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増刊号

vol.69

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2007-04-04━
                    ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.69 ◆
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                     第68回IETF Meeting報告(後編)
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本号では前号に引き続き、APPAREA BoFとPlenary(全体会議)の内容について
お伝えします。

          ◇                     ◇                     ◇

■APPAREA BoF

APPAREA BoFは、アプリケーションエリアの各ワーキンググループ(WG)から
の報告や、かつて存在したWGが過去に標準化提案した事項に更新があった場合
などに、それらの議論の場として開催されています。

JPRSは今回のAPPAPREA BoFで、アプリケーションにおけるIRI 
(Internationalized Resource Identifier: 国際化URI)の取り扱いに関する
提案を行いました。

▼アプリケーションにおけるIRIの取り扱い

JPRSの米谷嘉朗が、メールの本文などの自由文のテキスト中にIRIが含まれて
いる場合に、メールソフト等のアプリケーションがそのIRIをどのように認識
して取り扱うべきであるかについての提案を行いました。

今回の提案は、アプリケーションにおける国際化ドメイン名の標準的な取り扱
いを確立するためのものであり、JPRSが2007年1月29日に発表した「日本語ド
メイン名URLクリック対応アプリケーション開発者ガイド~メーラー編~ 第2
版」を踏まえたものとなっています。

会場からは、IRIのIDN(国際化ドメイン名)部分については、他のアプリケー
ションにはACE(ASCII Compatible Encoding)形式で渡すべきである、IRIと
UI(ユーザインタフェース)における表現形式は分けて考える必要があるので
はないか、そもそもアプリケーションにおけるIRIの取り扱いは経験則に基づ
いたものであり、インターネットプロトコルを取り扱うIETFの議論対象外なの
ではないか、等のコメントが寄せられました。

JPRSでは、IRIのようなプロトコル要素のアプリケーションにおける取り扱い
についても、ユーザに統一化された利便性を提供すべきとの考えから、引き続
き開発者コミュニティに対する働きかけを継続していきます。

◎関連URI

    IRI recognition in Applications
    http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-yoneya-iri-recognition-00.txt

    日本語ドメイン名URLクリック対応アプリケーション開発者ガイド
    ~メーラー編~
    http://nihongojp.jp/support/mail_guide/dev_guide.txt

■Plenary

IETFでは各WGの会議以外に、参加者全体が一堂に会して行われるPlenary(全
体会議)が開催されます。PlenaryではIETF/IABや関連団体からの活動報告の
ほか、IETF全体として取り組むべき技術的課題が取り上げられ、議論されます。

▼経路制御とIPアドレスの再設計

今回のPlenaryではその課題の1つとして、経路制御とIPアドレスそのものの再
設計についての話題が取り上げられました。この活動は2006年10月にIABが開
催したRouting and Addressing Workshopをきっかけに開始されたものです。

今回の活動は、インターネット上の経路制御情報の増大に対するスケーラビリ
ティの確保、すなわちインターネットそのものの拡大に対する根本的な対応を
行おうとするものであり、今後のインターネットアーキテクチャに大きな影響
を及ぼすものです。

現在、インターネットに接続した機器を識別する識別子(ID)と、経路制御を
行うための位置指定情報(Locator)を分離する形でのアーキテクチャの検討
が開始されています。この課題は今後、IETFのルーティングエリアおよびイン
ターネットエリアにおいて取り上げられていく予定であり、これからの動きが
注目されます。

◎関連URI

    Routing and Addressing: where we are today
    http://www3.ietf.org/proceedings/07mar/slides/plenaryw-3.pdf

    RAM - Routing and Addressing Mailing List
    http://www1.ietf.org/mailman/listinfo/ram

■IETF/IABチェアの交代

今回のPlenaryでは、IETF、IAB双方のチェアが交代するという大きな出来事が
ありました。ここでは今回新たに就任した両チェアの簡単な紹介と、チェアの
交代がIETF、ひいては今後のインターネットの技術発展にどのような影響を及
ぼすかについて、解説を交えて報告します。

▼新IETFチェア、Russ Housley氏

2005年からIETFチェアを務めてきたBrian Carpenter氏に代わり、7代目のIETF 
チェアとしてRuss Housley氏(以下、Housley氏)が就任しました。

Housley氏はPKI(*1)における第一人者です。セキュリティの分野においてこ
れまでに多くの功績を残しており、関連する多くのRFCの著者でもあります。
IETFでは、セキュリティエリアのエリアディレクターを長年にわたって務めま
した。

関係者によるとHousley氏は「非常に優しく見識の深い人で、良く気が回りユー
モアのセンスもあり、注意深く物事を観察する人」とのことで、実際に
Plenaryでの所信表明の際のプレゼンテーションでも、その片鱗がうかがえま
した。

◎関連URI

    Russ Housley's Participation in IETF
    (Housley氏のIETFにおける略歴)
    http://www.vigilsec.com/ietf.html

    Accepting The Baton From Brian
    (Housley氏のPlenaryにおける発表資料)
    http://www3.ietf.org/proceedings/07mar/slides/plenaryw-4.pdf

(*1)Public Key Infrastructureの略。公開鍵暗号方式という暗号技術を使
      用し、盗聴や改ざん、なりすまし等のリスクを回避するためのしくみを
      インターネット上に提供する。

▼新IABチェア、Olaf Kolkman氏

2002年から足掛け6年に渡ってIABチェアを務めてきたLeslie Daigle氏に代わ
り、8代目のIABチェアとしてOlaf Kolkman氏(以下、Kolkman氏)が就任しま
した。

Kolkman氏は長年にわたり、DNSをより安全に使うためのプロトコルである
DNSSECの研究開発に携わってきました。IETFではDNSEXT WGの共同チェアを務
めており、本号の前編でお伝えした新しい仕様のDNSSECプロトコルである、
DNSSECbisプロトコル、NSEC3プロトコルの完成に尽力しました。

Kolkman氏は最近のインタビュー記事で、新IABチェアとして取り組む最重要課
題として、世界中でより多くのデバイスがネットワークに接続されている現状
において、子供を含むより多くのユーザがネットワークを安全に使えるように
することを挙げています。記事の内容からはそれを実現するためにより安全で
信頼性の高いインターネットの実現を目指した活動に取り組んでいきたいとい
う決意がうかがえます。

◎関連URI

    Q&A: New IAB chair mulls DNS security, unwanted Internet traffic
    (米NETWORK WORLD誌のKolkman氏に対するインタビュー記事)
    http://www.networkworld.com/news/2007/032807-iab-chair-dns-security.html?fsrc=rss-security

▼より安全に使えるインターネットをめざして

今回就任した両チェアに共通する特長として、両者ともセキュリティ分野にお
けるエキスパートであることが挙げられます。

技術者や研究者の情報交換手段として発展してきたインターネットはその後の
商用化を経て、現在では社会インフラのひとつと言われるものになってきてい
ます。

これまでのFROM JPRSでも報告してきたようにIETFではここ数年、IETFそのも
ののしくみを充実させることで構造改革を行い、活動をより活性化させること
を重要課題としてきました。今回の両チェアの交代はその活動が一段落し、
「より安全に使えるインターネット」をめざした、新たな段階に向けた活動が
本格化したことを示しているといえるでしょう。

◎関連URI

    IETF Home Page
    http://www.ietf.org/

    Internet Architecture Board
    http://www.iab.org/

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