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ドメイン名関連会議報告

2007年

ICANNリスボン会合報告(第2回)

2007/04/17

本号では前号に引き続き、ICANNリスボン会合の中から「ccNSOメンバ会合」と「IDN」についてご紹介いたします。

ccNSOメンバ会合


2日間に渡ったメンバ会合では、

  • 地域の定義についてのGACとのセッション
  • ICANN理事、スタッフによる各種報告
  • IANA業務改善状況に関する紹介と議論
  • 各地域のccTLD連合組織の活動紹介
などが行われました。ここでは、特に話題の中心となった地域の定義について の議論と、IANA業務改善状況について報告します。

地域の定義について

現在ICANNは、世界をアフリカ、アジア太平洋、ヨーロッパ、ラテンアメリカとカリブ海諸島、北米の5地域に分け、この「地域」を基準として理事などの選挙を行っています。

ICANNの活動のコンセプトは「広く意見聴取を行ってから意思決定を行う」であり、意思決定の際により多くの当事者の意見が反映されるようにすることに重点が置かれています。このような背景を考えた場合、各ccTLDの意見が「その地域の意見」として、まとまった形できちんと反映されるかどうかは、ICANNの根幹に関わる重要な問題であるといえます。

例えば、フランスの海外領土であるニューカレドニア(.nc)は、地理的にはアジア太平洋地域に存在しながらも、ICANNでの定義ではヨーロッパ地域に属することになります。したがって.ncからccNSOの評議委員に立候補したとすると、地理的に非常に遠く付き合いの少ないヨーロッパのccTLDの票を獲得しなければならないのです。

このような問題を解決するため、例えば「アラブ諸国」といったより小さな単位で、ICANNへの参加と意見反映ができるような仕組みにすべきという意見も出ました。各ccTLDがどの「地域」に属するのが最適なのかについては、議論の分かれるところです。

ccNSOではこの問題を検討し、次のような提案をまとめる方向でコンセンサスが得られつつあります。

  • 「独立国」の単位と一致しないccTLDは、ccNSOでの活動に際し、自ら所属する「地域」を選択できる
  • 必要に応じ地域をさらにサブグループ化する
  • 課題をベースにしたグルーピングを適宜実施する


ここでとりあげた「国と地域」の問題はネットワークの世界にとどまらず、国際問題として古くから存在するものであり、ICANNの場で今後どのような展開を見せるかが注目されます。

IANA業務改善状況について

ccTLDにとって、IANAの業務改善は、長年にわたる大きな課題でした。たとえば、あるccTLDレジストリがネームサーバの書き換えをIANAに申請したとき、その書き換えが実際にルートゾーンに反映されるまでには、「申請者の本人性の確認」「申請者の正統性の確認」「申請者の意図の確認」「DoC(米国政府)の承認」などの多くのステップがあり、早い場合でも申請から1週間、遅い場合は何ヶ月もかかっていました。このため、各ccTLDが自分が管理するTLDのネームサーバの追加や変更を行う際に大きな時間を要することになり、結果としてccTLDの安定運用に支障をきたす原因の1つとなることがありました。

これを解決すべく、ポーランドのccTLDレジストリなどの援助により、IANAの処理を自動化する仕組みが構築されつつあります。また、人手が介在する業務に関しても効率化が検討されはじめています。その結果、IANAの業務は、2年前の4分の1の待ち時間で申請がルートゾーンに反映されるようになるなど飛躍的にスピードアップし、大きな成果を上げてきています。この報告の際には、会場から感謝の言葉や、拍手が沸き起こりました。

ICANN
ICANNリスボン会合の様子

IDN TLD(英数字以外のTLD)の動向


IDN TLDは、今回のICANN会合において最大の話題となりました。特にICANN CEOであるPaul Twomey氏が、最初のパブリックフォーラムにおいて報告した内容について注目されました。IDNに関する検討や技術検証は順調に進んでおり、2007年末もしくは2008年には利用可能にできるというもので、会場の参加者の興味を引いていました。

