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増刊号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004-11-26━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.26 ◆ ━!JP━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━JPRS━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 第61回IETF Meeting報告 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第61回IETF Meetingが2004年11月7日から12日にかけて、米国首都ワシントン で開催されました。多くのテーマが議論されるIETFの中から、ここではDNSや ENUM、レジストリ技術に関する話題を中心にお届けします。 ◇ ◇ ◇ ■IEPG(Internet Engineering and Planning Group) Meeting IEPGは、インターネットサービスオペレータで構成される、インターネット全 体に関する運用環境や運用技術に関する技術的調整を円滑に進めるためのグルー プです。主に地域インターネットレジストリ(RIR)オペレータやTLDオペレー タ等が報告・議論を行っています。 今回のRIRからの報告で特筆すべき点は、RIRからローカルインターネットレジス トリ(LIR)やISPへのIPv6アドレスの割当が米国内でも増えている、という部分で す。アジア、ヨーロッパに続き、ついに米国でもIPv6への取り組みが本格化して きたと言えます。 また、米国のccTLDである.usで、レジストリシステムでの運用経験蓄積を目的 としたDNSSECトライアルを開始したという報告がありました。 ■DNSSEC Deployment Working Group 今回のIETFでは、DNS関連のWGが開かれていない時間帯を利用して、DNSSEC Deployment Working Groupの会議が集中的に行われました。このWGはIETFの活動 とは別にDNSSECの普及を目指して有志によって組織されたもので、定期的な電話 会議やメーリングリストにより議論を行っています。 今回のWGでは、DNSSECにより問い合わせた名前の不存在を証明する際に必要とな る要求事項、ルートドメイン(.)における鍵の公開(publish)に関する課題につい ての議論などが集中的に行われました。 ■DNSEXT(DNS Extensions) WG DNSEXT WGは、DNSの各機能の拡張に関する議論を行うためのWGです。 今回のWGでは、DNSの応答パケットに間違って返事しないようにするための提案 が行われました。DNSでは問い合わせと応答が同一のパケットフォーマットであ るため、実装によっては、DNSパケットのループを起こさせることによりDoS攻撃 を起こすことが可能となってしまいます。今回の提案は、この防止を目的として、 プロトコル仕様を明確化するためのものです。 また、前述のDNSSEC Deployment WGにおける名前の不存在証明に関する議論内容、 および現在までの進捗状況が報告されました。現在のDNSSECではある方法でゾー ン内の全データを芋づる式に入手することが可能になっていますが、今回の会議 ではこれを防ぐために必要となる技術的要件に関する議論が集中的に行われまし た。この議論は今後も継続していくことになります。 ■DNSOP(Domain Name System Operations) WG DNSOP WGは、DNSを運用するにあたっての問題点や運用に関する手法を議論し、 DNS運用に関する標準的手法を確立するためのWGです。 JPRSからは、NTTの研究者とともに、DNS権威サーバでTCPによるDNS検索をフィ ルタしている場合に発生するキャッシュサーバの負荷上昇問題について報告し、 キャッシュサーバの負荷を低減する方法の提案を行いました。これは、NTT研究 所とNTTコミュニケーションズ、JPRSの技術者・研究者の共著で、NANOG32会議で 報告を行った内容の一部をまとめ直したものです。この提案については参加者か らいただいたコメントも参考にしながら、今後さらに考察を深めていく予定です。 また、報告した問題も含め、全体としてDNSは将来的にどうあるべきかの議論を 今後進めていく必要があるとの指摘を行いました。 発表資料:「DNS authoritative server misconfiguration and a countermeasure in resolver」 http://jprs.jp/tech/material/IETF61-bad-dns-auth-fujiwara.pdf http://jprs.jp/tech/material/id/draft-fujiwara-dnsop-bad-dns-auth-01.txt 参考資料:「NANOG32 meeting: DNS Anomalies and Their Impact on DNS Cache Servers」 http://www.nanog.org/mtg-0410/toyama.html ■ENUM(Telephone Number Mapping) WG ENUM WGは、ENUM技術の標準を決め、運用のための技術資料を作成し、ENUM運 用に関する情報交換を行うためのWGです。 ENUMのプロトコルはすでに決定し、ENUMで対応するサービスの登録の運用も定 まっています。そのため、今回はENUMを実装する上で必要になる各種プロトコル の拡張について議論され、電話を表すTEL URIや、EPPの拡張案、さらにCRISPの 拡張が提案されました。