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ドメイン名関連会議報告

2005年

第64回 IETF Meeting報告

2005/12/01


第64回 IETF Meetingが2005年11月6日から11月11日にかけて、カナダのバンクーバーで開催されました。

多くのテーマが議論されるIETFの中から、メールアドレスの国際化、ENUM、DNSおよびレジストリ関連技術に関する話題についてお届けします。

また、Plenary(全体会議)や、IETF Meetingの初日に併設して開催されたIEPG(Internet Engineering Planning Group)の様子についてもお届けします。

JETメンバー
JETメンバー
左から John Klensin, Jiankang YAO(CNNIC), Jeff Yeh(TWNIC),
Yang Woo Ko(MOCOCO, Inc., KR), 藤原和典(JPRS), 堀田博文(JPRS) (敬称略)

IEE(International Email and Extensions) BoF

IEE(International Email and Extensions) BoFは、国際化メールアドレスについて議論するBoFです。従来の電子メールプロトコルでは、メールアドレスに日本語等のASCII以外の文字を使うことはできません。国際化メールアドレスとは、メールアドレスに、例えば「日本語名@日本語ドメイン名.jp」等のような日本語を含む各国語を使用できるようにする技術です。

今回のBoFでは、JET(*1)での検討状況をベースに議論が行われました。結果として、国際化メールアドレスにかかわるすべての事項を対象とするWG(WorkingGroup)を作ることが合意され、また参加者のほとんどが技術検討に貢献する意思を持っていることが確認されました。

(*1)
JET:Joint Engineering Team。CN、JP、KR、SG、TWのccTLDレジストリオペレータや技術の有識者がメンバー)

ENUM (Telephone Number Mapping) WG

ENUM WGは、ENUM技術の標準の決定や、運用のための技術資料の作成、ENUM運用に関する情報交換を行うためのWGです。

今回、キャリアENUMの標準化についてもENUM WGの対象に含むようチャーターの変更が行われました。キャリアENUMとは、ENUM技術を応用して電話網の経路制御を行う技術で、番号ポータビリティや、IP電話の相互接続に応用する議論が進められています。

前回の会議に引き続き、ENUMの実装を視野に入れた提案が増えてきています。
しかしながら、ENUMの国際的な実用化までにはまだ議論を必要とする状況です。

DNSおよびレジストリ関連技術


▼ DNSOP (Domain Name System Operations) WG

DNSOP WGは、DNSを運用するにあたっての問題点や手法を議論し、DNS運用に関する標準的手法を確立するためのWGです。

今回の会議では、DNSOPで議論されているインターネットドラフトの進捗状況の確認が主な作業として行われましたが、特筆すべき技術的な合意はありませんでした。

今後のWGの方向性として、IPv4/IPv6の共存問題、DNSSEC、DNS運用全般、DNSリゾルバに関する問題を中心に議論していくことが確認されました。

▼ DNSEXT (DNS Extensions) WG

DNSEXT WGは、DNSの各機能の拡張に関する議論を行うためのWGです。

本WGでは、DNSのセキュリティ拡張を行うDNSSECの標準化のための作業を重点的に行っています。DNSSECプロトコルは標準化の作業が続けられており、現在の版は2005年3月に RFC4033~4035として発行されました。しかし、この版では運用上の問題点があることが判明し、見直しが行われることになりました。
これまでの見直しの作業の結果、改善方式が具体化し、DNSSECの標準化も大詰めを迎えています。

前回の会議(第63回IETF Meeting)ではzone enumeration問題(詳細は関連URI参照)に対応する方法として二つの方法が検討されていましたが、今回はハッシュ技術を使用したNSEC3についての検討が進められました。

もう一つの議題として、DNSSECで用いる鍵の入れ替えに関する議論が行われました。この二つが完成すれば、DNSSECの普及に必要とされるプロトコル上の問題がほぼ解消されると考えられます。

