2015年の多くのニュースの中から、ドメイン名ニュース担当者が選んだ大きな話題を五つご紹介します。
1新gTLDが続々登場、800種類以上に
2014年に引き続き、2015年も新gTLD関連のニュースが話題となりました。 ICANNによるgTLDの導入プロセスは2000年と2003年の過去2回ありましたが、どちらも導入するgTLDの数や種類に制限がありました。しかし、2012年に申請受け付けが実施された3回目の募集では、これらの制限がなく、企業名やブランド名などもgTLDとして申請できるようになり、その結果、申請件数は1,930件に上りました。
現在、申請内容に関する審査やICANNとのレジストリ契約などが順次進められており、2015年12月11日時点で838の新gTLDが委任されています。JPRSが申請していた研究開発用のTLD「.jprs」も、2015年7月8日に委任が完了しました。
また、委任が完了した新gTLDには、登録の受け付けを開始しているものもあり、2015年12月16日時点で、新gTLDの総登録数は約1,080万件となっています。新gTLDの中には「.xyz」や「.top」のような一般文字列だけでなく、企業名やブランド名の新gTLD(ブランドTLD)の利用も始まっており、2016年以降もさまざまな新gTLDを活用した事例が登場することが予想されます。
ICANNでは現在、今回の新gTLDの募集に対するレビューを行っています。レビューの完了は2017年6月の予定となっており、4回目の募集は2018~2019年頃と見込まれています。
2インターネットの管理・運用に関する議論とIANA監督権限移管の延期
2014年に引き続き、2015年もインターネットガバナンスを始めとする、インターネットの管理・運用に関する議論が活発に行われました。
インターネットガバナンスとは、インターネット全体を円滑に機能させるための体制及び体制整備の活動のことで、IANAが管理するIPアドレスやドメイン名といったインターネット資源の管理のあり方もその一つです。
特にICANNでは、従来米国商務省電気通信情報局(NTIA)が担当してきたIANA機能の監督権限をグローバルなマルチステークホルダーのコミュニティに移管するための計画策定と移管後の受け入れ体制を検討する、いわゆる「IANA transition」が会合の主要な話題の一つとなり、議論が進められてきています。
IANA監督権限の移管については、当初NTIAとICANNの間の契約が満了する2015年9月までに体制作りが行われる予定でしたが、検討に時間を要しており、契約を延長して引き続き検討を行っています。また、NTIAは、移管の条件として、移管後のIANA機能の安定運用を担保できるような提案をICANNに要請しており、それに対し、ICANNに十分なアカウンタビリティ(説明責任)を持たせるための方法に関しても、引き続き議論が行われています。
インターネットガバナンスに関する議論には、インターネットコミュニティからの意見と議論が必要不可欠です。JPRSも、2000年の設立当初よりインターネットに関連する議論は、オープンかつボトムアップで多様なマルチステークホルダーが参加して推進されることを支持しており、上記の会合・会議にも積極的に参加し、意見を表明してきています。
JPRSでは8月、国連の経済社会局(DESA)が実施した「世界情報社会サミット(WSIS)提言」の実現状況などに関する意見募集に対し、意見を提出しました。また、12月にはインターネットガバナンスのあり方に関し、ISOCを始めとするインターネット関連団体及び個人による共同声明に対し、賛同表明を行っています。
3DNSサービスの信頼性確保へ、「電気通信事業法等の一部を改正する法律」が可決成立
生活インフラとして欠かせなくなったインターネットの基盤であるDNS。インターネットの社会的重要性が増す中で、2015年はDNSにかかわる法律の動向が注目されました。
2015年4月、電気通信事業法等の一部を改正する法律案が国会に提出され、5月に可決成立しました。その中には、ドメイン名の名前解決を行うDNSのサービスに関する信頼性などの確保についての内容が含まれており、ccTLD及び地理的名称gTLDのレジストリ、及び大規模なDNSホスティング事業者を電気通信事業法の規律対象とすることが決まりました。
本法案については、2013年10月に総務省の情報通信審議会において「ドメイン名政策委員会」が設置され、2014年11月までの1年間にわたって、TLDとそのDNSの管理運営に関する信頼性や透明性の確保のあり方についての検討が進められてきました。ドメイン名政策委員会で取りまとめられた報告書は、2014年12月18日に開催された情報通信審議会総会に提出されました。
