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ドメイン名関連会議報告

2015年

ICANNダブリン会合報告

~インターネットガバナンスとccTLDレジストリ関連の話題を中心に~

2015年10月18日から22日にかけて、第54回ICANN Meetingがアイルランドのダブリンで開催されました。

本会合の参加登録者数は2,222人で、開催地がアイルランドであったためか、ヨーロッパ地域からの参加者が多く見られました。会合全体としては、今回もIANA監督権限の移管やICANNのアカウンタビリティ(説明責任)など、インターネットガバナンスに関する話題が中心となりました。

オープニングセレモニーでは、ICANN CEOのファディ・シェハデ(Fadi Chehade)氏が「ICANNはインターネットリソースの技術/運用の調整(テクニカルコーディネーション)機関であり、インターネットの利用方法やコンテンツが適切かどうかを判断したり、取り締まるような役割は担わない」と述べるなど、インターネットガバナンスに関する議論を背景に、今回もICANNの役割を強調する場面が見られました。

また、2016年3月でICANNのCEOを退任することを表明しているシェハデ氏に代わる次期CEOの選出に関しても、年明けに発表する予定で進捗していることを明らかにしました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

  • インターネットガバナンスに関する話題
    - IANA監督権限の移管について
    - ICANNのアカウンタビリティについて
  • ccNSO会合での話題
    - ICANNのアカウンタビリティに関する議論
    - ICANN会合の開催形態変更に関する検討
  • Whois/RDSに関する話題
    - .com/.net/.jobsのThick Whoisへの移行
    - WhoisからRDAPへの移行
  • その他の内容・議論から
    - 新gTLDに関する動向
    - IDN TLDに関する話題

インターネットガバナンスに関する話題

IANA監督権限の移管について

IANA(*1)監督権限の移管(IANA Stewardship Transition)、つまり、

  • IANAの機能遂行状況の監督、TLDの委任(delegation)最終判断など、IANAのオペレーションに関して米国商務省電気通信情報局(NTIA)が果たしている役割の移管
  • 現在、NTIAが契約主体となっているIANA機能やルートゾーン管理に関する契約の移管

については、グローバルなマルチステークホルダーのコミュニティに権限を移管できるようにするため、計画の策定と移管後の受け入れ体制の検討が行われています。

(*1)
Internet Assigned Numbers Authorityの略称。ドメイン名、IPアドレス、プロトコルパラメーターなどのインターネット資源を管理するICANNの一機能です。

2015年6月に開催された前回の会合では、ドメイン名、IPアドレス、プロトコルの各分野の提案が出揃い、その後ICANN理事会及びNTIAに提出するための一つの提案にまとめるべく、ICG(*2)での統合作業が行われてきました。本会合では、その進捗についてICGより報告が行われ、意見募集の結果、おおむねコミュニティの支持を得られたとして、一緒に提出することが求められているICANNアカウンタビリティに関する提案の完成を待つ状態となりました。

(*2)
IANA Stewardship Transition Coordination Groupの略称。IANA監督権限の移管に関するステークホルダーの代表者からなる調整機関です。

ICANNのアカウンタビリティについて

NTIAは、IANA監督権限移管の条件として、移管後のIANA機能の安定運用を保証できるような提案をICANNに要請しており、それに対し、ICANNに十分なアカウンタビリティを持たせるための方法に関する議論がなされています。

今回の会合では、CCWG-Accountability(*3)とICANNの各種コミュニティとで議論を行うセッションが設けられ、ワーキンググループのコミュニティに対する情報共有と意見聴取のための時間が多く取られました。その中で、CCWG-Accountabilityが作成した、ICANNのアカウンタビリティ強化に関する提案の第二版に対する意見募集の結果も紹介されました。各セッションを通じて聴取した意見を踏まえ、今後もワーキンググループでの議論が行われる予定です。

(*3)
Cross Community Working Group on Enhancing ICANN Accountabilityの略称。ICANNのアカウンタビリティ検討に関する、コミュニティ横断型ワーキンググループ。

また、IANA監督権限の移管期日を1年間延長(2016年9月)したものの、今後も必要な議論を行いながら検討を進めていくことが重要であるとの全体認識が共有されました。

CCWG-Accountabilityのセッションの様子

CCWG-Accountabilityのセッションの様子

ccNSO会合での話題

ICANNのアカウンタビリティに関する議論

IANA監督権限の移管とICANNのアカウンタビリティについては、ccNSO会合でも話題の中心となり、CCWG-Accountabilityの提案第二版に対する意見募集の結果を分析し、ccNSOメンバーに対して内容のレクチャーと進捗の共有が行われました。

当初、会合の終わりにccNSOメンバー全体で提案に対する支持を表明することが目標とされていましたが、ccNSOメンバー内での合意が得られず、CCWG-Accountabilityとしても進め方が固まっていなかったことから、ccNSO会合参加メンバーのコメントや、会合の様子も参考に、引き続きCCWG-Accountabilityでの検討を行うこととなりました。

なお、2016年9月の提出期限までにNTIAに提案を行うためには、本会合中に提案を完成させることが必要でしたが、期限に間に合わせることで十分な検討が行われないということはあってはならないとして、今後の集中的な検討や意見募集期間の短縮などにより、期限に間に合うように最大限努力すべきであるなどの意見が出ました。

ICANN会合の開催形態変更に関する検討

ICANN会合の規模拡大に伴い、開催地の用意やローカルホストの負担の増加が問題となってきています。この状況を踏まえ、年に3回開催されるICANN会合は、2016年以降、以下の通り開催規模に変化が付けられる予定となっています。

