JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト


メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.159

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2016/04/06━
                    ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.159 ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___________________________________

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
                  第55回ICANN会合(マラケシュ)報告
    ~インターネットガバナンスとccTLDレジストリ関連の話題を中心に~
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2016年3月5日から10日にかけて、第55回ICANN会合がモロッコのマラケシュで
開催されました。

前回の会合において決定されたICANN会合の開催形態方針(*1)にのっとり、
従来の会合と同規模での開催となった今回は、参加登録者数が約3,000名、リ
モート参加を除いた現地での参加者数は2,272名でした。アフリカ大陸での開
催、また会合に先立ちアフリカのccTLD連合であるAfTLDとICANNの共催による
Africa DNS Forumが開催された影響もあったためか、従来の会合に比べアフリ
カや中東からの参加者が多く見られました。

(*1)2016年以降のICANN会合は、Future Meeting Strategyにのっとり、開催
      規模や内容に変化が付けられることになっています。
      https://meetings.icann.org/en/future-meeting-strategy

会合全体としては、前回に引き続きインターネットガバナンスに関する話題が
中心となり、最終日の3月10日には、IANA(*2)監督権限の移管とICANNのアカ
ウンタビリティ(説明責任)に関する提案がICANN理事会の承認を受けるに至
りました。

(*2)Internet Assigned Numbers Authorityの略称。ドメイン名、IPアドレ
      ス、プロトコルパラメーターなどのインターネット資源を管理する
      ICANNの一機能です。

オープニングセレモニーでは、ICANN CEOの立場としては最後のICANN会合と
なったファディ・シェハデ(Fadi Chehade)氏によるスピーチに続く形で、後
任のヨーラン・マービー(Goran Marby)氏があいさつを行いました。

また、GAC(*3)会合とは別枠でハイレベル政府会合が催され、90以上の国や
地域から185名が参加しました。

(*3)Governmental Advisory Committeeの略称。ICANNの諮問機関の一つで、
      各国政府などからの代表メンバーによって構成されます。GACは政府の
      立場からICANN理事会に対して助言を行っています。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

(1)インターネットガバナンスに関する話題
       - IANA監督権限の移管とICANNのアカウンタビリティに関する議論

(2)ccNSO会合での話題
       - ICANNのアカウンタビリティに関する議論
       - TLD-OPSによるインシデント情報の共有

(3)その他の話題
       - 新gTLDに関する動向
       - ICANN関連文書の翻訳に関するコミュニティの活動
       - ICANN CEOの交代

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(1)インターネットガバナンスに関する話題
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼IANA監督権限の移管とICANNのアカウンタビリティに関する議論

現在は米国商務省電気通信情報局(NTIA)が有するIANA監督権限を、グローバ
ルなマルチステークホルダーのコミュニティに移管できるようにするため、計
画の策定と移管後の受け入れ体制の検討がICANNの場を中心に行われてきまし
た。

また、NTIAはIANA監督権限の移管条件として、移管後のIANAの安定運用を保証
できるような提案をICANNに要請していることから、ICANNに十分なアカウンタ
ビリティを持たせる方法についても議論されてきました(*4)。

(*4)これまでの議論については、前回の第54回ICANN会合報告(ダブリン)
      をご参照ください。
      https://jprs.jp/related-info/event/2015/1117ICANN.html

CCWG-Accountability(*5)による提案内容の調整は本会合中も行われ、支持
表明が行われていなかったSupporting Organization(SO)/Advisory
Committee(AC)内で集中的な議論が行われた結果、最終提案に対してすべて
のChartering Organization(*6)から支持を得ることができました。

(*5)Cross Community Working Group on Enhancing ICANN Accountability
      の略称。ICANNのアカウンタビリティ検討に関する、コミュニティ横断
      型ワーキンググループ。

(*6)CCWG-Accountabilityの構成組織であるCWG-Stewardship、SSAC、ASO、
      ALAC、GAC、GNSO、ccNSOを指します。
      https://community.icann.org/pages/viewpage.action?pageId=58723827