電気通信事業法等の一部を改正する法律の施行は公布の日(2015年5月22日)から1年以内とされており、今後、具体的な内容が施行規則(省令)等として定められていく見込みです。
4IETF、APRICOT-APAN、W3C、インターネット関連の国際会議が日本国内で開催
2015年は、インターネット関連のさまざまな国際会議が日本国内で開催された一年でした。
記憶に新しいのが、11月1日から6日にかけて横浜で開催された第94回IETF Meeting(以下、IETF 94)です。IETF(The Internet Engineering Task Force)は、インターネット技術の標準化を推進する団体で、1986年にIAB(Internet Architecture Board)によって設置されました。IETFにおける技術仕様はRFC(Request for Comments)として文書化され、広く参照されています。JPRSの技術者は従来からIETFに積極的に参加し、RFCの著者となるなど、インターネット技術の標準化に貢献しています。IETF 94 は2009年の広島での開催以来3度目となる日本での開催であり、JPRSもスポンサーとして協賛し、運営への協力を行いました。
また、2月24日から3月6日にかけて、APRICOT-APAN 2015が福岡で開催され、2005年に京都でAPRICOTが開催されて以来、10年ぶりの国内開催となりました。APRICOT(Asia Pacific Regional Internet Conference on Operational Technologies)は、アジア太平洋地域におけるインターネットインフラの発展のため、必要な知識や技術の向上を目指し開催される非営利のフォーラムです。APAN(Asia-Pacific Advanced Network)は、同地域における学術ネットワークプロジェクトの相互接続を調整する非営利の団体で、ネットワーク基盤から応用までの幅広い情報を共有しながら研究・発表活動を行ってきています。2015年は、この二つの国際会議がAPRICOT-APAN 2015として共同開催され、アジア太平洋地域のインターネットにさまざまな形でかかわる参加者が福岡に集いました。
APRICOT-APANの開催に合わせて、2月26日と27日の2日間、アジア太平洋地域のccTLD連合組織であるAPTLD(Asia Pacific Top Level Domain Association)の会合も福岡で開催されました。JPRSは、APRICOT-APAN 2015に協賛するとともに、APTLD会合ではローカルホストを務めました。
IETF 94の前週の10月26日から30日にかけ、TPAC 2015が札幌で開催されました。TPACは、World Wide Webで利用される一連の技術の標準化を進めることを目的として1994年に設立された非営利団体であるW3C(World Wide Web Consortium)の年次総会の通称で、今回が初めての日本開催となりました。
5JPドメイン名の登録数が140万件を突破
2015年9月1日、JPドメイン名の登録数が140万件を突破しました。内訳は、「○○○.jp」という形式の汎用JPドメイン名が全体の67.6%と最も多く、「○○○.co.jp」「○○○.ne.jp」といった属性型・地域型JPドメイン名が31.6%、「○○○.東京.jp」のようにセカンドレベルドメイン部分に都道府県ラベルを含む都道府県型JPドメイン名が0.8%となっています。
日本国内に住所があれば個人・組織を問わず、また登録できる数にも制限のない汎用JPドメイン名の登録数が最も多い結果となりました。また、属性型・地域型JPドメイン名の中では、日本国内に登記されている企業のみが登録できる「co.jp」の登録数が増加しており、2015月9月1日時点では約38万件となっています。「co.jp」は、上場企業の97%が登録するなど、コーポレートサイトなどに最適なドメイン名として、多くの企業にご登録いただいています。
番外編:新gTLD「.jprs」におけるISPとの共同研究を開始
2015年7月8日、JPRSがICANNに申請していた新gTLD「.jprs」が、ルートサーバーから委任されました。
「.jprs」はインターネットに関する研究・開発の場として活用されることを主目的としたTLDです。 JPRSでは2015年10月、DNSサーバーの分散配置による耐障害性強化に関する共同研究を国内のインターネットサービスプロバイダー(ISP)と開始しました。本研究では、「.jprs」のDNSサーバーをJPRSの管理外ネットワークであるISP内のネットワークに設置することで、JPRSとISP間のネットワークが分断される状況下においても、TLDのドメイン名の名前解決が継続的に提供可能となることを検証します。
JPRSでは、本研究への参加を希望するISPを幅広く募っています。