この背景には、gNSO、ccNSO、GAC、その他のほぼすべての組織が、コミュニティからのIDN TLDの導入要求があることを認識し、積極的に導入のための課題抽出や課題解決の検討を進めてきたことがあります。また、これらの組織個別の検討だけでなく、それぞれ共同作業部会を作るなどして、課題の共有や共同検討を行っているということからも、適切かつ迅速なIDN TLDの導入が、各組織における重要課題として共通認識となっていることを物語っています。

以下、gNSOとccNSOについて、その活動状況を報告します。

gNSO

GNSO IDNワーキンググループ(WG)は、2006年後半に設置されました。

このWGは、主にgTLDとしてIDN TLDを導入することに関する検討を行うもので、新gTLD創設に関する検討結果や、IDN TLDの研究室実験の結果、ICANNスタッフによる討議資料、IABから出されたIDNに関する勧告であるRFC 4690などを検討の土台としています。

このWGでは、TLDへのIDN導入に対する技術的な問題は解決済み、もしくは解決される予定であることを前提としており、検討課題はポリシーに関することに集中しています。

特に、IDNによるgTLDの新設においては、IDNとして用いられる文字と等価と見なされるASCII文字との関係や、異体字、類似した文字などが用いられることにより考えられる混乱が懸念されており、それらをどのように抑制するか、または対処するかという課題があげられています。また、IDN TLDで用いられる様々な言語の文字は、それぞれの言語や地理などの文化的背景や政治的関係を無視することはできず、各言語コミュニティや各国政府の意見を取り入れることが必要であるともされており、課題のポイントとして整理されつつあります。

今回のGNSO会合においては、これらの課題の中からIDN WGで大多数の同意を得ることができたポイントについて報告されました。

IDN WGでは、GNSOで定めたポリシー策定プロセスを経て、これら全ての課題に対する方策を出してからIDN TLDの提案募集を開始すべきという立場と、むしろできるだけ早く提案募集を開始すべきであるという立場が併存しています。そのことを認識した上で、WGチェアは個人的意見として、洗い出した課題のすべてについてコンセンサスを得られなくても、具体的創設提案の事例を積み上げるよう前進すべきだと述べました。すなわち、具体的事例が提出されても、一部のポリシー課題が未解決なことによって審査が遅れる可能性はあるが、コミュニティに対しICANNで前向きに検討されているというメッセージを送ることが最も重要であるということでした。

ccNSO

ccTLDのレジストリは、特定の言語やスクリプトを持つコミュニティと密接な関係にあることが多い、ということがgTLDと異なるところです。中でも、中国語圏やアラビア語圏では、日常的にローマ字を用いることがほとんどないのが現状であり、これらのccTLDレジストリからはTLDにもその地域で用いている文字を使いたいという要求が強く出されています。

そうした背景もあり、ccNSOでは、2006年10月にIDN WGを作り、課題の抽出を行ってきました。WGは、第2レベルIDN、IDN TLD、共通課題の3つのサブグループに分かれて検討を行っています。大きな話題となっているIDN TLDに関しては、JPRSの堀田博文がリーダーとなり、課題の整理と解決案の検討を実施しています。

今回は、GACの協力の下、課題整理の第1回目を行い、課題リストを共有することができました。今後はこのリストを2007年6月のICANN理事会に正式に提出するために、GACとccNSOが協力して検討していくことになっています。

課題リストの主な項目
  • IDN ccTLDとして用いる文字列は、意味があるものであるべきか
  • ひとつのccTLDに対して、IDN ccTLDを作る文字種は1種だけか
  • IDN ccTLDの文字数は限定すべきか
  • IDN ccTLDは、各ccTLDが任意に決めてよいか
  • 誰がIDN ccTLDのレジストリとしてIDN ccTLD文字列を申請/提案できるか
  • 誰がIDN ccTLDのレジストリを決定するか


今回のccNSOの会合では、これらの課題リストを作る作業と並行して、各課題に対する回答の作成も始めました。ただし、議論はまだ始まったばかりであり、意見の集約よりもあえて多様性を出すことにより回答のオプションを広く探ることを目的としています。今後、各課題に対してこれらの回答オプションを列挙・整理し、採用順位付けしていくことになっています。

次回は、「ccTLD Technical Meeting」と「SSAC Open Meeting」についてお伝えします。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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