また、国番号1を共有する北アメリカ地区19ヶ国での ENUM実装について報告されました。 JPRSも参加しているENUM実装上の問題点を指摘した提案(*1)については、提案 内容に対する追加要望を30日間待ったのちに標準化を進めていくこととなりまし た。 (*1)http://jprs.co.jp/enum/enum_info/document/draft-ietf-enum-experiences-01.txt ■CRISP(Cross Registry Information Service Protocol) WG CRISP WGは、これまでのWhoisを機能的に置き換え、ドメイン名情報などのイン ターネット資源情報を検索するための新しいプロトコルを検討するWGです。 今回の会議では、このところの懸案であるRIRによるCRISP実装、高速・低負荷な ドメイン名存在確認プロトコルの提案について議論が行われました。 今回の議論においてこれらのドキュメントに加えられたコメントを反映すること で、WG last callを経て今後RFC化される流れとなります。 ■IDNPROV(Internationalized Domain Name Provisioning) BoF ICANNによりIDN登録仕様が定められたことを受けて、今回、ドメイン名などの インターネット資源の登録・管理を行うためのプロトコルであるEPP(Extensible Provisioning Protocol)をIDN対応に拡張すべきであるという提案が行われまし た。 この議論を行うために行われたIDNPROV BoFでは、その背景として - IDNの言語を指定するLanguage-Tagを追加する必要があること - 中国語ドメイン名においては、簡体字/繁体字を同列に扱う必要 があること などがあり、このためにWGを作って議論する必要がある、という主張がなされま した。 これを受けた議論として、 - EPPはそもそも拡張性があるので、レジストリごとにローカルルール で拡張すればいいのではないか - EPP要件にあっているかの確認から始めるべき - 現在のEPPでは問題があるという共通認識もない - ICANN会議におけるレジストリ・レジストラ間でのEPP議論の中で まずは行えばよい という意見が挙がり、現時点でのWG化は見送られることとなりました。 ■Plenary(全体会議) Plenaryではまず、今回の参加人数がIETFチェアから報告されました。それによ ると今回のIETF Meetingの参加人数は1,314人と、前回の1,511人よりも減少しま した。それに伴い、参加者の国別内訳も40ヶ国から28ヶ国へと大幅に減少してい ます。特に日本以外のアジア地域からの参加者の減少が著しいようです。 今回のPlenaryでは、ここ数年のIETFにおける懸案となっていたIETFの運営に関 する構造改革の最終案として、以下のような体制が提案されました。 IASA(IETF Administrative Support Activity) IETFの運営をサポートし、またISOCとの緊密な関係を保持する。 IAD(IETF Adnimistrative Director) IASAの活動に最終的な責任を持つ。メンバはISOCの職員から選出される。 IAOC(IETF Adnimistrative Oversight Committee) IASAとIADの活動を指揮・監督する。 IAB Chair、IETF Adnimistrative Directorに加え、投票により選出される 7人のメンバで構成される。 この体制により、IETFのより円滑な運営を目指すことになります。 この案は現在Internet-Draftとして公開されており、合意が取れ次第、他の標 準化プロセスと同様、RFCとして発行されることになります。また今回の改革は あくまでIETFそのものの円滑な運営のために実施され、IETFの標準化プロセスそ のものには変化はないことが、IETF ChairであるHarald Alvestrand氏から報告 されました。 ◇ ◇ ◇ ◎関連URI - IETFホームページ http://www.ietf.org/ - IETF Meeting情報 http://www.ietf.org/meetings/meetings.html - IEPGホームページ http://www.iepg.org/ - DNSSEC Deployment WGホームページ http://dnssec-deployment.org/ - 第60回IETF Meeting報告(2004年8月23日公開) http://jpinfo.jp/event/2004/0823ietf.html ━!JP━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━JPRS━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) http://jprs.jp/ http://日本レジストリサービス.jp/ 会議報告: http://jpinfo.jp/event/ メールニュース配信解除: http://jpinfo.jp/mail/ ご意見・ご要望・おたより: from@jprs.jp 当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、 ニュースグループまたは他のメディア等へ許可なく転載することを禁止します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C), 2004 Japan Registry Service Co., Ltd. 2004年11月26日