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ドメイン名関連会議報告

2020年

第67回ICANN会合報告

~ICANN会合初となるリモート開催、ccTLD関連の話題を中心に~

2020年3月7日から12日にかけて、第67回ICANN会合(ICANN67)がリモート参加のみの形式で開催されました。

本会合は、当初メキシコのカンクンで開催される予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大が国際的な緊急事態となったことを受け、ICANN理事会は支持組織(Supporting Organization:SO)や諮問委員会(Advisory Committee:AC)、各種ワーキンググループ(WG)のリーダーたちと協議を重ねました。その結果、ICANNコミュニティの健康と安全を保護することを最優先事項とし、ICANN会合始まって以来初となるリモート参加のみの開催を決断しました[*1]。すべての会議は、ICANN65から本運用されているビデオ会議ツールの「Zoom」を利用して行われました。ICANNの発表によると、本会合の参加者数は1,752名でした[*2]。

[*1]
ICANN to Hold First-Ever Remote Public Meeting
https://www.icann.org/news/announcement-2020-02-19-en

年3回開催されるICANN会合のうち初回に当たる本会合は、「バーチャル コミュニティフォーラム」という形式で行われました[*3]。今回はリモート開催となったことを受け、当初予定されていたオープニングセレモニーは実施されず、各プログラムの開催判断はSO及びACに任されました。結果として全体のプログラム数は通常の半分以下になるという異例の会合となりました。

[*3]
ICANN会合は、規模や内容の異なる三つの形式(MEETING A~C)をローテーションして開催されます。本会合は本来「コミュニティフォーラム」のMEETING Aに該当する形式で開催される予定でした。
https://meetings.icann.org/en/future-meeting-strategy

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って報告します。

  • ccTLD関連の話題
    - ccNSO関連セッションの開催状況
    - ccNSO評議委員会に関する話題
    - JPRSの堀田博文がccNSO評議委員を退任
  • gTLD関連の話題
    - gTLD追加に関する今後の手続きの検討
    - GDPRを遵守したWhoisサービスに関するポリシー策定
  • その他の話題
    - ルートDNSサーバーのガバナンスに関する話題
    - ISOCによるPIR売却に関する話題
    - ICANN Open Data Platformについて

リモート開催されたパブリックフォーラム1の様子

リモート開催されたパブリックフォーラム1の様子

ccTLD関連の話題

ccNSO関連セッションの開催状況

本会合がリモート参加のみでの開催となったことを受け、ccNSO評議委員とccNSO内の委員会のチェア、WGの議長は、リモート会合の開催内容について意見交換する電話会議を2020年2月24日に行いました。その結果を受け、ccNSOは2020年2月27日に会期中のスケジュール変更について発表しました[*4]。その結果、ccNSO会合とTechDayは非開催となり、予定されていたプログラム[*5]は次回のICANN68での実施を検討することとなりました。また、ccNSO評議委員会は本会期中にリモート開催されましたが、WG及び委員会は本会合の一部としては開催されず、それぞれ通常の年間スケジュールに沿って個別に行われました。

[*4]
Update on the ccNSO schedule for ICANN67
https://ccnso.icann.org/en/announcements/announcement-24feb20-en.htm

ccNSO評議委員会に関する話題

2020年3月12日に開催されたccNSO評議委員会には、ICANNスタッフ及び傍聴者を含む30名以上が参加しました。冒頭ではccNSO評議委員会の実施形式における変更について発表がありました[*6]。ccNSO評議員会はこれまで、年3回の対面会合だけが傍聴可能でしたが、ccNSOの透明性と説明責任を更に強化するために、今後のccNSO評議委員会においては特に明記しない限り、電話会議も含めてすべて公開実施することとしました。

[*6]
all Upcoming ccNSO Council Meetings now open to observers
https://ccnso.icann.org/en/announcements/announcement-09mar20-en.htm

ccNSO評議委員会では、議長及び副議長の選任が行われました。通常、役職者の選任は選挙によって行われますが、今回は役職者の定数と立候補者数が同じであったこと、役職者3名はそれぞれICANNが定める地域区分において別の地域から就任するという条件を満たしていたことから選挙は行われず、以下の通りccNSO評議委員会の役職者が決まりました。

  • Chair      : [再任] Katrina Sataki    (.lv:欧州)
  • Vice-Chair  : [再任] Alejandra Reynoso (.gt:中南米・カリブ)
  • Vice-Chair  : [新任] Pablo Rodriguez  (.pr:北米)

