP)との調整を行い、整合性のあるルールの統合を進めていかなければならないことなどを確認しました。

新gTLDに関する動向

新gTLDの次回募集に向けたコミュニティの動きは停滞している状況にありますが、ICANNスタッフは、2012年に開始した現在の新gTLDの導入に関するレビュー作業のプロセスと改訂版のスケジュールを本会合前に発表し、今回の新gTLD関連セッションで周知を行いました。

レビューは次回募集に向けた検討の最初のステップと明確に位置付け、評価対象項目の具体化が図られました。また、すべてのレビューの終了時期については、2017年第2四半期になる見通しであることが示されました。

この他、500を超える新gTLDが委任される中でGlobal Domain Division(GDD)は、レジストリ・レジストラ向けサービスの安定的提供と拡充に向けた取り組みに力を入れていることを、GDD Updateのセッションで発表しました。また、ICANNとの決済を米ドル以外で可能とする準備、レジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement:RAA)締結時の企業総合保険について、加入要件の見直しを進めていることなど、グローバルサービスの提供主体への変化を印象付ける取り組みも改めて発表されました。

APAC Spaceの開催

2014年3月に行われたICANNシンガポール会合で、「New Asia gTLD Registries and Registrars Initiative」という形で開催された意見交換の場を母体として、それを発展させる形でICANNと契約関係を持つ組織を中心に、情報交換とアジア太平洋地域のレジストリ、レジストラとしての意見の形成、ICANNスタッフとの対話を目的にAPAC Spaceというセッションが開催されました。

今回のセッションにはアジア太平洋地域のレジストリ、レジストラなどが集まり、新gTLD導入後の各国の市場動向紹介が行われた他、アジア太平洋地域におけるICANNのアウトリーチ活動について、レジストリ契約(Registry Agreement:RA)やRAAが英語であることに起因する言語障壁とそれを解決するための各国語訳のレベル向上の要望などについて、ICANNスタッフを交えた意見交換が行われました。

情報交換の場、多くのICANNスタッフと話ができる場として有用といった意見が上がり、今後もICANN会合の際にこのような場を設けていくことなどが確認されました。

次回のICANN会合

次回の第53回ICANN会合は、2015年6月21日から25日にかけてアルゼンチンのブエノスアイレスで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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