これを受け、会期最終日の3月10日に実施されたICANN理事会に、IANA監督権限
の移管とICANNのアカウンタビリティに関する提案が提出され、そのまま手を
加えない形で理事会が承認しました。本提案は同日ICANNからNTIAに提出され、
NTIA及び米国議会を含む審議の過程で引き続き検討が行われていく予定です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(2)ccNSO会合での話題
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼ICANNのアカウンタビリティに関する議論

Chartering Organizationの一つであるccNSOは、ccTLDコミュニティとして、
CCWG-Accountabilityの最終提案を支持するかどうかを会期中に判断する必要
がありました。そのため、前回のICANN会期中のccNSO会合同様、今回もIANA監
督権限の移管とICANNのアカウンタビリティに関する話題に最も時間が割かれ
ることとなりました。状況共有と意見交換が行われた結果、ccNSO評議委員会
で最終提案への支持が採択されました。JPRSもccNSO会合の場で、理由と共に
賛意を表明し、ccNSO評議委員会の公開審議でも、評議委員である堀田博文が
賛成票を投じました。

なお、採択までの議論は、CCWGにccTLDコミュニティ代表として参加していた5
名が最終提案に対する考えをそれぞれ述べ、関連セッションの最後にccNSOメ
ンバーの意見を確認するという流れで進められました。その中で、明確な不支
持表明を行った代表の意見は「Minority Statement」という形で最終提案に補
足され、実装の際に考慮される予定となっています。

▼TLD-OPSによるインシデント情報の共有

TLD-OPS(*7)によるインシデント情報の共有に関する検討チームのセッショ
ンは、ここ数回のccNSO会合における定常的な話題となっています。今回は、
TLD-OPS Standing Committee(*8)のメンバーより、現在はccTLDレジストリ
のみに開かれているTLD-OPSのメーリングリストに関し、今後はgTLDレジスト
リも情報共有対象として検討していくことの是非について話題が提示されまし
た。それに対し、会場の半数程度が賛同を示し、明確な反対意見は見られませ
んでした。この結果を受け、TLD-OPS Standing Committeeでは、2016年中は現
在の体制を維持し、2017年の第58回ICANN会合から、gTLDレジストリともイン
シデント情報を共有していく方向で引き続き検討を行うこととなりました。

(*7)ccTLDメンバー同士でのインシデント情報の共有を目的としたコミュニ
      ティで、ccNSOメンバーに限らず、すべてのccTLDレジストリからの参加
      が可能です。

(*8)各地域のccTLD代表とSSAC、IANA、ICANN securityチームからのリエゾ
      ンで構成されており、TLD-OPSのメーリングリストの活用・促進の検討
      や、レビューを実施します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(3)その他の話題
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼新gTLDに関する動向

現在、2012年に実施した新gTLD募集(新gTLDプログラム)に対する各種レ
ビューが行われている状況にあり、本会合では進捗状況の共有が行われました。
現時点でレビューは計画通りに進行しており、2017年第2四半期での完了を見
込んでいます。

また、2014年からGNSOのレジストリ部会(Registries Stakeholder Group:
RySG)が主導する形で、ICANNスタッフとレジストリ契約(Registry 
Agreement)改訂についての断続的な協議を行ってきました。本会合において、
パブリックコメントに付す改訂案に関しては、実際の運用に当たり記述があい
まいな部分、情報に不足がある部分を是正する方向で、RySGとICANNスタッフ
間の協議がほぼ妥結することとなりました。

▼ICANN関連文書の翻訳に関するコミュニティの活動

JPRSは、2015年6月22日、ICANN文書の日本語翻訳の協力に関連した覚書を
ICANN及びJPNICと締結しています。従来は、ICANNに関連する文書や活動紹介
の日本語への翻訳は、三者それぞれが独自のコンテンツを公開していました。
そのため、相互に翻訳・解説範囲の重複や、コンテンツ間の整合性における課
題などもあり、以下のような点で三者が協力することとなっています。

  ・日本語翻訳の対象とすべき文書を協力して特定する
  ・各組織が翻訳した文書を共有できるような協調、相互参照の仕組み作りを
    行う
  ・日本語文書での用語(訳語)を統一する

本会合においては、日本のコミュニティの他、ICANNで通訳・翻訳を担当する
Language Service Team、日本での事例を参考にICANNと翻訳に関連した覚書を
締結したタイのコミュニティが活動の紹介を行いました。日本のコミュニティ
からは、JPRSの堀田博文が代表して以下の内容を紹介しました。