また、ccNSOの評議委員はICANNが定める地域区分のすべての地域から均等に構成されることになっているため、これまでも、全評議委員が参加する電話会議の開催時刻設定が全員に平等でないという普遍的な問題を抱えた状況にありました。今回改めて「開催時刻における平等とは何か」という問題提起があり、この問題については今後の評議委員会で議論することとなりました。

JPRSの堀田博文がccNSO評議委員を退任

JPRSの堀田博文が、本会合をもってccNSO評議委員を退任しました。堀田は、2004年のccNSO設立時から16年にわたり評議委員を務めてきました。

ccNSO評議委員会の終盤では議長のKatrina Sataki氏から堀田に向けて、16年の長きにわたるccNSO評議委員会及びccNSOに対する貢献に対して謝辞が贈られ、参加者からは盛大な拍手が起こりました。堀田は「ccNSOは会員数という量[*7]において、また、議論の内容といった質の両面において、この16年間で大きく発展した」と述べ、引き続きMルート運用者の立場を中心にICANNの活動に関わっていくことを表明しました。

[*7]
2004年のccNSO設立時、約40のccTLD管理組織だったccNSO会員は、現在(2020年4月時点)約170組織に増加しました。

gTLD関連の話題

gTLD追加に関する今後の手続きの検討

GNSOに設置された、gTLD追加に関する今後の手続きを検討するWG(New gTLD Subsequent Procedure Policy Development Process Working Group:SubPro WG)は、次回募集に向けたルールの検討に向け、2020年6月頃までに最終報告書案を作成し、パブリックコメントの期間を経て、2020年末までにGNSO評議委員会に対する最終報告書を提出するスケジュールを示しました。

一方で、本会合におけるGACの声明では、GAC Communiqueの報告書[*8]において、SubPro WGの活動に進捗があったこと及びパブリックコメントに向けた準備が進んでいることを評価する一方で、過去に提出されたコメントも考慮するべきであるという見解が示されています。


GDPRを遵守したWhoisサービスに関するポリシー策定

EUの一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)を遵守したWhoisサービスに関するポリシー策定については、2018年7月にGNSOが設置した簡易ポリシー策定プロセス(Expedited Policy Development Process:EPDP)チームにて最終報告書(EPDPフェーズ1報告書)を取りまとめました。ICANN理事会が2019年5月にそれを採択した後、現在は実装レビューチームによるポリシー勧告の分析及びポリシー文書(Registration Data Policy for gTLD)の作成が進められていますが、実装までの全体的なスケジュールについては明言されていない状況となっています。

EPDPチームは最終報告書の作成完了後、2019年5月からフェーズ2の活動を開始しています。フェーズ2では、主に非公開登録データのアクセス/公開に関する検討を行っており、2020年2月7日にInitial Report(初期報告書)を公開し、2020年3月23日までパブリックコメントの募集を行いました。今後は最終報告書をGNSO評議委員会に提出することを目指して作業が進められる予定ですが、Whoisで公開されている登録情報の正確性に関しては、フェーズ2での検討対象とするかどうかチーム内で意見が分かれており、今後のスケジュールに関する具体的な見通しについては言及されませんでした。

その他の話題

ルートDNSサーバーのガバナンスに関する話題

RSSAC[*9]では、2016年10月にIANAの監督権限がグローバルなマルチステークホルダーコミュニティへと移管されて以降、ルートDNSサーバーシステムのガバナンスモデルに関する新たな枠組みを検討してきました。

[*9]
Root Server System Advisory Committee(ルートサーバーシステム諮問委員会)の略称。ICANNの諮問委員会の一つで、各ルートDNSサーバー(ルートサーバー)の運用管理者及びその運用に関わる組織によって構成されています。ICANN理事会に対して、ルートDNSサーバーシステムのオペレーションに関する助言を行う役割を担います。JPRSの堀田博文が、ルートDNSサーバーの運用者代表の一人として参加しています。

本会合では、RSSACのEmpowered Community(EC)[*10]への参加について議論が行われました。これまで、RSSACはIANA監督権限移管の際には限られた範囲での活動のみを行うことを理由にECに参加していませんでした。しかし、今後は2018年6月にICANN理事会に提示されたRSSAC037[*11]及びRSSAC038[*12]をベースとしたRoot Server Operator(RSO)のガバナンスに関する議論が進み、実装されるタイミングにおいて、RSSACはECへ参画するべきとの合意が形成され、その意見を公に表明することとなりました。

