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JPRS トピックス&コラム No.006
JPRSではルートサーバーの一つであるMルートサーバーを、WIDEプロジェクトと共同運用しています。
ルートサーバーの役割と歴史、現在の管理運用体制について解説します。
名前解決の仕組み
インターネットにおける名前解決、つまり、あるドメイン名に対応するIPアドレスを調べるための仕組みについて、簡単におさらいしておきましょう。
クライアントは、あらかじめ指定されたフルリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)に名前解決を依頼します。依頼を受けたフルリゾルバーは各ゾーン(ドメイン名)を管理する権威DNSサーバー群に対し反復問い合わせと呼ばれる問い合わせを実行し、得られた結果をクライアントに返します(図 1)。
▼ルートヒントとルートサーバー
フルリゾルバーは名前解決に当たり、最初の手掛かりとするための権威DNSサーバーの情報を知っている(事前設定しておく)必要があります。この情報はルートヒントと呼ばれ、インターネット上のルートサーバーの一覧が指定されます。フルリゾルバーはルートヒントを参照することで、最初に問い合わせるべきルートサーバーの情報を取得します。
ルートサーバーの役割
ルートサーバーは、インターネットに接続されているすべてのトップレベルドメイン(TLD)の権威DNSサーバーの情報を管理しています。ルートサーバーの情報がインターネット全体で一元管理されることで、インターネットの特徴の一つである名前空間の一意性(*1)が実現されます。
このように、ルートサーバーはDNSを正しく機能させインターネットにおける名前空間の一意性を確保するという、重要な役割を担っています。
ルートサーバーの歴史
ルートサーバーの歴史は、DNSがインターネットで使われ始めた1980年代にさかのぼることができます。BIND 4.8に付属の1987年11月19日版のルートヒント(root.cacheファイル)の内容を、図 2に示します。
当時のルートサーバーの数は現在よりも少なく、かつすべてのサーバーが米国内に設置されていました。その後、インターネットの発展とともにルートサーバーの数も徐々に増強され、米国以外の国にもルートサーバーが設置されるようになりました。
1995年にはDNSプロトコル上の効率化を図るべく、ルートサーバーのドメイン名が x.root-servers.net に統一されました。更に1997年には四つのルートサーバーが増設され、合計13系列となりました。
ルートサーバーの管理運用体制
2017年10月現在のルートサーバーの一覧と、それぞれの運用組織を表 1に示します。米国の非営利法人ICANNが管理運用の責任を負い、各ルートサーバーを担当する組織間における緩やかな連携のもと、各組織が独自に行うという形式で運用されています。
また、ICANNではルートサーバーの安定運用のため、Root Server System Advisory Committee (ルートサーバーシステム諮問委員会: RSSAC)と呼ばれる委員会を設置しています。RSSACはDNSサーバーの運用経験者を含む専門家により構成され、ルートサーバーの運用について、ICANNに助言を行っています。
ルートサーバーとIP Anycast
ルートサーバーやccTLD/gTLDの権威DNSサーバーといった、インターネットの安定運用にとって重要なDNSサーバーには、一つのサービス用IPアドレスを複数のサーバーで共有することにより負荷分散や冗長化を図る、IP Anycastの導入が進められています(*2)。
ルートサーバーでは13系列すべてにIP Anycastが導入されており、合計750以上のサイトが世界中で稼働しています(図3)。
M-RootはWIDEとJPRSが共同運用
m.root-servers.net(M-Root)は日本、そして東アジア地域に初めて設置されたルートサーバーです(*3)。M-Rootの運用は1997年に開始され、2005年からWIDEプロジェクトとJPRSにより共同運用されています。M-Rootには2004年からIP Anycastが導入されており、東京(三つ)、大阪、ソウル、パリ(二つ)、サンフランシスコの計八つのサイトが稼動しています。
すべての名前がインターネット全体で同じ意味を持つこと。
IP Anycastの技術的詳細については、JPRSトピックスコラムNo.005「DNSのさらなる信頼性向上のために」をご参照ください。
現在ではM-Root以外のルートサーバーも日本に設置されています。
掲載内容は2017年10月のものです。