  ・本覚書締結の経緯とその概要
  ・本覚書締結以前からのICANN文書の翻訳実績と、その成果として日本のコ
    ミュニティにはLocalization Toolkit(*9)の掲載項目に該当する日本語
    文書が既に存在していること
  ・その他、ICANN報告会など、ICANNと連携した日本のコミュニティに対する
    活動実績

(*9)ICANNに関する基礎的な情報資料を、APAC地域の各コミュニティの言語
      に翻訳して提供しているものです。翻訳活動は各言語のコミュニティが
      主導で行っており、提供状況などの情報は下記をご参照ください。
      https://community.icann.org/display/ICANNLSLT/LOCALIZATION+TOOLKIT

日本のコミュニティに対して、ICANNからは、本覚書による協力体制は非常に先
進的なモデルであるとして、今後の活動を期待する旨のコメントが寄せられま
した。

▼ICANN CEOの交代

ICANN CEOとして最後の会合を迎えたシェハデ氏のスピーチは、2012年の就任
当時から行ってきた改革の完了を表明したり、ICANNコミュニティへの思いを
述べたりするなど、CEOとしての活動を総括する内容となりました。また、参
加者に対して、IANA監督権限の移管に関連する議論を本会合で収束させること
の重要性と、次のステップとして、移管の実装を継続して議論することの必要
性を述べました。

続いて、2016年5月からICANN CEOを引き継ぐマービー氏がスピーチを行いまし
た。マービー氏はICANN会合に初参加ということもあり、まずは多くの人々と
話をしていきたいと述べ、ccNSOの会合においても、急遽質疑応答の場が設け
られました。

■次回のICANN会合

第56回ICANN会合は、2016年6月27日から30日にかけて、フィンランドのヘルシ
ンキでSO/ACの活動を中心としたポリシーフォーラムという形で開催される予
定です。

          ◇                     ◇                     ◇

◎関連URI

  - ICANN55 | Marrakech | ICANN Public Meetings
    https://meetings.icann.org/en/marrakech55
    (第55回ICANN会合公式ページ)

  - Announcements - ICANN
    https://www.icann.org/news/announcements
    (ICANNのアナウンス一覧ページ)

  - ICANN Board Transmits IANA Stewardship Transition Proposal and
    Enhancing ICANN Accountability Recommendations to NTIA | ICANN
    https://www.icann.org/stewardship-accountability
    (ICANNから米国政府に提出した資料一覧)

  - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/workinggroups/
    (ccNSOのWG紹介ページ)

  - Program Status | ICANN New gTLDs
    https://newgtlds.icann.org/en/program-status
    (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ)

  - Announcements | ICANN New gTLDs
    https://newgtlds.icann.org/en/announcements-and-media/latest
    (新gTLDプログラムに関するICANNのアナウンス一覧ページ)

  - JPRSがICANN文書の日本語翻訳に関しICANN及びJPNICと協力する旨の覚書
    を締結
    https://jprs.co.jp/press/2015/150623.html
    (2015年6月23日公開)

  - Community Translation in Japan and ICANN-JPNIC-JPRS MoU on
    Translation Collaboration | Presentation [EN] | ICANN Public 
    Meetings
    https://meetings.icann.org/en/marrakech55/schedule/tue-community-translation/presentation-community-translation-japan-08mar16-en
    (ICANN関連文書の翻訳に関する日本コミュニティの活動紹介資料)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━
■会議報告:https://jprs.jp/related-info/event/
■配信先メールアドレスなどの変更:https://jprs.jp/mail/henkou.html
■バックナンバー:https://jprs.jp/mail/backnumber/
■ご意見・ご要望:from@jprs.jp

当メールマガジンは、Windowsをお使いの方はMSゴシック、Macをお使いの方は
Osaka等幅などの「等幅フォント」で最適にご覧いただけます。

当メールマガジンの全文または一部の文章をWebサイト、メーリングリスト、
ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。
また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、
リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに
ご注意ください。
その他、ご利用に当たっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。
https://jprs.jp/mail/kiyaku.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
https://jprs.jp/
Copyright (C), 2016 Japan Registry Services Co., Ltd.