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ドメイン名関連会議報告

2004年

第59回IETF Meeting報告

2004/03/16
第59回IETF Meetingが2004年2月29日から3月4日にかけて、韓国のソウルで開催されました。

多くのテーマが議論されるIETFの中から、IEA BoF、CRISP WG、ENUM WG、DNSOP WGおよびMARID BoFの5つの話題についてお伝えします。

[参考] 第58回IETF Meeting報告(2003年12月1日公開)

ENUM WG会場風景 (Lotte Hotel-Seoul, Korea)
ENUM WG会場風景 (Lotte Hotel-Seoul, Korea)

IEA(Internationalizing Email Addresses) BoF

IEA BoFは、電子メールアドレスを国際化するために、IETFでは何を、どのようなアプローチで進めていけばよいか、そしてそれを進めていく意思を持った人がいるか、ということを確認するための場として開催され、前回のミネアポリスに引き続き2回目の開催となります。今回は、前回からの進捗と、今後の進め方について議論が行われました。

BoFでは、まず最初にIEAの実現方式として現在までに提案されている4方式について、それぞれのメリット(以下○印)・デメリット(以下×印)が比較されました。

  1. 1.メールアドレス部分にACE(ASCII Compatible Encoding)を適用する方法
 ○ MUA(Mail User Agent、メーラ)のみの更新でよい
 × IEA未対応のMUAでは利用者にとって無意味な文字列が表示される


  1. 1.メールアドレス部分にUTP-8を使い、SMTPで使用可否を確認する方法
 ○ 対象がメールアドレスだけに限定されている
 × プロトコル(SMTP)の更新が必要


  1. 1.すべてのヘッダでUTF-8を使い、SMTPで使用可否を確認する方法
 ○ すべてのヘッダを同様に扱うことができる
 × プロトコル(SMTP)の更新が必要


  1. 1.メーラ用の代替表示ヘッダを追加する方法
 ○ わずかな実装の追加ですむ
 × あまり利益がない(識別子の国際化ではない)

次に、BoF参加者間での議論が行われました。メールアドレスの国際化に対する利用者からの要求が高いこと、および、そのためにいくつかの解決策が提案されていることが再確認されました。しかし、それら提案の実装者がまだいないことも認識され、今後の進め方が論点となり、最終的に、次のことが合意されました。

  • IETFのWG等の組織的活動とは一旦切り離し、提案者が方式と実装の運用経験をまとめ、Experimental Protocol(実験評価用のプロトコル)としてメーリングリスト上で議論する
  • いくつかの提案が出された後、IETFに場を戻して議論する

CRISP(Cross Registry Information Service Protocol) WG

CRISP WGは、これまでのWhoisを機能的に置き換える、ドメイン名情報などのインターネット資源情報を検索するための新しいプロトコルを検討するWGです。

前回のWG MeetingでIRISが方式として選択されたため、WGの作業としてはプロトコルを規定するドキュメント(Internet Draft、I-D)の明確化とRFC化を進めています。

今回のMeetingでは、最新のI-Dについて前回からの変更点の説明が行われました。参加者からは特に大きな指摘もなく、間もなくIETF Last Callにかけられることとなりました。

ENUM(Telephone Number Mapping) WG

ENUM WGは、ENUM技術の標準を決め、運用のための技術資料を作成し、ENUM運用に関する情報交換を行うことを目的としています。

今回のENUM WGでは、ENUMプロトコルのRFC化の状況報告、ENUMサービスとしてプレゼンス(インスタントメッセージング)サービスの提案、各国のENUMトライアル状況の報告、そしてENUMの実装上の問題点の指摘の議論が行なわれました。

プレゼンスサービスの提案は特に問題点が指摘されず、WG Last Callにかけられることとなりました。

また、ENUMトライアル状況報告の中で、オーストリアは今年中にENUMの商用サービス化をめざしていることが発表されました。

日本からは、日本国内でのENUMトライアル状況の報告と、JPRSがENUMクライアントの開発を通じて直面した、ENUMプロトコル定義の実装上の問題点について報告が行なわれました。実装上の問題点については、WGのチェアを含む主要な人々に確認され、他の実装上の問題点を指摘している既存のI-DとあわせてWGの作業項目とし、ENUM実装についてのBCP RFC化を目指すこととなりました。

DNSOP(Domain Name System Operations) WG

DNSOP WGは、実際にDNSを運用するにあたっての問題点を洗い出し、これからの運用方法についての標準的なアプローチを決め、Informational RFC/BCP RFC化するために行われています。

今回のWG Meetingでは、WGドキュメント(I-D)の進捗状況確認と、IPv6でのネームサーバ情報の伝え方について議論が行なわれました。ネームサーバ情報の伝え方については今回も結論が出ず、目立った進展はありませんでした。

MARID(MTA Authorization Records in DNS) BoF

最近IETFでは、SPAM対策のためにDNSを使ってメールを送信するメール転送サーバ(MTA; Mail Transfer Agent)の正当性を認証する方式がいくつか提案されています。MARID BoFは、それらDNSを使った方式についての検討を、WGを作って継続するかについて議論するために開催されました。

一般に、メールを受信する場合、受信するドメイン名のMXリソースレコードにメールサーバの情報を登録します。BoFで議論されたのは、メールを送信する側のメールサーバ情報をDNSに登録するための仕組みを新たに定義し、メールを受信した側のメールサーバがDNSを参照して、送信側メールサーバの正当性を認証するという提案です。現在、I-Dが6件出され、また、マイクロソフトによる提案・実装が行なわれています。

BoFでは、問題点の確認と提案の紹介があり、活発な議論が行なわれました。しかし、この問題が重要であることは確認されましたが、明確な結論には至らず、メーリングリストで継続して議論をしていくことになりました。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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