▼ CRISP (Cross Registry Information Service Protocol) WG

CRISP WGは、現在のWhoisを機能的に置き換え、ドメイン名情報等のインターネット資源情報を検索するための新しいプロトコルを検討するWGです。なお、CRISPは要求仕様の名称であり、CRISPを実現するために決められたものが IRIS(The Internet Registry Information Service)プロトコルです。

ここでは、すでにRFC3982として発行されているドメインレジストリ向けIRIS(DREGスキーマ)に対し、その後のリクエストを反映する内容でドキュメント化が進められていることが紹介されました(DREG2スキーマ)。

(注) DREGは、XML名前空間を示すURN(Uniform Resource Name)。

Whoisで例えると、あるレジストリのWhoisで見るドメイン名情報のフォーマットのようなもので、DREG2はこのフォーマットにIDN等の追加要件を満たすよう設計されたフォーマットです。

urn:ietf:params:xml:ns:dreg1において、正式にはDREG1として定義されるスキーマで、これと併存する新しいドメインレジストリ型のスキーマがDREG2となります。

また、ルーティングレジストリにおける情報の取り扱いにIRISを応用したRREGスキーマについては、その専門的内容がCRISP WGに必ずしもふさわしいものではないため、ルーティングを議論するコミュニティに活動の場を移す方針で合意がなされました。

結果として、今回の会議では、細かい修正を行った上で、すべてのWGドラフトをWG最終案とすることが確認されました。これによりCRISP WGの目的としていた活動は次回会議において結実する見込みとなりました。

全体会議等


▼ IETF Operations and Administration PlenaryおよびTechnical Plenary

Operations and Administration Plenaryでは、IETFチェアから今回の会議の参加人数が報告されました。参加者は40ヶ国から1,291人でした。1年前のワシントン D.C.で開催されたMeetingでは26ヶ国から1,309人でしたので、参加人数はほぼ同数ですが、国数が大きく増える形になりました。日本からの参加人数は全体の約10%におよびます。

IANA(Internet Assigned Numbers Authority)からは、2005年10月に David Conrad氏がジェネラルマネージャーに就任したことを始め、スタッフの強化が進んでいることが報告されました。また、現在IETFに関連するカテゴリーは70を越え、各WGから出されたドキュメント化のリクエスト等を100件程を処理していること、古いリクエストの処理を積極的に進めていることが報告されました。

Technical Plenaryでは、IRTF(Internet Research Task Force)のCFRG(Crypto Forum Research Group)チェアである David McGrew氏から、現在RFC内でも多く利用されているSHA1やMD5のハッシュ関数にかわり、SHA-256を始めとする更に強いハッシュ関数の利用を進める必要があることが報告されました。

▼ IEPG(Internet Engineering Planning Group) Meeting

IEPGは、インターネット運用についての情報交換を行うグループで、毎回IETF会議に併せて会議が開催されます。

今回も、各RIR(Regional Internet Registry)におけるIPアドレス、AS番号の割り振り状況についての統計報告が行われました。詳細は次のURIに掲載されています。

この中で、特にAS番号の枯渇に関する予測が、RIPE NCCのHenk Uijerwaal氏により解説されました。予測によれば、2バイトによる現在のAS番号空間の64,511のうち、すでに34,000程が割り当てられており、現在のペースで消費され続けると早くて2013年には枯渇するとのことでした。また、使用されていないAS番号を積極的に回収すれば最大で2033年までは時間が稼げるが、抜本的には4バイト空間への移行も考えていく必要があるとの指摘が同氏より行われました。

JPRSの藤原からは、不適切なドメイン名管理が引き起こすDNSハイジャック問題についての説明とJPRSにおける取り組みの紹介を行い、レジストリ間相互チェックの必要性を喚起しました。

また、NeuStarのEd Lewis氏からは、DNSSEC設定をEPP(Extensible Provisioning Protocol)を通じて行うデモンストレーションが行われ、DNSSEC等次世代の要求に対し、EPP等のインターネット標準となる手法で対応していくことの重要性が説かれました。


本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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