[*10]
グローバルなマルチステークホルダーコミュニティの意思決定メカニズムです。ECは、ICANNの理事会や組織のアクションに対して適宜申し立てを行うことにより、ICANNのアカウンタビリティ(説明責任)を確保するものです。
[*11]
「RSSAC037 A Proposed Governance Model for the DNS Root Server System」
https://www.icann.org/en/system/files/files/rssac-037-15jun18-en.pdf
[*12]
「RSSAC038 RSSAC Advisory on a Proposed Governance Model for the DNS Root Server System」
https://www.icann.org/en/system/files/files/rssac-038-15jun18-en.pdf

ISOCによるPIR売却に関する話題

本会合では、パブリックフォーラム[*13]が2回開催されました。パブリックフォーラムでは、2019年後半より注目を集めているInternet Society(ISOC)による「.org」のレジストリであるPublic Interest Registry(PIR)の売却案[*14]に関して、活発な議論が行われました。

[*13]
ICANNの理事会メンバーに対して、希望するすべての参加者がマイクの前で直接意見を述べる機会が与えられるセッションです。本会合では、会期3日目と最終日である6日目の2回開催されました。
[*14]
2019年11月13日、ISOCがPIRを投資会社のEthos Capitalに売却する方向で基本合意に至ったことが発表されました。PIRは、2002年から「.org」の管理・運営を行っています。

セッションの冒頭では、ICANN側から、PIR売却に関してICANNがRegistry Agreementに基づき対応できる事項について説明され、その後質問が受け付けられました。参加者からは、非営利団体から営利企業に管理及び運営の権限が移ることに対する懸念や、売却の経緯に関する不透明性についての質問が多く挙げられました。ICANN理事会はコミュニティの意見を聞くことに徹したため、その場で質問に対する回答や見解の表明は行われず、セッションの2日後にスタッフからの回答付きの議事録[*15]が公開されました。その中で、ICANNは「.org」のレジストリオペレーターの移管取引における透明性をコミュニティに示すべく、引き続き活動する姿勢を示しました。

[*15]
11 March 2020 Responses to Questions from ICANN67 Public Forum 1
https://static.ptbl.co/static/attachments/237792/1583976880.pdf

ICANN Open Data Platformについて

2020年3月11日に開催された「ICANN Open Data」では、ICANN Open Data Platform[*16]の主な機能の紹介及びコミュニティからの意見募集が行われました。

[*16]
ICANN Open Data Platform
https://opendata.icann.org/pages/home-page/

ICANN Open Data PlatformはルートサーバーのトラフィックやTLDのドメイン名登録数など、ICANNが収集・管理するデータの透明性とアクセス性を向上させることを目的として、2018年3月に開催されたICANN61で検討・実装が開始され、この度の公開に至りました。ICANN Open Data Platformで公開されているデータは、ICANN SSO(Single Sign On)アカウント[*17]を持っていれば誰でも参照することができます。

ICANN Open Data Platform及び公開されているデータの詳細は、以下の資料をご参照ください。
https://static.ptbl.co/static/attachments/237784/1583945049.pdf

[*17]
ICANN SSOアカウントの概要及び取得方法などについては、以下をご参照ください。
https://account.icann.org/help

本件については、参加者から高い関心が寄せられており、ユーザーインターフェースが英語以外の言語においても提供される可能性の有無や、統計情報などに含まれるccTLDのデータの情報源などについて、数多くの質問が寄せられました。ICANNのスタッフはこれらの質問に回答した上で、現在利用可能であるデータからユーザーが新しい知識を学び、導き出すことを期待していると述べました。また、ICANN Open Data Platformの更なる発展において、ユーザーからの意見や要望の重要性を強調し、フィードバックを積極的に募集する見解を示しました。

次回のICANN会合

第68回ICANN会合は、現時点では2020年6月22日から25日にかけてマレーシアのクアラルンプールで開催される予定です。しかし、3月20日にccNSOが「ICANN68はリモート開催となる可能性が高い」と発表しており[*18]、開催形式は未定となっています。

[*18]
Planning for a Virtual ICANN68 Policy Forum
https://ccnso.icann.org/en/announcements/announcement-30mar20-en.htm

※更新履歴
2020/04/10 2020年4月9日、ICANNは第68回ICANN会合がリモート参加のみで開催されることを発表しました。
https://www.icann.org/news/announcement-2020-04-09-en

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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