  • 1回目:現状と同規模
  • 2回目:Supporting Organization(SO)/Advisory Committee(AC)の活動中心
  • 3回目:現状と同規模、ICANNの活動紹介、年次総会

2回目の会合は各SO/ACのみの集まりとなり、現在よりも規模が縮小されることから、開催ホストへの要件が現在よりも緩和される見込みとなっています。今回のccNSO会合では、この2回目の会合におけるccNSO会合の開催要否と内容について議論が行われました。

結論として、ccNSOのみの集まりとするのではなく、理事会やGAC、GNSOなどのコミュニティと共通テーマについて議論を行う枠を確保してはどうかといった提案が出されました。また、2016年はこれまでと同様の内容でccNSO会合を試験的に開催することとし、参加者の数や会合開催後のフィードバック次第で、2017年以降についての開催要否検討を行うこととなりました。

Whois/RDSに関する話題

Whoisなど、レジストリ登録情報の検索サービスをRegistration Directory Services(RDS)と言います。ICANNでは、次世代RDSを実現するプロトコルとしてRDAP(*4)の検討が進められています。

(*4)
Registration Data Access Protocolの略称。ドメイン名などの登録情報にアクセスするためのプロトコルです。URIによりデータが渡され、JSON(JavaScript Object Notation:JavaScriptのオブジェクト表記方法に由来する簡便なデータ記述法)の形式で応答が返されます。

WhoisからRDAPへの移行

現在のWhoisには、「出力書式が規格化されていない」「国際化対応されていない」「認証機構がない」といったプロトコル上の問題点が存在しています。

そのため、Whoisプロトコルの置き換えを目的としたRDAPの標準化作業がIETFで進められ、2015年3月にRFC 7480~7484として標準化されました。本会合ではWhoisのRDAPへの移行についても議論が行われました。

ICANNは2016年~2017年にかけてRDAPを実装し、Whoisとの並行期間を設けて移行を進めたい考えですが、引き続き検討が行われる予定となっています。

.com/.net/.jobsのThick Whoisへの移行

ドメイン名の登録情報をインターネット上で参照するためのWhoisには、レジストリのモデルの違いにより、以下の二つの形式が存在します。

  • Thin Whois :レジストリは登録者の情報を持たず、レジストラが持つ
  • Thick Whois:レジストリが登録者の情報を持つ

本会合では、.com/.net/.jobsのWhoisをThinからThickに移行すること(*5)について、レジストリであるVerisignとICANNの担当者から説明が行われました。移行については、2015年6月まで法的見地からのレビューが行われ、その後、ICANNのImplementation Review Teamと関係組織の専門家により実装の詳細が議論されてきました。今後も引き続き実装の計画について調整が行われる予定となっています。

(*5)
レジストリ・レジストラモデルが作られた1999年当時は「レジストリは小さくあるべきである」という考え方があり、.com/.net/.orgにThin Whoisが導入されました。現在は、Verisignが運用を担っている.com/.net/.jobsのみがThin Whoisを採用しています。

その他の内容・議論から

新gTLDに関する動向

現在、2012年に行われた新gTLD募集(新gTLDプログラム)に対する各種レビューが行われている状況にありますが、本会合ではその進捗状況や報告書の内容説明が行われました。現時点でレビューは予定通りに進行中で、2017年6月に完了する見込みとなっています。

また、次回募集時期が2018年~2019年頃になるのではないかという見込みに変化を与えるような具体的な動きは本会合では見られませんでしたが、GNSOのレジストリ部会(Registries Stakeholder Group:RySG)及びレジストラ部会(Registrar Stakeholder Group:RrSG)の合同会合で、ICANNの幹部から「必ずしもレビューの完了が次回募集の前提ではない。レジストリ・レジストラが次回募集に向けての動きを加速させたいのであれば、理事会にその旨インプットしてほしい」という旨の発言がありました。

IDN TLDに関する話題

新gTLD導入プログラムでは、国際化ドメイン名(IDN)によるTLDも申請可能となっており、既に運用を開始しているIDN TLDもあります。さまざまな言語の文字が使えるIDNにおいては、

  • 字形は似ているが、異なる言語の文字であり、一目では区別がつかないもの
  • 字形は異なるが、意味・読み・発音は同じもの(異体字)

などといった、利用者に混乱を招く可能性のある文字が存在します。また、異体字に対してはそれぞれを等価とみなしたいという要求も存在しています。そのため、現在の新gTLD導入プログラムは人手での審査を行ってきました。しかし、このような方法での申請文字列のレビューには限界があるため、要求を考慮した共通ルールの早急な策定が求められています。

IDN Program Update及びIDN Root Zone LGR Workshopでは、共通ルール策定のために活動している各言語生成パネル(Generation Panel:GP)から状況報告が行われ、アラビア語やアルメニア語ではルール作りがほぼ完了し、キリル文字やラテン文字などでも活動が始まったことなどが共有されました。

日本語生成パネル(Japanese Generation Panel:JGP)の状況及び、漢字を含むTLDラベルのルールを検討している中国語生成パネル(CGP)、JGP、韓国語生成パネル(KGP)間の調整活動状況については、JGPチェアであるJPRSの堀田博文が報告を行いました。

次回のICANN会合

次回の第55回ICANN会合は、2016年3月5日から10日にかけてモロッコのマラケシュで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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